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Tamer's Mythology  作者: 槻影
第二部:栄光の積み方

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第十三話:『落第』って事

 

 顔形、容姿だけはこの上なく、この世のものではない美貌を持つ少女だった。

 そして同時に、その邪悪さも、底知れない。


 セイルの短くない人生で出会った中でも、間違いなく随一の悪霊(レイス)だった。敵対しているわけでもないのに、決して弱点でもないのに、感じる『恐怖』は並の種ではない事が分かる。

 むしろ、これほどの存在が敵ではないことが信じられない。レイスのほとんどが――討伐対象の魔物だというのに。


 その身から感じる魔力値は膨大という言葉ですら足らず。基本的に魔法を操ることに長ける精霊種である自分たちの軽く二倍、三倍はある。測るのも馬鹿らしくなる程だ。


 間違いなく、これまで見たどの探求者よりも圧倒的に強い。

 自らのパーティが手も足も出ないと判断した相手――相性的に良くない機械種の主を相手に鼻歌交じりで勝利するその『強さ』は羨望すら感じない。


 そして、その悪霊は欠片もセイル達に意識を向けていなかった。

 その全意識、全集中は一人の青年にのみ傾けられている。それが、ほっとしたような、何とも言えない感情の根幹になっていた。


 自分の得意分野で喧嘩を売られてこれまで見たことのない程不機嫌になっているスイが、底冷えのするような声を上げた。

 スイは案外負けず嫌いである。いつもあっけらかんとしているブリュムに比べても、沸点が大分低い。いつも物静かなのは単純に言葉による会話に慣れていないだけであり、魔力による対話ならブリュムと同じとまではいかなくても、口数が多かった。


「……それ……何?」


 スイが射殺さんばかりの視線でアリスを射抜く。

 それだけで空気が重くなった。だが、張本人のアリスはスイの言葉をガン無視してフィルの肩にしなだれかかっている。

 手を握りすぎて、スイの手には血が滲んでいた。

 代わりに答えたのは、さっきから眠そうにしているフィルだった。

 本当に眠いのだろう。口数が少ないのもそのためだ。

 欠伸混じりでスイに答える。


 この重い雰囲気、冷たい言葉に平然と答えられる胆力を、セイルは少しだけ羨ましくなった。


「僕の従者(スレイブ)のアリス・ナイトウォーカーだよ」


「スレ……イブ……?」


「ああ……僕は魔物使いなんだ。それで、この子がスレイブ」 


 完全に初耳だったが、探求者ならばクラスを持っていても不思議じゃない。

 G級探求者でクラス持ちは多くはないが、魔物使いのクラスは非常に取得が簡単なクラスだった。同時にその難易度、メリットの少なさから不人気なクラスでもある。


 セイルは魔物使いについて詳しくないので、名前とスレイブと呼ばれる契約した魔物を扱う事くらいしか知らなかったが、それにしてもこれはひどかった。

 宿屋の従業員の顔を思い浮かべる。一般人? どこがだ。

 セイル達よりもよほど強いスレイブを連れた魔物使いのどこが一般人と呼べようか。セイルは後からアギに抗議することを決めた。


「ほら、アリス。セイル達に自己紹介を」


 マスターの言葉に、アリスは一瞬嫌そうな表情をしたが顔だけセイル達に向けて口を開く。


「……アリス・ナイトウォーカー。フィル・ガーデンの第一のスレイブ。貴方達のレベルではよろしくする機会はないと思うけど、以後、お見知り置きを」


 本当によろしくする気のない言葉に、スイの魔力が怒りに染まる。

 セイルはそれを見て、怒り狂った大精霊が街一つ滅ぼしたという童話を思い出した。

 だが、スイがそれを言葉に出す前にフィルが本当に眠そうな顔でアリスの頭を撫でる。大分ぞんざいな撫で方だったが、それだけで無表情だったアリスの表情がやや柔らかなものになる。


「ほら、アリス。謝罪して、ちゃんと自己紹介するんだ」


「でも……ご主人様。このパーティ、弱いです……」


 その出てきた言葉に、ブリュム、トネールの機嫌も一気に悪くなる。

 突然ぽっと出てきた少女に、自身の今までの経験を馬鹿にされるような発言をされては当然だ。仮にも、精霊種の中では落ち着きのある方だと考えているセイルもその言葉にはさすがに口を出さずには居られない。

 が、またしても出された絶妙なタイミングのフィルの返しに遮られる。


「弱くない。弱くはないよ、アリス。セイル達には才能がある。きっと後十年もすれば強くなるはずだ」


「へっ……フィル!?」


 その返しは、どちらかと言うとセイル達を馬鹿にしているように聞こえた。

 思わぬ援護射撃に、スイが怒りよりも先に唖然とした眼でフィルを二度見した。

 さっきからうすうす感じている事だが、むしろアリスというスレイブよりもフィルの方が酷い事を言っている。

 フィルが、まるで子守唄でも唄うかのような穏やかな声で続ける。


「僕はいい人達だと思うよ……僕みたいな戦闘に参加できない探求者をパーティに入れてくれるなんてそうそうできる事じゃない。さぁ、いい子だアリス。自己紹介、できるよね?」


