2-2.オーホック
俺は『北の武神』とやりあうため鍛錬を重ねる日が続いた。そこで気がついたのだが、拳足の風切音が明らかに依然と違う。以前ハヤブサのいっていた第3階梯の強化とやらの影響か?
これまで未完成だった『飛天』『縮地』の上に位置する『瞬歩』が可能になっていた。なにやらドーピングをしたような気分だが仕方あるまい。おそらく俺は強くなるなら何でもやるだろう。
みな思い思いの数日を過ごし、いよいよ移動日となった。
俺はクラム1樽、ジャガイモ1樽、食用油1瓶(何故か油を明かりに使うという発想がないらしい。)、そして今回は、生肉を冷凍しようと思う。食べる分だけ解凍して焼けば問題ないはずだ。後は生野菜をしこたま冷蔵庫に入れておいた。壊血病は怖いからな。そして塩、胡椒、味噌、醤油、砂糖だ。
「随分うれしそうね、ハヤト。まるで本当の料理番みたいよ。」
「毎回毎回俺の鍋を当てにするなよ、ちゃんと買い込んどけよ?」
「買い込んだわよ、だから料理お願いね?」
「1回につき、白の5だ。」
「暴利だ!!」
今日もレイメイは平常運転だ。フレイとニーがいかがわしい店に行ったと怒ってたくせに。さあ、出発だ。
北を目指していくと、必然的に寒くなる。俺は耐寒スーツを着ているがみんなまいっているようだ。結局暖房の良くきいたロビーで顔を合わすことになる。
「そういえばハヤト。」
「なんだ、フレイ?」
「前に聞いたコーヒーなる飲料ですが、キャフェイン茶というのがあるんです。一度飲んでみませんか?」
「キャフェイン茶?いま飲む、すぐ飲む、ただちに飲む!」
「凄い食いつきですね・・・じゃあいま淹れましょうか・・・臼で挽くのが面倒なんですよ。こうしてできた粉をカップにいれてお湯を注ぐ。砂糖は好みで入れて下さい。」
キャフェインの豆を炒ったものを石臼で挽くらしいが、ようはインド式コーヒーの飲み方である。あぁ、この香り、まちがいない・・・上澄みが底に沈むのも待てずに口をつけてしまった・・・美味い。俺達の時代の洗練されたコーヒーではなかったが、それは紛れもなくコーヒーであった。
俺に誘われたようにレイメイやニーも口をつけて、苦いと騒いでいた。これが苦いならエールだって苦い。12,000年ぶりのコーヒーを堪能し、俺はフレイから残りの豆と石臼を金貨1枚で買い取った。こうしてまったりしていると・・・
『伝達事項。索敵圏内に正体不明生物を発見。』
『注意事項。レンジ1に正体不明生物が接近。』
『警告事項。レンジ1に正体不明生物が侵入。』
船体がガッガッと軋み、傾く。
『緊急事項。正体不明生物と異常接触。』
慌ててキャプテンシートに収まると、ハヤブサの説明を聞く。
「正体不明生物は初めから海底にに潜んでいて、私達が横切るのを待って手を出してきたようです。」
「説明は後だ、ハヤブサ。総縮帆、潜水モード用意だ!」
とりあえず、潜水できるように帆をしまい様子を見る。何かがハヤブサに絡みつき、引張っているようだ。
甲板を視認するとタコだかイカだかの足が見える。おそらく船底に嘴を立てているんだろうが歯が立つまいい。足の1本も切ってみたかったがハヤブサに確認してみる。
「ハヤブサ、前にやったような緊急離脱でこの状況を脱出できるか?」
「是であり否。」
「説明をもとめる。」
「正体不明生物が本船のジェット推進ノズルを塞いでいる。現状の稼働は不可。」
「このままだとどうなる?」
「正体不明生物は、おそらく我々を自分の棲家に運びこもうとしている。」
「対処方法は?」
「本船デッキ部分であれば、高電圧電流を流すことが可能。それで推進ノズルが解放が望める。」
「なるほど・・・可能電圧は?」
「20,000Vから200,000,000Vまで。」
「分った2,000,000Vを通電、推進ノズルが解放されたのを確認したら『緊急離脱プログラム』発動。ただし時間は5分でいい。」
「イエス、マスター。」
「通電開始。1秒・・・2秒・・・3秒・・・甲板部、触手外れました。」
感情が無いはずのハヤブサの声に、緊張感が走ったようだ。
「船底部、触手外れました。正体不明生物、海底に潜るようです。」
「ようし通電カット、『緊急離脱プログラム』発動。5分だけな。」
★ ★ ★
5分後に甲板に出たみんなは海を見ながらつぶやいた。
「いろんなヤツがいるわね。」
「あれは害獣手配書にありませんでしたね。」
「一体なんだったんだろう。」
「おそらく原始ダイオウイカのn倍体であると62%の確度で推定されます。」
「また襲われてもかなわん、いつでも緊急離脱できるようにこの海域は 総縮帆で抜けるぞ。」
「イエス、マスター。」
そして、ようやく我々は目的の地オーホックにたどり着いたのだ。
「シャンな船だ、最新か?・・・北の地へ、オーホックへようこそ!」
「しばらく頼む・・・5日だ。」
「船は白の5でいいよ。いつづきならいってくれ。入国税は1人白の5だ。俺の名はジャン、よろしく。」
「俺はハヤト、よろしく頼む。」
2週間ぶりに踏みしめる地面をみんなと喜ぶ。みな用事があるようで、夜6つの鐘が鳴る前にハヤブサの前に集まることになった。
俺はとりあえずヤーン神殿を尋ねた。カミーユからの伝言を確認しお布施をする。お布施は赤の5だ。
この赤というのは銅貨のことであり、白はもちろん白銅貨だ。以前使っていた硬貨が無くなってしまったので、今ではこちらの世界の硬貨を指弾に使っている。じゃらじゃらしていると、うるさいし重いからな。
次に向かったのがギルドである。横の看板に「Sランカー、ハイネスのまちにようこそ!」と書いてあった。なるほど町おこしにも一役買っているのか。
ギルド前の串焼き肉の屋台に惹かれたが、これからやりあうかもしれんのだ。下手に腹に入れ、ボディーにくらっちまったら・・・と考えて我慢した。
ギルドの中は相変わらずだ。きっと設計が決まっているのだろう。俺はなるべくさりげなく、受付嬢へ聞いてみた。
「こんちわ。」
「ハイ。」
「ハイネスさんは今日留守かな?」
「あなた誰?、彼の知り合い?」
「いや、知り合いになりたいなー、なんて思ってさ。はるか南からきたんだぜ。」
「な~に、彼のファンなの?」
「君のファンなら、なってもいいけどね。」
「調子いい人。彼はいま依頼で街を空けてるわ。」
依頼なら仕方ない、俺はウインクすると
「海の害獣についての話がある。誰にすればいい?」
「なら、私でいいわ。内容は?」
「あの海にイカがいる、通常の数百倍の大きさだ。船に巻きつき沈めようとする。」
「それで何故、あなたは助かったの? 」
「決まってる、俺と同じで船も特別だったのさ。」
「すっごい自信家ね。」
「試してみるか?」
「今日は遠慮しておくわ、怖いお兄さん達が見てるもの。」
私事、来月の4日と11日に手術することになりました。そのため来月中旬頃まで更新できなくなります。なので、その分を書き溜めた中から今月UPしておきます。お楽しみいただけたら幸いです。次回更新は明日です。




