1-10.神代の間
「開いた?」
「進める!」
「神代の間だ!」
みんな踊るように飛び込んだ。開けたの俺なんだけどな・・・俺が踏み込むと自動的に照明がついて3人を驚かせた。
「勝手に明るくなった?」
「ローソクもないのに明るい?」
「ここが神代の間・・・」
天井の構造材そのものが発光しているようだ。
照明がつくってことは、動力が生きている・・・まあ、守護者も元気だったしな・・・動力源は何だ?
船もまた生きているのか・・・?
知りたいことは山ほどあったが、この部屋はシンプルすぎた。ビジネスホテルのシングルルームを想像してもらえば分るだろうか?そこには神代の武具も金銀財宝もなかった・・・だがそれ以上に価値あるもの、「神世の智慧」があった。
テーブルに無造作に置かれている薄型液晶モニターらしき何か。3人組がハズレだーと叫んでいるのを横目に俺は恐る恐る画面をタッチした。ブーンと微かな音が響くと画面が明るくなった。
「請輸入密碼」
暗証番号を入力してください、だと!とりあえず「客人」「密碼」としてみた。意味はそれぞれ「ゲスト」「パスワード」だ。どちらも通らない・・・これはお手上げだな、と思っているとおちゃらか3人組がやってきた。
「また神代文字じゃない!なにこれ?」
「ハヤトさん、本当に神代文字が分かるんですねぇ。」
「おお、それが分っただけでも良しとせねば。」
ちっとも良くない。でもみなさん、しっかり毛布やシーツをお持ち帰りなんですね?
そのとき俺は閃いてサッサッと画面に指を走らせた。書いた文字は「Guest」だ、通らない。「guest」は?「Select Language」と表示された。やったーーー!俺のターンだ!
もちろん「japanese」と書く。すると画面が切り替わり、「質問項目を入力してください」とでた。まず俺は「現在時刻を示せ」と入力、答えはすぐにでた。
「宇宙歴13045年8月7日11:17.31」宇宙歴ね、はいはい何となくそんな気はしてましたよ。きっと白いヤツとか赤いヤツが頑張ってるんだろう。レベル10を何とかしてくれるだろうか?
気をとりなおして質問を変えた。
「この船の目的は」
「機密事項です。」
「この船に乗員は存在するか」
「機密事項です。」
「この船に武器は積み込んでいるか」
「機密事項です。」
意地の悪い過去の人め・・・俺から見れば未来人だが。
「この船にアクセスできる物資はあるか」
「ゲストユーザーがアクセス可能な機体はアクティブクルーザー8823、個体識別番号IP-009となります。」
キターッ。
「それは現在操作可能か」
「是であり否。」
「説明せよ」
「アクティブクルーザー8823本体に損傷はない、ただしエネルギーのプールがなく稼働は不可能。」
「なにか方法はないか」
「本船の残存エネルギーをクルーザーに回し、本船は予備ジェネレーターによるスリープモードに移行する。」
「スリープモードによる限界稼働時間は」
「約3年。その間は外敵に対し有効な対策が取れない。来訪者によって破損の可能性がある。」
「それでもエネルギーをまわすことは可能か」
「12,000年ぶりのユーザーに従う。これまでの人間と異なり、今回のユーザーはオーナーに似ている。」
「そいつはありがとう、どうすりゃいい」
「いまから300秒でエネルギーのチャージが完了する。そうしたらアクティブクルーザー8823まで行けばいい、順路は光る廊下が教える・・・ただしそれも300秒が限界。それまでに本船より離脱せよ。」
「了解した、ありがとう・・・君に名はないのか」
「私の個体認識番号はHP-830CTだ。」
「君と話せて光栄だ、礼を言う」
「礼は不要だ、私は私の任務を果たす・・・300秒が経過する。」
いつのまにか俺を囲んで画面をながめている3人組。
「と、いうわけだ。言葉の意味は分からんでも、心で感じろ。かけっこの準備はいいか?」
「スタートだ」
スリープモードだと、もう扉を閉めたり守護者を出したりはできないんだろうか?
少し感慨に浸りながら、光る廊下をひたすら走り続ける。どうやら下へ下へと向かっているようだ。潮の香りがしてきた。
どうやら終点だ。光の廊下の終わりまで来ると空いていたハッチから外へ出た。あのハッチの厚さから考えると、やはり宇宙空間用か・・・そこは岬の洞窟だった。しばらくするとハッチは自動的に閉まった。
さて、問題のアクティブクルーザー8823とやらは海上に視認できる。多分、あれがそうなんだろう。しかし、我々のいる場所からかるく500メートルは離れている。
HP-830CTよ、最後にやってくれるじゃないか。それとも、お前さんの力でもこれが限界だったのか?
おれは躊躇いなく背負い袋をおろし、服を脱ぎだした。といってもTシャツとジーンズだけだが。3人とも絶望的な顔をしている。泳げないのか?
「泳げるけど、服と・・・弓も持っていけないし、海にも害獣はいるし・・・」
「そうだな、せっかく手にいれた槍は手放したくない。それに、害獣は脅威だ・・・」
「ハヤトは害獣が怖くはないのか?」
まあ、ふつうそうだよな。だがその辺は大丈夫なはずだ、多分。
「じゃあ、俺が船を動かして近場の港まで行くから。俺の荷物を持ってきてくれ、ついでに着替えも。」
「本当?!神代のお宝船をネコババしない?」
「ハヤトがそれでいいのでしたら。」
「このさい仕方ないが、思い切りのいいことだな。」
ザッと海にとびこむ。小太刀は念のため口にくわえている。照りつける日差しに海水が心地よい。しかし、パンツが脱げそうになるのは閉口した。
やっかいなお友達はやってこない。やはり、思った通りか・・・俺の中で、仮説がまた補強された。
そして俺は神代の船、いやクルーザーにたどり着いたのだ。




