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1-12.港にて

 あぁ、のされてるやつがいるな。何人相手かしらんが、多人数相手にあいつらの得物は不利だろう。大剣はもちろん、弓矢も使えまい。殺し合いなら別だがな・・・さて、どちらに非があるのか。


「この船に対人用の兵装はあるか?」

「ノー、マスター」

 まあ、ないとは思ったけど念のためね。


 あっ、レイメイのやつこっちに気づきやがった。残念女のくせに!嬉しそうに手を振るな、注目されるじゃねーか。


 ・・・無視しようかな。でもあいつら俺の荷物もってんだよな、弁当も・・・少し働くか。 


「ハヤブサ、もう少し接岸できるか?」

「技術的には可能。その場合の問題点が一つ。」


「何だ?」

「接岸すると仲間以外の個体も、多数乗りこんで来ると思われる。」


「・・・10mまで接岸してくれ。俺が出た後は沖合にでもいてくれ、俺が手をあげたら戻ってこい。」

 ハヤブサが何か持って知づいてくる。何だ?

「マスター、これを。シルバーリンク。」


「シルバーリンク?」

「イエス、それを手首などに装着すれば常時会話が可能。宇宙空間でも使用可能。」

 俺がシルバーリンクを左手に通すと、勝手に手首サイズへと変わった。まるで腕時計だ。


「分った。では接岸距離10m、あの3人組の真後ろの位置となるようにな。」

「イエス、9秒お待ちください・・・問題ありません、マスター。」


「じゃあ、ちょっと行ってくる。」

「ハヤブサに汎用型小型艇の備えはありませんが。」

 ハヤブサの声が聞こえたが問題ない。そのための10mなのだ。俺はそのまま海面に躍り出た。


 俺を眺めていたやつは、俺が泳ぐものだと考えたに違いない。だから・・・俺が海の上を走ったから、あれほど大騒ぎをしたのだろう。そのまま10mを走りきると俺は岸壁に飛び乗った。


「よぉ、あんまり遅いから迎えに来た・・・取り込み中か?」

「ははっ、人って水の上を走れるのね・・・」

「ハヤトさんの体術は常識に欠けていると思っていましたが・・・」

「すごいものだな・・・」


「問題ないならこのまま帰るぞ?」

「問題あるわよ、2人のびてるでしょ!」

「実は港を仕切っている連中と揉めてしまいまして。」

「あの船見た途端、接岸料に金貨2枚だとよ。」

 なるほどハヤブサの所有者なら金持ちだ、と思われたわけか。本当はそんな金、払った方が利口なんだが。


「おい、いまさらだが金貨2枚払って何とかなるか?」

「無理ね、2人のしちゃたもの。」

「無理ですね、下手をすれば血をみるかも。」

「そうだな、レイメイか船をカタにとられるかもしれん。」

 うーん、レイメイならともかく、船をカタに取られるのは困る。


「おい!面白い見世物だったが、話はついたかい。今なら金貨10枚で手打ちにしてやるぜ?」

 なんてテンプレな台詞だ、聞いてるこっちが恥ずかしい。

「最初の話では白の5枚だったようだね。そこの若いもん2人の見舞い代込みで金貨2枚、でどうだ。」


「馬鹿野郎!こっちは被害者なんだぜ?下手にでてりゃあつけ上がりやがって・・・」

 うーん、そうだよね。俺は振り返ってこっそり訊いてみた。

「念のため訊くけど、君たちあの船まで海の上走れる?」


「無理!無理!無理!」

「さすがにちょっと・・・この辺なら泳げますけど。」

「この大剣をかついでは泳げまい、泳いだところで弓矢の良い的だ。」

 まあね、聞いてみただけだし。これはあれか?いよいよ肉体言語で話し合うほかないのか?どう見ても、こっちの方が悪者じゃねーか。俺は頭の悪そうなやつらに提案してみた。


「代表者1人で話し合わないか、こちらが勝てば白の5枚。そちらが勝てば金貨20枚でどうだ?」

「殴り合い前提の話し合いね・・・」

「僕ら金貨20枚持ってましたっけ?」

「自分たちの武具をすべて売ってあわせれば、それくらいにはなろうさ。」


「上等だコラッ!殺してやるからでてきやがれぇ!」


「じゃあ、ちょっと行ってくる。あと、風下には立つな。」

「ホントに大丈夫なの?」

「あなたの事だから、心配はしてませんが・・・」

「面倒をかけるな。」

 いや、心配はしてくれよ。


「またせたな、俺の相手はお前でいいのか?」

「なんだお前は、丸腰ではないか。それで『両手剣のカーン』の相手をするつもりか?」

 この国には2つ名もちが多いようだ。

「勝負の決着は何をもって?」

「知れたこと、相手が死ぬか口をきけなくなるまでだ!」


「ほう・・・死ぬまでね。」

「そーだ、驚いたか?冒険者といっても人を殺したことはあるまい。今!!謝れば許してやらんでもないぞ?」

 12,000年前も、12,000年の後も人は馬鹿ばかりだ。


「馬鹿な冒険者め!これでも食らえ!」

 そういうと片手剣の1つをハヤト目がけて投げつけてきた、同時に自身もすごいスピードで突進してきた。

 とっさのことに判断を誤ると、2の太刀で切られてしまうだろう。それなりに場数は踏んだ男であった。


 投げつけられた1の太刀、これはハヤトの体を通り抜けたように見えた。

 そして、いつの間にか2の太刀を持った男の傍らに立ち、そっと手を添えただけのように見えた。だが『両手剣のカーン』は岸壁まで猛烈な勢いで転がり続け、海に転落してしまった!


 しばらくは場を静寂が支配した。そこに何とも不釣り合いな声が響く。

「じゃ、白の5枚ね。」

 傍らのタルの上にニーからあずかった貨幣を置くと、その場を離れようとした。すると・・・


「まて!いやまってくれ。儂はこの港を預かる『鬼蜘蛛の平治』ってケチな野郎だ。おまいさん、良けりゃあうちにこないかい?月に衣食住のほか、金貨3枚だそう、どうだ!」


 この待遇は良い方なのだろうか?周りの顔から察するにきっとそうなんだろう。だが俺は自分から『鬼蜘蛛の平治』と名乗る男の下にはつきたくない。そんなことより海に落ちた男のことが気にかかっていた。


「助かったわ!ありがとう。」

「ありがとうございます、ハヤトさん。」

「恩に着るぞ、ハヤト。」

「気にするな、金貨10枚の貸しだ。」


「うわっ、そうくる!」

「うーん、そういわれれば。」

「船が手に入ったのも、トラブルがおさまったのもハヤトのおかげだ。否定できん。」

 いやそこ、否定できないんじゃなくて100%俺のおかげだよね?君らなにもしてないよね?分ってる?


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