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1-3.神代文字

 時代劇に出てくるような茶屋に入ってみると、喉の乾き以上に気になるものがあった。


「こめ   あか5」

「むぎ   あか3」

「あわ   あか2」

「みそしる あか2」

「ちゃ   あか1」


 と文字が紙に書いて貼ってある。幾ら俺でも「あか」というのが通貨なのだろうと分る。しかしなんとなく感じる違和感。


 みんなと一緒に水を飲み、麦飯を食いながら違和感の正体を考える・・・漢字がない。「あか」くらい漢字でも良いだろうに識字率の問題か?隣にいたニーに聞いてみることにする。おそらく彼がリーダーだろう。


「なあニー、この国では漢字を使わないのか?」

「む・・・カンジとはなんだ?」

「それ自体に意味を持つ文字のことだ、例えば・・・」


俺は木の枝で地面に文字を書く


「米   赤5」

「麦   赤3」

「粟   赤2」

「味噌汁 赤2」

「茶   赤1」


「ほら、みんな漢字で書けるだろう?読み書きできる人が少ないのかい?」

 ニーだけでなく残りの2人からも表情がなくなった。


「ニー、これって・・・」

「ニー、僕の記憶が正しければ・・・」

「「「神代文字だ!!!」」」


「ミズキ!貴様・・・いや君は神代文字が分かるのか?失われて久しいこの言葉が!」

「むしろその神代文字がなんなのか俺には分からん、が、この漢字のことならわかるぞ。」

 なにしろ2,000年間世界最強を目指す間に溜りに溜まった奥義書や秘伝、奥伝の数々。ご先祖様の技を知るためには古文や漢文の研究は欠かせないのだ。


 あちらでは食事そっちのけで3者会談が始まってしまったようだ。テーブルから離れた木の下で会話をしているが、口の動きも隠さないようでは俺に会話は筒抜けである。


「ちょっとニー、あれがホントに神代文字なら大変よ。都の学者に売る・・・紹介するだけで大金持ちよ!」

「やっぱりあの男は突然あの場に現われたんだ、僕の絶対知覚に狂いはない・・・なら本当に過去から来た神代人かみよびと?」

「落ち着け2人とも、まあ本人のいう通りなら都の研究が飛躍的にはかどるな。だがその場合俺たちは金だけ貰っておさらばだ・・・冒険者としてそれはどうだろう?」


「「と、いうと?」」


「彼の知識を利用させてもらうのさ、そうすればこれまでの遺跡やこれからの遺跡でも最奥が目指せる可能性が高い!売る・・・紹介するだけならいつでも出来るじゃないか!」


「さすがリーダーね、悪どい!」

「多分それが一番合理的だね、賛成だよ。」

「なんが悪どい!極めて合理的かつ論理的な帰結だ。幸い彼とは敵対関係にはない。」


 どうやら民主的な結論がでたようで結構だ。

 すぐに売られるのでなければ彼らと行動を共にするのは悪くない。なにしろ一文無しで、この世界のこともなんも分っていない。


 最低でも一般常識程度を身に付けないと1人で生きるのも難しいだろう。よろしい、ならば戦争だ・・・やっぱり妥協しよう。そんな俺の葛藤も知らずに3人が目の前にやってきた。


「すまなかったね、3人で話した結果ミズキ君を正式に我が冒険者パーティー『つばさ』の仲間としたい。自分がリーダーで、カミュ家のニーだ。」

パーマがかった茶色調の髪、背は一番高く190㎝位だろうか、緩やかに布をまとうように着ている。


「ようこそ未来へ!シ家のフレイです。改めまして。」

こちらはストレートの金髪で、やはり緩やかな服をきている。


「フォウ家のレイメイだ、よろしく頼む。」

彼女だけは黒髪に黒目、つまり俺と同じだ。彼女だけはなぜかカッチリした服を着ていた。


「改めて名乗ろう瑞樹隼人だ、こちら流にいえばミズキ家のハヤトだ。」


「そうか、では今後ハヤトと呼ばせてもらう・・・ところで一ついいかな?」


 ニーの瞳の色が変わる。それは俺の良く知る目だ、知っている光だ。おそらく俺の目も・・・


「俺たちは冒険者だ、得物はそれぞれ見ての通りなんだが・・・アンタは、ミズキ家のハヤトは何をやる?」


 3人が少し引いた。多分俺は笑っていたのだろう。


「俺は・・・無手だ。ただし相手はアンタらと違って人間だけどね。」


「無手で人と闘うの?武器を持ってる方が強いでしょ?」

「試してみるかい?」

「まてまてまて、そういうのは次にしろ。それよりなぜ俺たちの獲物が分かる?」

「簡単だろ、冒険者は害獣を狩るものだ。君の剣は君には大きすぎるし、レイメイの弓は大弓すぎる。フレイについては分らんが害獣とやらは随分とでかいのだな?」


 なかば断定していうとニーが答えた。


「その通りだ。獣についての君の知識がどれほどのものか知らんが、おそらく想像の上を行くと思う。それこそ、こんな剣では物足りないと思う程度に。そのときの君の立ち位置を確認しておきたいんだ、リーダーとしてね。」

「なるほど、前衛か後衛か戦力外かってことか。なにしろ無手だからな・・・最低限、自分の身は守れる。世話はかけないよ。」

「その言葉信じていいのか?害獣相手に退くのは決して恥ではないぞ?むしろ正確に申告してもらわねばみすみす神代人かみよびとを失い、我々は、いやこの世界は重大な損失を被るだろう。」

「正確な申告には一度遭遇する必要があるな・・・」


 こんな会話が何かのフラグだったのだろうか?


 だが俺は知りたかった。あの大剣でも足らない存在、あの大弓でも届かない存在、そんなものが現実に闊歩しているというのなら、それがこの世界の常識だとするのなら!横浜においてきた何かが心の底にこみ上げてくるのを感じていた。


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