「……はい(ダー)。ご主人様」


 マスターから窘められたアリスがゆっくりと姿勢を正して、丁寧に頭を下げる。

 戦闘時とは違う銀色の綺麗な虹彩。にこりと表情を柔らかに微笑めば、もはやさっきまでの印象が嘘であるかのようだ。恐怖もほぼ完全に抑えられており、そこには歳相応の少女の姿しか見えなかった。それが逆に恐ろしい。

 セイルは究極の猫かぶりを見たような気がした。


「先ほどは失礼いたしました。私の名前はアリス。種族は夜を往く者(ナイトウォーカー)。SSS級探求者、魔物使い(ブラッド・ルーラー)のフィル・ガーデンのスレイブをやっております。今後、主従共々宜しくお願い致します」


 丁寧なマキュリ語で自己紹介を終え、ぺこりと行儀よく頭を下げる。さらさらした髪が切れ長の眼を微かに隠している。

 男女問わずため息の出てしまう美貌だが、それ以上にその言葉はセイル達にとって青天の霹靂だった。


「SSS……級!?」


 スイの方を見る。スイは唖然とした表情でセイルの方を向き直り、首をぶんぶんと横に振った。

 トネールもブリュムも呆然とフィルの全身をもう一度観察している。どう見てもSSS級の出で立ちではない。只者ではないとは思っていたが、SSS級と言われるよりG級と言われたほうがまだ説得力がある。

 皆の様子を見て勘付いたのか、アリスの表情が一瞬だけ元に戻り鼻で嗤うと、すぐに表情を取り繕うとフィルの道具袋からカードを取り出して差し出した。


 今までセイルが見たことのない色のギルドカードだ。

 灰色がかった色だが、G級のそれと異なり、暗闇の中では見づらいが光っている。

 アリスは丁重にフィルの手を取ると、カードに触れさせた。

 持ち主が触れたことにより情報が浮き上がる。


「……ほぇー、SSS級のカードなんて初めてみた……」


 トネールが怒りを忘れてまじまじとカードを見る。だが、何度見てもカードに記載されたランクはSSSだった。スイが勘違いに気づいて顔色をなくす。

 SS級のカードならば見たことがあるが、SSS級の探求者はなかなかいない。少なくとも、セイルは会ったことがなかったし、一緒に探求者をやっているトネール、ブリュム、スイもないだろう。

 探求者は上位になればなるほど昇格に莫大なギルドポイントが必要となっていくためだ。A級までならば実力さえあれば短時間で上がれるが、それ以上になると相当な無茶をしなければランクは上がらない。


「この若さで……この力で……SSS級!?」


「ご主人様は天才ですので。まぁ、仰る通り、力はないのでよく勘違いされますけど」


 見る目がない方々には。

 と、アリスの眼がはっきりと言っていた。全員がちゃんと見たことを確認し、カードを丁寧に道具袋にしまう。

 その挙動は洗練されており、出来の良い女中が主人に傅いているようにしか見えない。


「機会があったらまたよろしくお願いします。ご主人様は弱いので……まぁ、もう機会なんてないけど」


 ぼそりと最後の言葉を付け加える。その瞬間だけ視線の温度が下がる。


 アリスは満足そうに言い切ると、再びマスターの腕に抱きついた。


 セイルはぶんぶん振られている尻尾を幻視した。

 同時に理解する。こういうペアなのだと。

 脆弱なマスターに、主を盲信している凶悪無比のスレイブ。故にSSS級。本人が弱くてもこれほど強力なスレイブを連れていればSSS級という途方も無いランクもまだ分かる。


