2-7.アの国、ふたたび・・・
「おれがオーホックで遺跡巡りをしていたことは、知っているだろう?確かにみんな「死んだ遺跡」だった。
だが唯一、扉を開いた遺跡があったんだ。それが「眠れる遺跡」とであった初めてだ。もっとも、すぐに「死んだ遺跡」になっちまったが。」
脚色がはいってるが、許容範囲だろう。ハヤブサがキャフェイン茶を持ってきてくれた。礼を言う。
「メガネ似合ってるぞ。」
「このような意図不明、機能不明で存在理由に欠けるものについては疑問を呈します。」
わざわざ俺がデザイン画をおこしてハヤブサに自作させたのだ。
「ハヤブサが可愛くなるから、理由なんてそれで十分だよ。」
「軽度のシンタックスエラーを感知しました。並列処理、演算能力、ともに問題ありません。」
やはり、ハヤブサはからかいがいがある。気がつくと3人に睨まれていた。
「大事な話、してたのに・・・」
「あれ本当に命がけの勝負を挑まれて、勝った男の顔ですか?ほんの数日前ですよ?」
「まあ、アの国へ戻れば分るだろう。」
今回はやんちゃな海竜の妨害もなく、予定通り航海を終えた。水流ジェットを使えばもっと早く着いたのだが、エネルギー充填率を考慮して通常運転である。
アの国の港に着いた。何日たったのであろうか?
「前に見た顔だな!相変わらずシャンな船だ。どれだけ居る?」
「5日で頼む。」
「分った、白の5だ。入国税もまだなら・・・まだか。何人いる?・・・5人か、銀1枚の白の5だ。居続けすんなら早めにいってくれ。」
「分った、ありがとう。」
ハヤブサ分の入国税をとられたが、仕方あるまい。さあ、食事をしたら冒険だ。
あまり目立ちたくなかった我々は、ハヤブサを手に入れたときの岬のハッチを目指した。ハヤブサ自身が歩いてこれるなら話が早いのだが、本体と長く離れてはいられないらしい。俺は中継器のようなものを使えばいけそうな気がしたので、提案だけはしておいた。
「ここに来るのもちょっと前のことなのよね、何か色々あった気がするわ~。」
「こんなに早く戻ってくることになるとは・・・」
「どうだハヤト、できそうか?」
俺はハッチ周辺を探るふりをして、ハッチのパネルとシルバーリンクを接触させてみた。ブーンという音が微かに響くと静かにハッチは開いた。その瞬間4人はなだれ込み、ハッチは閉じた。
『当艦はスリープモード待機中。守護者、照明等は稼働しません。人力による移動をお願いします。』
「足であるけってさ。みんなローソクは持ってきてるな?ならいったんここでばらけるか?」
「私はハヤトと行く。」
「僕もそうなりますかね。」
「自分もだな。おそらくだが、ハヤトがいないと扉は開くまい。」
俺はそれからキャプテンルームを目指した。しかし、地図もない上にだだっ広いのでだんだん嫌になり、近場の端末から情報をもらうことにした。
個室のドアはハッチと同じように開いた。3人がお宝探しをする中、俺は情報端末を見つけシルバーリンクに接触させた。内容は3人に聞かれたくないので筆記タイプで行うことにする。
(スリープモードをフルモードにした場合、エネルギーはどのくらい保つ?)
(軽作業程度なら約半年、フルパワーを要求するものであれば1週間程度)
(ここは4つの攻撃衛星にアクセスできるか?)
(4つの攻撃衛星へのアクセスは当艦キャプテン以外は不可)
(キャプテンルームへの順路を光の廊下で示せ)
(了解。ただし、スリープモードのため300秒が限界)
「みんな、ここでの用事は終わった。次はお宝部屋だ、遅れるな!」
俺達は光の廊下をマッハで抜けた。こいつらが俺についてくるなんて・・・お宝恐るべし。
キャプテンルームの扉を開けると3人とも飛び込んだ。俺は一番偉そうに見える椅子に腰をおろした。
情報端末にシルバーリンクを接触させる。情報端末が瞬いた。
(ようこそ、第一次火星移民護送戦艦アマツカサです。キャプテンハヤト。)
(こちらで制御している4つの攻撃衛星はあるか?)
