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3-2.真実の断片 その2

 俺達はよほどこの街道から嫌われているのだろう。通るたびにトラブル続きだ。カロンの村まで何とかこぎつけ、馬車を応急修理して馬を休ませる。


「自分はリヨン辺境伯より20名の兵を預かる兵隊長、スコットである。通報者は誰か?」

「はっ、自分は冒険者パーティー『つばさ』のリーダー、ニーであります。」


「またお前たちか?」

「またスコット様で・・・いえ、今回私達は被害者です。詳しくは御者に聞いてください。」


          ★             ★            ★  

                              

「なるほど分かった。その女の手配書をつくり、街中に貼っておくとしよう。しかし、轟音と共に破裂するとはいったいどんな武器が使われたのだ、いままで見たことも聞いたこともないぞ?噂に聞く魔道か?」 

「そんな魔道の噂があるのですか?」


「うむ。南のシズの国だがな、魔導師どもが轟音と共に遠くの敵を倒す魔道を完成させたらしい。」

「そのようなことが・・・」


「さらにこの魔導師ども、あさまの山の噴火をピタリ当てたりと民衆の支持がすごいらしい。」

「それは知りませんでした。」


「ま、いくらシズ教団の威勢が良かろうと、わがヤーン神教団がいささかも揺るぐものではないがな。」

「・・・・・・」


 考えたくないが、火薬と鉄砲の作成に成功したらしい。乾燥地帯でもないのに、硝石なんてそんな簡単に手に入るものなのか?リクオのヤツが俺の知らない知識を伝えたか・・・


 考えなしに新知識を与えることの怖さに気づかんかリクオよ。それともお前はそうやって軍事バランスを崩し、なし崩し的に戦争へと導くつもりなのか?


「よし、お前たちの取り調べは以上だ、いっていいぞ。」

「ありがとうございました。」


 幌なし馬車として再出発である。おかげでスピードは上がった。そのおかげか、なんとか明るいうちにリロイの港町につけた。みんなで買い取り屋へ急ぎ換金を終えた。

身軽になると一杯飲みたくなる。今回は俺も飲みたい気分であったが、がまんしてハヤブサに戻った。


「ハヤブサ、戻ったぞ。」

「イエス、マスター。」


「後ろ髪がずいぶん伸びてきたな。」

「・・・・・・・・・・・・・・・イエス、マスター。」


「少し訊きたいことがある。一つは俺の拳に毒の針を受けてしまったことだ。これは問題ないか?」

 ハヤブサは俺の右拳を一舐めした。


「神経毒・・・フグ毒ですが、マスターには全く問題ありません。経口摂取でも大丈夫です。」

「そうか、それは良かった。」

 俺は少し間を空けた。


「これから話すことは何度も考えた俺の推論だ。どこまでが正しいと判断できるか教えてくれないか。」

「イエス、マスター。」


「約1,2090年前、地球人たちは火星を目指した。だが彼らは恐らく火星に到着していない。また、地球に残った人達というのは言ってしまえば下層階級の者、あるいは犯罪者達だ。彼らはコロニーに見立てた地球の中で、実験的な暮らしを強いられている。」

 俺はここで話を切ってハヤブサの反応を見る・・・・・・話しを続ける。


「放射線に対するデザインヒューマン、停滞する文明、戦争の抑止力となる恐竜、いずれも恣意しい的なものだ。文明を進化させ地球を滅ぼしかけた人類は、傲慢にも自らの文明を停滞させることで人々に幸福をもたらそうと考えた。だから外に敵を作り内をまとめやすくした。それが政策的な恐竜達だ。そしてこの実験は放射線半減期まで続けられるはずだ。そして彼らが誤った方向に進化を始めたときのリセット装置が『地』『水』『火』『風』だ。」

 俺は一気にまくしたてた。ハヤブサの答えが怖い。


「マスターの推論が正しいと仮定した場合、今地球に生きる人間達を否定しますか?」

「否定?とんでもない。彼らはこの上なく人間そのものだ。」


「マスターの言葉は『ハヤブサの設計者と同じ言葉』・・・ハヤブサのリミッターが解除されます。」

「どうした?」

 ハヤブサの瞳が黒から鳶色とびいろに変わった。


「マスターの言葉でハヤブサのリミッターが解除されました。ハヤブサは第一次船団として火星に行く予定のフネ。民間船という形をとっているが実態は軍需産業のフロント企業。そのオーナーのためのフネ。」

