2-3.Sランカー、ハイネス
アウェー感が半端ない。
オープンバーの方へ行って葡萄酒を頼む。頼んだだけで飲まないが。俺が葡萄酒で舌先を湿らせていると、
長剣を背負った男が近づいてきた。
「ハイネスさんに用があるんだって?」
「ファンなんだ。一目会いに南から来たんだよ。」
「イスズさんにちょっかい出してたようだが?」
「あの受付嬢はイスズというのか?彼女には新種の害獣情報を伝えただけさ。」
2人で話しているだけだが、いーい感じに殺気が飛んでくる。よせよ、嬉しくなっちまうじゃないか。
「そんな下手な言い訳が通るとでも思ってんのか?」
「言い訳なら、もっと上手くやるさ。」
「この街にも流儀というもんがある。」
「・・・」
「ハイネスさんは余所者があれこれ詮索していいお人じゃねーんだよ。そいつを飲んで帰りな。」
「弱ったな、そんな事をいわれるとますますお近づきになりたくなるな。」
「お前、俺はギルド内だからと穏便に話をしてるんだぜ?勘違いすんなよ?」
いい感じに殺気が膨れ上がってきた。俺は抑えていた身の内の気を解放した。殺気ではない・・・鬼気だ。
俺の鬼気が広がると、ヤツの殺気が喰われてゆく。まるでそこには最初から何もなかったかのように。この男と、気の毒にもバーにいた男は今や身動き一つできずにいた。
俺は長剣の男に対し、指2本で頭から切る所作をする。その瞬間、男は昏倒し後ろに倒れてしまった。誰も口を利かない。俺は鬼気の金縛りを緩めるとバーの男にいった。
「今度は飲める葡萄酒をもらおうか。アンタの驕りだぜ?」
マスターは壊れた人形のように何度も頭を上下に振った。
カウンターの上に葡萄酒が3つもならんじまったが、次の勇者は現われなかった。
★ ★ ★
「なんだ、なんだ、尋常じゃない鬼気を感じたと思ったらジョーイのヤツがひっくり返っているじゃないか?誰か説明してくれよ。」
「ハイネスさん」
「ハイネスさん」
「ハイネスさん、お帰りなさい。」
「ハイネスさん、依頼の方は?」
「依頼が片付いたから戻ってきたんだよ。それよりなんだ、辛気臭い。何があった。」
全員の視線が俺に注がれる。照れるな・・・
「初めまして、ハイネスさん。俺はハヤト。アンタに葡萄酒をおごりたくて待ってたんだ。」
「なるほど・・・」
「なら、一杯貰おうか。」
ハイネスがカウンターの方へやってきた。でかい。身長180㎝の俺が見上げる・・・200㎝近いな。それによく鍛えられた体だ。薄く脂肪がのっている・・・ただし、隻腕だった。左腕が無い。
「俺の能力測定は終わったかい?」
俺の流派では目付けというが、まさに目付けの最中であった。
「出会いを祝して。」
俺は葡萄酒を勧めた。
「乾杯。」
「乾杯。」
「やはり、さっきの鬼気は君か?かわいそうにジョーイのやつでは歯が立たなかったろう。」
「すいません、少し遊びが過ぎました。ですが、あなたに会いに来たのは本当です。」
「いまさらこんなロートルに用があるって?」
「唯一のSランカーと聞いています。」
「昔の話だ、それにそのせいでこの腕だ。」
「牙長タイガをやったと聞きました。」
「ありゃー、やったんじゃねえ。退けただけだ。」
「?」
「タイガ2頭とパーティメンバー2人がかちあってな。もちろん1人は俺だ。」
「それで?」
「俺は左腕を食われながらも、右拳でヤツの犬歯を折ってやった。ヤツ、大慌てで逃げていきやがった。」
「動物は己の武器を失うことを恐れます。狩りができなくなりますから。」
「そうか。番いだったのか、もう1頭もいなくなってな。結局俺達2人は生き残ったんだ。」
「そうでしたか。私の来るのが遅すぎましたね・・・現役時代のあなたを見たかった。」
「おいおい勘弁してくれ。俺は害獣を退ける術を知ってはいるが、人についてはそんなに詳しくねえ。」
「そんなに、ね。」
「本当に勘弁してくれ、せいぜい野党や盗賊と遊ぶ程度さ。だがアンタは違うだろ。この時代に何故あんたのような男がいるのか興味があるが・・・あんたは、害獣より人だろ?」
「確かに。」
「例えばアンタ、このギルド中の人間を全て殺して見せろと言われたら?」
「問題ない。」
「俺の目の前でいうところが憎らしいな、おい、2杯目もらうぞ!」
「どうぞ・・・あと、イスズさんという方は?」
「その時いたパーティメンバーだ。今じゃギルドに勤めてる。」
「なるほど、やはりあなたに会えて良かった。また一つ強さを知ることができた。」
「そんなに強さを求めてどうするんだ?」
「人類最強を目指します。」
「・・・こんなこと言っちゃなんだが、お前さん、仲間から馬鹿と呼ばれてないか?」
「よくご存じで。」
俺はこの日一番の笑顔で笑った。
そのあと俺はジョーイをおこし、非礼をわびた後、ギルドをあとにした。
イスズがハイネスのところにやってきた。
「お帰りなさい、無事だったようね。」
「薬草採取だぜ、無事に決まってる。あの日から無茶はしてないさ。」
「今の子、昔のあなたに似ていたわ。」
「あぁ、自分より強いやつを探してるのさ。」
★ ★ ★
やばい、6つの鐘だ。串焼き肉を食ってる場合じゃねえ。といいつつ1本だけ買って港を目指した。やはりみんな揃ってる、俺が最後だ。
モグモグモグ・・・3人か、俺の相手じゃなさそうだな。なら、観戦するか・・・モグモグモグ
「おい絶対知覚!!お前のそれはどういう能力だ?」
「えっ!あっ、3人倉庫の陰に隠れていますね。」
「俺に用はなさそうだぞ。」
「私も何もしてないわよ~」
「「「ニーか?」」」
「珍しいわね、あなたがトラブルなんて。」
「そうでもないと思いますけど。」
「相手は誰なんだ?」
「おそらく武器屋だ。」
しかめっつらしくニーが、いった。
更新は明日です。
楽しんでいただければ幸いです。




