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1-17.強化措置

「そこで一石二鳥の名案だ。ギルドに寄った時に受けてきたこの依頼!」

 そこには薬草を最も早くもってきた者に金貨5枚、とある。薬草そのものはトリスでいくらでも手に入る。

ただし、受け渡しの期限が2週間以内なのだ。


 しかも相手先は山を2つ越えた先にあるエムトの国だ。山は害獣の棲家だ、それを2つ越えるなど到底無理だ。まして、2週間以内なんて。

むろん、海路はある。しかしいくらかいがあるとはいえ、横帆船のような運任せでは2週間以内は辛いだろう。

 

「そこでハヤブサちゃんが、頑張るわけね?」

「そうだ、しかもあちらでは貴重なクラムやナシを仕入れて持っていく。」

「なるほど、薬草が2番手に終わっても果物で益をとるわけですか。」

 お前ら、それ完全にただの商人だからな?


「そういうわけでハヤト、ハヤブサだと何日ぐらいで着くものなのか確認してくれ。返事によってはすぐに出発だ。商品の買い込みもしなくては・・・」

 俺はシルバーリンクでハヤブサに連絡をとる。


「・・・というわけなんだが、何日くらいかかりそうだ?」

「現在気象衛星ウラヌスにアクセス中・・・海流、潮目、潮汐、風の流れより算出、±1日で1週間。82%の確度で到達。」

 俺とハヤブサの会話は、俺の声しか聞こえない。ハヤブサからの声は俺にだけ、というかシルバーリンクにのみ届けられる。


「約1週間だそうだ。」

「さすがハヤブサちゃんだね!」

「これは本格的に交易を考えた方がいいのでは・・・」

「よし、自分は買い出しにでる。ハヤトはハヤブサを接岸させてくれ。」

 俺はハヤブサの入港を待った。


「よっ、2日ぶり。」

「お待ちしておりました、マスター。」

 ハヤブサがまた両手を握りしめてくる。なんだ、俺に惚れたか?


「バイタルチェック異常なし。ただし前回検査時におけるマスターのデータと現在におけるこの惑星の空気成分、水成分その他雑多な微生物等を勘案すると、マスターには適切な環境対応能力の取得が98%の確度で必要。」

「確度、高いな。」


「先ほど聞いた話、必要とする薬草。私たちはその病気を『スメラ』と呼称しているが、マスターにはこの病気の抗体がない。同じように植物毒、動物毒、化学毒に対しても著しく脆弱。対応措置を施すべき。」

「どうすればいいんだ?痛いのはやだぞ?」


「今処理中・・・30%経過・・・マスターの言語は、時々私にシンタックスエラーを発生させる。また、マスターの身体能力は私のサンプルデータの中に存在しない。戦闘力という点ではマスターは人類にカテゴライズできない・・・60%経過。」


「それは、褒められているのか?」

「単なる事実と確認・・・90%経過、そろそろ自覚症状が出るころ。」 

 自覚症状ってなんだと聞く前に、俺は立っていられなくなった。このまま倒れてしまいたいが、両手はガッチリとホールドされている。なんだこの感じ、体がバラバラになる感じだ。


「100%経過、ロード終了。コンパイルの実行に進む。」

 お次はバラバラになった体が、元に戻っていくようだ・・・


「・・・コンパイル完了、エラーの発生は認められない。」

 うー、頭が痛い。ようやく手を放してもらった。ハヤブサは奥からコップを持ってきて俺に手渡した。


「ありがとう・・・って、水じゃないよねこれ。何なの、なに飲ませたの?」

「最後にそれを飲んで全ての工程が終了する、マスターはもう大丈夫。」

「そ、そうか。ありがとう。じゃあ例えば生水とか飲んでも大丈夫なのかな?」

「今日1日じっとしていれば。マスターには第3階梯までの強化措置を行った。私の精一杯。」

「うん、よく分らないけどありがとう。」


「それからマスターに注意事項。」

「何だ?」

「マスターの元々の身体能力に、第3階梯の身体強化が加わった。私としては誤差の範囲と判断するが、実際の相乗効果には前例がなく・・・」


「分りやすくいってくれ。」

「本気で人を殴る時には注意して。」

 おおう、そういうことですか。さんざん人のことを人外扱いしたくせに・・・


 ぞろぞろと積み荷がやってきた。何樽買ったんだ?ストア(倉庫)をいっぱいにする気だな・・・俺たちの7日分の食糧はどうするんだ。この世界に冷凍食品はないんだぞ。


 1~2日目はよかった。港で買った焼き魚や白パン、シチューが食えた。だが3日目あたりから、野宿と変わらないメニューとなってきた。

 俺はたまらず買ってあった食用油を電磁調理器で温め、バラバラに切った皮つきのジャガイモを放り込んだ。油をきって皿に盛る・・・少し塩をふりかけて。

 みんな怖がって電磁調理器が使えないのだ。だからこんな料理ともいえない料理に群がってくる。俺は1人でフライドポテトを食し、冷やしておいたエールを飲んだ。やはり、冷たい方が美味いと思う。


「美味しそうだね、ハヤト?」

「・・・」

「いい匂いですね、ハヤトさん?」

「・・・」

「分った、どうすればいい?」

「クラム。」


「えっ!」

「クラムだよ、クラム。俺はあいつが好きなんだ。」

「わ、分った、ハヤトは好きなだけあいつを食っていい。だから・・・」

「取引成立だ、ジャガイモがあるだけ毎日フライドポテトを作ってやる。」

「「「やったー」」」

 みんなの手がフライドポテトをつかんだ。その時だった。


『伝達事項。索敵圏内に海竜を発見。』

『警告事項。レンジ3に海竜が接近。』

『警告事項。レンジ3に海竜が侵入。』

 俺はすぐさま操舵室に向かった。

 そこにはハヤブサが立っていた。

「ハグレの可能性あり、現時点では推論。」


 海中レーダーの画面をみる。なるほどネッシーの友達が写ってやがる。ソナーに反応しているのか? 

「ハヤブサ、アクティブ・ソナーを切れ、様子を見る」

「相手位置をロストします。」

「どうせ監視衛星があるだろ、こっちに回線をつなげ!」

「イエス、監視衛星ビッグ・アイにアクセス中・・・回線来ます。」


 映像が空間に投影される。

「深度階でフィルタリングしろ、急げ!」

「イエス、0.3秒お待ちください。」


 そこには害獣手配書で見た絵姿とそっくりなシルエットがあった。

『伝達事項。監視対象は急接近を止め、慣性移動中。』

「海のレベル8だわ、私初めて・・・」

「本当にいるんですね・・・」

「自分たちは助かったのか?」

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