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1-11.アクティブクルーザー8823

 小太刀を咥えての遠泳は少しこたえた。顎が痛い。

 船に目を向ける。外観はただの帆船に見える。俺は船に詳しくないが、キャビンに入ってみる。どうやらここで操船するようだ。


 当然だが俺には帆船の操縦など全く分からない。こういう船って数人がかりで動かすはずだ。


 何も考えずにここまで来てしまったことに、少し後悔。まあなんとかなるさと思いながら船長席とおぼしき場所に腰を下ろした。すると突然

「ようこそアクティブクルーザー8823、個体識別番号IP-009へ。」

 合成音声だ

「君はこの船のガイドかい?」


「私はアクティブクルーザー8823、個体識別番号IP-009そのものである。」

「分った、名前が長いのでハヤブサでいいか?」

 

「了解した、以降私はハヤブサと呼称する。マスターの名は?」

「俺がマスターか?」


「初めてキャプテンシートに座るのは、マスター以外にありえない。故にマスターである。」

「・・・ハヤトだ、ハヤトと呼べ。」

「了解した、マスター。」


「・・・了解してねーじゃんかよ・・・ここは最初から日本語が通じるんだな。」 

「HP-830CTから事前情報を受けっとっている。インターフェイスも音声がふさわしいと判断した。」

「他にもあるのか?」

「筆記タイプは先ほど体験されたはずだ・・・あとは人型インターフェイスが・・・」

「あるのか!!!それでいってみよう。」


 俺の足元に白い霧?もや?が発生したかと思う側面の壁の中から彼女はあらわれた。清楚な黒髪美人の彼女は、近未来的な服を着こなし俺の方をみて告げた。

「ハヤブサ。」

「おぉ!でも何で女性型?ハヤブサなんて男の名前だ。」


「マスターが男だから。」

「すばらしい!是非メガネも掛けていただきたい!」


「マスターは時々理解不能。」

「心の声が漏れていたか?気にするな、それより両手を握って何をするんだ?」


「マスター登録。遺伝子レベルまでマスターをスキャンする・・・完了。これで本船はマスターリンクが確立され、完全にマスターの指揮下にはいった。命令を。」

「それなんだが、帆船の教習所にはいってなくてな・・・」


「心配無用。本船は完全自立制御型量子コンピューターを搭載している。マスターが望む座標を指定するだけで移動可能。

 なお、本船には半自動モードとして対戦モード、緊急モード、オートモード、待機モードが用意されている、しかしデフォルトのオートモードで90%の確度で十分。」

「なるほど・・・良くできている。あと、俺が知っておくべきことは?」


「本船はそのエネルギーのほとんどが、縦帆の採光スクリーンより供給される。従って、特別な場合を除き、帆はたたまず航行する。」

「帆が採光スクリーン・・・太陽光発電?そういえば今もエネルギー不足なんじゃないか?」


「外宇宙船アンモナイトより97,000億テラカロリーの充填を受けた、また、現在もチャージ中。そのため80%の確度で十分。」

「分った、では早速だが最寄りの港へ舵を向けてくれないか。仲間が待っている。」


「イエス。本船はこれより82%の確度で最寄りの港と推定される、座標軸X8829、Y3742へ向かう。」


 俺がキャプテンシートに座ると目の前に海図らしきものが展開され、ハヤブサの位置が表示された。沿岸の様子がよく分るが・・・

「ハヤブサ、海岸線が2重になっているのはなぜだ?」

「旧地図と現行の海岸線に差異があるため。」


「旧地図?」

「イエス、私が建造されたときの海図。」


「現行の地図とは?」

「現在本船は静止衛星ヤーンとアクセスし、速やかに海図を修正中。」


「なんだって・・・世界神ヤーンは静止衛星?・・・まてよ、俺たちのほかにヤーンにアクセスしているやつはいないか?」

「ここ1000年のオーダーで痕跡は見られない。」

「そうか・・・」

 お仲間さんはいないらしい。


「ハヤブサ、ヤーンにアクセスして現存する中で最も古い海図を、こちらに転送してくれ。」

「イエス、0.2秒お待ちください。」


「おお、やはりこの世界は俺たちの世界の延長線なのか・・・非常によく似た別世界、という可能性もあるが・・・それこそ90%の確度で俺たちの世界だな・・・」

 デスクスクリーンには、それでもかろうじて日本と分る島国が写っていた・・・


「他に説明はないか?」

「イエス、後方の階段を下りると住居スペース。4人分の個室に、リビング、トイレ、シャワールーム、洗面・洗濯室、ギャレー(調理場)にストア(倉庫)、特別避難室がある。」


「特別避難室てのは何だ?」

「言葉通り。ハヤブサに致命的な事象が発生した場合の避難ポッド。」

「致命的な何かか・・・起こってほしくはないな。」

「その発言には99.9%同意。」

「100%じゃないのか?」

「物事に100%は存在しない。」

「おまえ俺の知ってるやつに似てるよ、やっぱり名前を変「ハヤブサはハヤブサです。」・・・」


「ハヤブサは初めてもらった名前。」

「俺もいい名だと思っていた。」


「ところで本船に飲食物のストックはあるか?」

「飲料水であれば化学的半透膜により、随時供給可能。食料品はカーゴルームに医薬品などと一緒に保管中。ただし、すべてが錠剤タイプ。」

 12,000年前の食糧・・・品質保持期間はどのくらいだろうか、などと考えていると・・・


「マスター、指定海域。」

「ありがとう。」

 キャビンから出て表を眺めてみると、陸の人たちがこちらを眺めていた。それはそうだ、この時代の船は横帆船なのだ。こんなにシルエットの美しい縦帆船など見たことがないだろう。


 見物人が鈴なりで3人組がどこにいるのか分らんな・・・と思いつつ港をみやっていると・・・見つけた。

なにやら楽しそうな状況だ。見つけにくいのも道理、彼らは海に背を向け3人並んで得物を抜いていた。


 さて、どうするべきかな。ここでこのまま見物している、というのがいいな。次点はシャワーを浴びるという手もある・・・そうだな、そうしよう。俺はシャワーを浴び、ハヤブサからお揃いの未来派ルックを頂戴した。


 不思議繊維でできているこの服は、耐熱・耐寒・防刃・対ショック性があるすぐれものらしい。

 さて、やつらはどうなっているかな?

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