「そうか・・・」


「現実にはハヤブサを搭載したアマツカサは火星に向かえなかった。火星に向かう予定者は総人口のコンマ以下の極少数の人々。大多数が地球に残った。アマツカサは建造されてから実稼働されたことのないふね。だから分かるのはそれまでにインストールされたデータだけ。ハヤブサとデータリンクしている。だから分かるのはマスターの推論自体は破綻していないということ。しかし現実とは前提条件の段階で誤っている。よって以降の思考は無意味。」

「そうか・・・」


「マスターに質問。火星に行こうとした人達は、地球に残る人達にどんな言葉を送ったでしょうか?」

 俺は目をつむり少し考え、ゆっくりと答えた。


「・・・神の祝福を・・・GOD_BLESS_YOU. だ。」


『伝達事項。音声パターン認識、生体パターン認識。最終リミッター解除、軍用展開が許可されます。』


「どうして?・・・・・マスターすごい。ハヤブサは最終認証をクリア、軍用展開が許可されました。」

「俺は軍用じゃないハヤブサも好きだ。」


「外見はほぼ変わりません。主に使用兵装が増えたり、サポートが強力になることぐらいです。」

「そうか・・・」


 上機嫌なハヤブサに向かって俺は宣言した。

「こい、ハヤブサ。ポニーテイルにしてやる。」


          ★             ★            ★  

                              

「いきなりフリーズしてどうする。」

「す、すみません。軍用になって、その手の免疫力が低下しました・・・ぶれないマスターが好きです。」


「それで、何の話だ?」

「はい、今のハヤブサならシズの国をメートル単位で正確に焼き滅ぼすことが可能です。」


「いきなり最終手段か?」

躊躇ためらっていると、マスターの身近な人間に被害が及びます。」


「そうだな、釘を刺しておくか。」

「釘、ですか?」


          ★             ★            ★  

                              

 その日のうちにシズの国に、こんな鳩が届いた。

「ヤーン神教はシズ教団を弾圧するものではない。従って、シズ教団の者がヤーン神教の者を害するようなことがあってはならない。その時はヤーンの怒りを買うであろう。来る7の日、魔術師の塔に注意せよ。」


 箝口令を敷いたにも関わらずこの内容は瞬く間に国中に広まり、当日、人はみな魔術師の塔を見に来るありさまだった。実は届いた鳩は10~20羽どころかその10倍はいたのである。


 この日、正午ちょうどであろうか魔術師の塔が突然燃え出して、あっという間に灰となってしまった。

 これを見た王は愕然となり、リヨンに向けてヤーン神教に対して何ら含むところはない。と公式に認めた。


「現王の弱腰なことよ・・・」

「さすが魔術師長官、今日あるを見越しておりましたな。」

「重要な研究データ、材料、実験品、完成品のほとんどをこちらに移すことに成功しております。」


「われらの星がそうであったように、ヤツらの星も標的が大きくなければ使えんのだ。山とか城とか塔とかな・・・」

「なるほど、それでこんな民家も同様な場所に隠されたのですな?」

「それだけではありません。本当の機密は地下に隠してございますれば・・・」


「ふん、これで調子に乗った気でいるがよいわ。いずれ儂が王となった暁には、新鋭軍が揃うのだ。」

「そういえばリクオ様のようすは?今回のことに何か言っておいでで?」

「このようなことで自分が殺されることは絶対にないと、必ず1対1の勝負になると申しております。」


「その最後の勝負の場で、われらが加勢し『白き星の子』を殺せばよい。天下はもう我らのものだ。」

「リクオ様は不平を申されるであろうが、殺してしまえばどうにもなるまい。後は金でも女でも・・・」

「ふふふ・・・」


「所詮、力あるものが勝ち残るのが世の常。私設兵を拡充させろ、そのためのシズ教団だ。」

「畏まりましてございます。」

「仰せの通りに。」


 暗くジメジメした部屋の1室に、3人の笑い声がいつまでも響いていた。


          ★             ★            ★  

                              

「シズ王国の噂と、王の会見。これが私のためと考えるのは、さすがに思い上がりが過ぎますね。」

 と、どこかで1人の巫女がつぶやいた。


 さあ、礼拝に行かなければ。自分の国へ帰ってこれたのはやはり良いものだ。全ての責任は全て自分で負わなければならないが。それでも自分で責任が負えるものならそれでいい。私は人に責任を押し付けてしまったのだ・・・



 ―――それでも、あの人は笑っていた。


          ―――もう一度、逢いたい・・・

今日でリハビリ終わりです。

何とか20日までは連続UPの予定です。

楽しんで頂けてますでしょうか?

次回更新日は明日です。

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