(イエス、『水』のウンディーネを従えている。)
(『水』のウンディーネへのアクセスコード及びその他の情報をシルバーリンクを介して譲渡してくれ)
(了解。神の祝福を・・・)
(『地』と『風』のありかを知らないか?)
(知らない。我々の組織は縦に長く、横には狭い。)
(この艦のエネルギーを回復する方法は?)
(宇宙へ、真空中へ移動すればよい。)
(この艦にそれが可能か?)
(可能である。ただし、当艦の擱座以後につくられた人間達の国に大被害が発生する。)
(この地に絶滅種である恐竜と人間が共生していることについて、知っていることはないか?)
(知らない。我々の組織は縦に長く、横には狭い。)
(この地で人間は進化を一定で止められているようだ。このことについて、知っていることはないか?)
(知らない。我々の組織は縦に長く、横には狭い。)
『火』と『水』が手に入っただけでも良しとするか・・・こりゃホントに遺跡巡りツアーが必要だ。まてよ「ヤーンのもとに紡がれ綾なすでしょう。」あの女は確かにそういった。
紡がれ綾なすのは攻撃衛星か?謎めいた美女カミーユ、俺は彼女にもう一度会わねばならない・・・
みんなが程よく強奪を終えたころ、俺は撤収の声をかけた。実のところローソクがもうないのだ。来る時と同じように光る廊下を走ると、岬のハッチにでた。すぐに閉まったが・・・
「これで眠っている遺跡がいるって分かったね。」
「ただし、「死んでいる遺跡」を総当たりする必要がありますけどね。」
「いやいや、今までの苦労を考えれば大した手間ではあるまい。」
みんな大漁だ、これでしばらくはおとなしいだろう。
俺は温泉にでも入りたいな・・・正義の味方はノーギャラなのか?いや、俺は正義の味方どころか、世界最強を目指すただの人殺しだったんだ。あれ、まてよ・・・
そうだ、俺は人類最強を極めるわけでもなく、無報酬で俺をいいように使っている誰かに腹を立てていたのだ。なんだってこんな世界で俺は頑張らねばならんのだ?何のために、あるいは誰のために?
屋台の串焼き肉を買ってハヤブサへ帰ろう。ハヤブサのメガネっ娘姿に癒されよう、俺は疲れてるんだ。
みんなは飲みに行くといっていたが、俺はまっすぐ戻ることにした。
俺がハヤブサに戻ると俺の承認なしにハッチは開かないので、夜中に戻ってきてもハヤブサには入れない。おかげで俺は夜襲を気にせず熟睡できるようになったのだが、カンが錆びつきそうで困る。
「ハヤブサ、『水』のウンディーネ を手に入れたよ。」
「『水』を司る攻撃衛星、海流、潮汐等に干渉し、世界中に津波をおこして全てを海底に沈める。」
「あいかわらず物騒だな、そんなのが他にも2つあるんだったな。」
「イエス、残りは『地』のグノーム 、『風』のシルヴェストル。」
「そうか・・・」
「・・・あなたは世界の王になるのですマスター。妖精の王2人を従えたあなたは間違いなく世界最強の力を手に入れました。あなたは人の世の末を見守らなければなりません。」
「ハヤブサ?・・・」
これはハヤブサの言葉ではなく、妖精の王2人を従えたマスターに対しての自動メッセージだそうだ。
遠い過去から、現われないかもしれないマスターに宛てた時を越えたメッセージ・・・
俺は自分の流派が世界一ならそれで満足なんだよ。なんだよ世界の王って?
12,000年前からのメッセージ、というのは反則だ。死んだ人間との約束は破れないじゃないか・・・
悩んでいた直後にもたらされたこのメッセージは、俺にとって偶然と思えなかった。
ハヤブサの瞳はただ黒く冷たく俺を写している。
血液検査の結果、問題なさそうです。
次回更新は明日となります。
楽しんでいただければ幸いです。




