1-15.新しい遺跡
トリスの街に着き商人たちから依頼達成書にサインをもらい、ギルドに行って依頼料銀貨9枚をもらった。商人たちからは帰りの護衛も懇願されたが、こちらの都合が合わず、丁寧に断らせてもらった。
途中武器屋に寄り、盗賊の騎士剣2本を売りにだし銀貨3枚に変えた。これで今回の収支は3日間でちょうど1人銀貨3枚となり、悪くないものとなった。
「携帯食にも飽きたし、今夜は美味いものでも食べよーよ!」
レイメイの発言に全員がうなずく。
「では酒場付の宿屋を探しましょうか?」
「そうだな、それがいい。」
酒もいいが、訓練しろよお前ら!
「実はギルドでおすすめの宿を聞いてきてるんだよねー。ちょーっと高級だけどいいでしょ?」
「まあ今日ぐらいは、いいんじゃないですか?」
「今日だけならな・・・また、野宿になるのはゴメンだぞ。」
・・・冒険者、経済観念無いのか?俺の金貨10枚忘れるなよ?
レイメイについていくと「銀の皿」という名の、酒場兼宿屋に連れていかれた。ここは酒場の料理が人気で泊まり客なら半値でいいらしい。確かにお勧めだ。
「まずエールね、それからほろほろ鳥の煮込み。それから・・・」
「僕もエール、それから揚げたジャガイモにソーセージ」
「自分も同じものを。」
「俺は葡萄酒、それにチーズとソーセージを。」
「なんだハヤトはエールが嫌いか?」
「生ぬるいのは、どうも口に合わなくてな。」
ひそかにハヤブサに持ち込んでキンキンに冷やしてみよう。ビールはやはり冷たくないとな・・・
「そういえば、この世界にコーヒーという飲料はあるのかい?」
「どんなヤツなの?味は?」
「悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、愛のように甘いんだ。」
「なにそれ、ぜんぜん想像できないわ!本当に飲み物なの?」
「ああ、俺のいた世界では一番好きな飲み物さ。」
「残念ながらこの世界にはなさそうね・・・」
いや、別にいいんだけどね。中世ならコーヒーがあってもおかしくないと思っただけで・・・
そのうちにオーダーがやってきて、宴会が始まった。
「ハーヤートー、ちゃんと飲んでる?」
「レイメイさん・・・目、すわってますよね。」
「ん、だいたいこんなもんだろ。」
そうか、レイメイはからみ上戸か・・・
「ハヤトって年幾つなのー?」
「そういうお前はどうなんだ?」
「アタシー?アタシは17よ。」
「そうか、俺は18だ。少しは敬え。」
「ムギー!!ハヤトの分際で私に意見した!エールおかわり!」
飲むか怒るかどっちかにしてほしい。フレイもニーも17らしい。成人の儀とやらが16にあって、男は何でもいいから4つ足の獲物を狩り、女は大きな絨毯をこさえるものらしい。
フレイはウサギを、ニーはイノシシを狩ったらしい。大したものだ・・・俺はそのころにはもう、人を殺していた。とんだ成人の儀だ。
「で、明日からはどうするんだい?」
「そうだな・・・レイメイは昼まで寝ているだろうが、2日目のチャージがとられる前に叩き起こす。それからお茶でも飲んで相談かな?」
この夜、俺はそこそこ飲んで席を立った。訓練というのは日を空けると意味がないものだからな。
翌朝の朝食に俺が向かった時には、フレイとニーしかいなかった。
「お嬢様は?」
「もちろん、あと10分で起こされる夢の中さ。」
俺は朝食の白パンとフライを葡萄酒で流し込みながら、昨日の戦闘を思い出していた。感傷にふけるわけではない。相手が当たり前のように毒を使ってきたからだ。
害獣がいるこの世界では、それが当たり前なのだろうか?レイメイも当たり前のように毒を使っていた・・・戦闘シュミレーションの組み換えが必要だ。指弾では足りないかな・・・殺し合いならな。
ふと俺は考えた。弓矢でだめならクロウボウ、そして空気銃、最後は火薬銃だ。これは自然な流れ、自然な発想のはずだ。それなのにこの世界は弓矢で進歩が止まっているように思える、なぜだ?
そういえば以前考えた農業革命・エネルギー革命・軍事革命のどれも実現していない。文化的な下地は十分あるはずなのに、1人の天才がでてこない。まるで文化レベルを抑え込んでいるかのように・・・
そう考えると害獣の存在とは?人類間で共通の強大な敵がいれば、国家間の下世話な争いは少なくなるだろう。しかも通常害獣は、恐竜王国から出てこない。実質的な人的被害はハグレによるものだけだ。
俺は自分の妄想に頭が痛くなってきた。仮にそうだとして、誰にそんな途方もないまねができるのか?また、そんなことをして何になるというのだ。ありえない!しかし一抹の仮定を否定できない・・・
しかしここに文化を跳躍させる『遺跡』があり、文化の伝導者足りうる『俺』がいる。この世界が俺を招いたのか?この世界は俺に何をさせたがっているのか・・・本当に神がいるなら小1時間ほど問い詰めたい。
しかし全く同じ可能性として、全て偶然ということもある。偶然なら恐くない、怖いのは必然だ・・・
朝の物思いが終わると出発の時間だ。今朝はもう晴れあがっている、俺だってたまにはシリアスに考えたりするのだ。さあレイメイもやってきた、出発だ・・・
この世界に喫茶店はない。あるのは団子屋、汁粉屋、トコロテン・・・まあ、そんな感じだ。俺たちは朝食を終えたばかりだったので、ギルドへ向かうことにした。こちらの遺跡に関する情報収集と、活動方針を決めるためだ。
ギルドというのはどこも似たような建物であるらしい。トリスのギルドに着くと俺は害獣手配書を借り受け、その場で読んで返却した。やはり、アの国で見たものと一緒だった。俺はみんなと椅子に腰かけた。
「どうしたの、いまさら害獣手配書なんて?」
「何か気になることでもあるんですか?」
「そうなのか?」
「いや、そういうわけじゃない。ただの確認さ。この大陸をどこまで行っても同じ害獣がいるのかな、と思ってさ。」
やつらは温暖でなければ生きられない、体温をキープできないはずだ。日本の冬は堪えるだろう・・・冬眠でもするのか?
「そう・・・ハヤトって面白いこと考えるのね。」
「この国の最果ての地では、害獣が少ないと聞いたことがあります。人が住まうにも苦労する寒冷の地であれば、害獣といえど住みづらいのでしょう。」
「真の最果てと呼ぶは、海を越えたる先にある最北のことだ。彼の地には人も害獣もおらず、ただコロボ・クールのみ住まうと聞いている。」
なるほど・・・北海道か。北海道に住むはコロボックルか。一度は行く必要があるな。などと考えていると、ニーがテーブルに地図を広げだした。
「ここが、今回俺たちが挑戦するトリスの遺跡だ。」




