2-8.世界の王の一日
「マスターは世界の王になるお方です、いつまでもそのような振る舞いは感心しません。」
「誤解を招く言い方をするな、俺は朝寝を楽しんでいるだけだ。それから、あいつらの前では・・・」
「もちろんマスターの前でだけ、です。」
「お前って、そんな性格だったっけ?」
「私は常にマスターの言動を自身の性格にフィードバックしています。つまり、ここにいる私はマスター自身がかくあれと望んだ結果にすぎません。つまり、人は己自身を・・・」
「分った、とにかく今度は後ろ髪を伸ばせ。そしてポニーテイルにするんだ、世界の王の命令だ!」
「うぅ、またシンタックスエラーがぁ・・・」
「そんなことより連中が帰ってきたぞ。ハッチを開けてやれ。」
「うぅ、そんなことって・・・・・お帰りなさいませ、みなさま。」
「おはよう、ハヤブサ!」
「ただ今、帰りました。」
「おはよう。」
俺はすでにリビングに移り、まったりとキャフェイン茶を飲んでいる。
「今日はどうするの?」
「元気ですね、レイメイ。僕は少し眠ります。」
「そうだな、自分も寝かせてもらおうか。」
「俺は一度神殿に顔を出す。」
道の露店で、海鮮の串焼きを買って朝飯代わりにする。
神殿につくと、俺は他の信者のように列に並んでお祈りをしてお布施をすませた。
そして、また列に戻ってくると神殿の方をつかまえて話し出した。
「朝早くから恐れ入ります。私は『白き星の者』ハヤトと申しますが、カミーユ様から文など届いておりませんでしょうか?」
「聖女カミーユ様から?」
「いかにも。」
「しばし、この場にてお待ちください。」
「おそれいります。」
そして俺は初めてカミーユからの伝言を受け取った。俺以外ではその意味は分かるまい。いわく、
「風は西に吹く」
小さな紙にこれだけが書いてあり、白き星に渡すよう伝言されていたという。次の旅は決まった。
★ ★ ★
「西の街?どうしたの、急に。」
「次は西の街に行きたい、ということですか?」
「何か理由がありそうだな・・・」
「これは冒険者の仕事ではない。人類最強の道とも違う。正直よく分らんが、12,000年前の願い事だ。危険はあっても金にはならん。無理について来ることはない。むしろ来るな。それに足手まといになった時、俺はアンタらをアッサリと切る・・・・・」
「よく分らないけど、西の街の遺跡にもぐるんでしょ?」
「だったら、金になりそうですよね。」
「切るというなら、俺達3人は伯爵家で一度切られているぞ。冒険者をやってるなら覚悟の上だ。」
「正気か?責任持てないし・・・持たないぞ。俺にできるのは恨み言を聞いてやるぐらいだ。」
「あんた、もしかしてメチャ不器用なヒト?」
「大概、難儀な一族に生まれてますもんね。」
「全てが終わったら、聞かせてもらえるのか?」
「全てが終わって、俺が生きていられたら話そう。そうでなければハヤブサから聞いてくれ。」
「それで、どこに行くの?」
「西の街ならリヨンでしょうねぇ。」
「まあ、そうだな。」
「ハヤブサ、リヨンの特定は可能か?」
「大陸図の作成は終了した。ただし、内陸部の街の特定は不可。詳細な情報を求む。」
「んーとねぇ、半分埋まったでっかい遺跡があるところ。」
「その遺跡を中心に、街が形成されています。」
「ヤーン神教の中心地で、街に防壁が無いところだ。」
「だそうだ、ハヤブサ。」
「イエス、監視衛星ビッグ・アイにアクセス中・・・回線来ます。・・・87%の確度で認識しました。」
★ ★ ★
よし、最後のクラムとキャフェイン豆もこれで積み込み終了だ。出航だ。
こちらでは牛肉を食べる習慣が無い。あってもそれは乳牛か農耕用の牛が死亡したときくらいのもので、市場にはあまり出回らない。普段は羊かイノシシ、兎がいいところで、後は雉とか鴨とか野鳥の類である。したがって今回は羊肉でジンギスカンにする。玉ねぎもたっぷりだ。
なんだかんだで俺がつくるものをみんなが食うので、本当に料理番になった感がある。金はとるが。
ハムや卵を冷蔵できるのは強みである。ハムエッグやベーコンエッグができるのはうれしい。これで白パンとミルク、サラダを付ければ完全に現代の―――俺のいた時代の―――朝食である。昼はBLTサンド、夜はイノシシのシチューに白パンといったところである。みな、喜んで食べてくれた。
次の日は朝からニーに付き合わされた。新しいロングソードが気になって仕方ないのである。フレイと摸擬戦やって刃が欠けるのは嫌だといって、俺にお鉢が回ってきたのだ。
仕方なく付き合った。俺がやったのは一寸の見切りである。これは俺にもよい練習となった。なんということはない、切り付けてくる刃を一寸で見切るのである。最初はニーも笑いながらやっていたのだが、だんだん本気になってきたようだ。
それはそうだろう、俺はニーのロングソードの一寸前から、張り付いたように離れないのである。しまいにはニーもむきになってきて、突きや片手打ちなどいろいろ試していたが、結果は変わらなかった。ついにニーが泣きそうになってしまい、俺の方で慌てて稽古を止めたのは内緒だ。
「なんなのだ、お前のそのいやらしい動きは?」
「一寸の見切りといってな、昔からあるものだぞ?」
「あれはつまり、お前は俺にいつでも一撃を加えることができるということか?」
「そうなるな。」
「何故そんなことが可能なのだ?」
「そんなことばかりをやってきた一族だからさ。」
「世界最強か?」
「いや、人類最強だ。害獣には勝てん。(「妖精の王」を使えばレベル10でも勝てるがな・・・)」
「なんかいったか?」
「なんでもない。」
その後、そばで見ていたフレイも参加してきたが、やはり穂先が届くことはなかった。もっとも彼の場合は、絶対知覚によりハヤトの動きを知りうるものの、己の体が反応できずにいたのであったが。
ちなみに最後に参加したレイメイは、得意の距離(20m)の矢を全て手づかみされて落ち込んでしまった。もちろんハヤトはその場から一歩も動いていない。
これを機に、冒険者としての訓練の大切さに気がつくとよいのだが・・・
そして3週間が過ぎる頃、リロイの港に到着した。内陸部のリヨンには、ここから馬車で進むのだ。
また今日もUPです。
明日もUPです。
楽しんでいただければさいわいです。