「ご主人様、自己紹介しました」


「いい子だ、アリス。よく出来た。さすが僕の自慢のスレイブだ。もう一個頼めるかい?」


はい(ダー)。なんなりと」


 フィルが大きく欠伸をしてアリスを抱き寄せる。そのまま頭に頬をつけて身体を密着させた。アリスが頬を染め、一度身体を震わせる。


「僕は少し寝るよ。ついたら、宿まで連れて行ってベッドに寝かせておいて欲しい。多分明日は起きられないから――」


「薬屋に行ってアレンから『月水の涙』を受け取ればいいのですね」


「ああ、その通りだ、アリス。お使いかな。ついでに、エティにワードナーの解析を頼んできて欲しい。できるね?」


「……はい(ダー)。何も心配はいりません。私にお任せください」


「ああ……」


 そこで顔を上げ、セイルの方を見る。

 今にも瞼は閉じそうだった。頭をふらふらさせながら順番にパーティメンバーを見て、だらし無い顔で笑った。


「今日はありがとう……また今度、お礼はするよ……」


「ああ……いや、構わないよ……」


 反射的にそう答えてしまう。

 色々問い詰めようと思っていたが、その表情と言葉を聞くと肩の力が抜けてしまう。

 その答えに満足したように一度頷き、フィルは再度自身のスレイブの肩を枕のように抱きしめた。


「アリス……おやすみ」


「……ご主人様、おやすみなさい」


 フィルの眼がその言葉を最後に完全に閉じた。

 アリスがその身体をそっと離し、頭を自らの膝に降ろす。そこまでしても、フィルは全く動く気配がない。

 まだ場所は黒鉄の墓標をやっと出た所で、当然魔物の棲息区域内だった。夜明けが近い。水平線の向こうから青白い太陽が登りつつある。

 完全に動かなくなったフィルの頭を愛おしげにスレイブが撫でる。


「……寝……た?」


「ご主人様は……弱いといったはず」


 弱い。その意味をアリスはしっかりと理解していた。

 それは、決して、探求者にとって最も重要とされる筋力や魔力に限った事ではない。

 能力値というのは、種族によって隔絶された差異がある。エルフなら魔力に秀でるし、狼人ならば筋力に秀でる。竜人ならば全ての能力が平均して高いし、ゴーレムならば耐久がずば抜けて高い。

 それらのメリットが、プライマリーヒューマンにはほとんどない。彼らは全ての能力値が平均して低いのだ。故に、最弱。


 故に愛おしい。

 ガラス細工のように脆く、それでいて小さな生命の炎を何よりも力強く輝かせるその生き様は人の生を啜るレイスに取って格好の獲物でもある。


 ゆっくりと髪を梳く。体力を消耗し、完全に眠りの世界に入ったフィルはまるで死んだように身動ぎ一つしない。

 風の船は行きよりも遥かに早い速度で疾走しているが、揺れや寒さは全てシャットダウンできた。

 空間魔術師のスキルは攻撃に秀でていない分、その他の分野では高い汎用性がある。

 それこそが、アリスがこの方数年間フィルの剣として扱われてきた有用性の一つでもあった。


「安全運転でお願い。ご主人様を起こしたら……」


 船を操作するトネールに、アリスが犬歯を見せて壮絶に嗤う。それだけで周囲の気温が数度下がったかのように錯覚した。

 トネールが明らかな威嚇に唇を強く噛み締めながら、言い返した。


「勿論やってるよ! 大体、貴方のマスターは、僕達を攻撃するような事望んでないよね?」


 震えながらも強い口調だった。

 確かに、スレイブからはともかく、セイルはそのマスターからの敵意は一度も感じていない。たまにぶっとんではいても、狂人ではあっても善人の範疇にあるようにセイルには感じられた。まだ辛うじて、という言葉はつくが。


「くすくす、ご主人様……こんな事言ってますが、如何致しましょう?」


 アリスがゆっくりと頭を下げ、フィルの胸に耳をつける真似をする。数秒賭けて鼓動を聞き取ると、頭をゆっくりと上げた。


「ご主人様は……私に一任するといってる」


「嘘だッ!!」


「くすくすくす……」


 心底おかしそうに笑いながら、アリスが左手を上げる。

 刹那の瞬間、莫大な魔力が淀みなく展開された。その量、質は精霊種のセイルから見ても明らかに遥か上をいっているものだ。それも、一回りや二回りではない。

 スイの元素魔法を見て上出来だと思っていたのが、いかに井の中の蛙だったのかが分かる。

 セイルが慌てて身構えようとした瞬間、アリスが唱えた。


虚空の光(ファースト・バーン)


 幾何学的な精密奇怪な魔術文字が左手を中心に陣を描き、空気が音もなく爆発する。

 力の濁流が身構えるセイル達の中を通り抜け、そのまま凄まじい速度で地平を舐めた。

 

 呆然とした視線を一途に受け、アリスがくすくす笑いをしたまま手を下げた。

 再びご主人様の髪を撫で始める。その様はその怖気がするほどに整った、温かみの欠片もない美貌を除けば聖母のように見えなくもない。


「何を……」


「半径百キロの魔物を威嚇した、これでしばらくは安全のはず」


「威嚇……?」


 威嚇した相手は魔物じゃなくて自分たちじゃないのか?

 という問いをぎりぎりで飲み込む。

 アリスが平然と何でもない事のように答える。

 

「私を相手に……襲ってくる者はいない」


 それは傲慢ではなく、ただの事実なのだろう。

 機械種には本能はないが、代わりに組まれた行動原理(ロジック)がある。

 ただの魔力の波動だけでその力量がはっきり分かる力――如何に恐怖を感じぬ機械種といえど、あえて高位の魔物に攻撃を仕掛けてくる者はいるまい。


 たった一小節の魔術は、そう思わせるだけの力があった。


「これで……ご主人様を煩わせない」


「……僕達を攻撃しないの?」


「する意味がない。貴方達は、私達に取って些事に過ぎない」


 トネールの言葉に、アリスは即答した。

 些事。アリスにとって、セイル達はいくら優秀だったとしても取るに足らない凡百の一つに過ぎなかった。所詮はC級パーティ。単体でL級討伐対象を張ったアリスにとっては気づかぬうちに殺していてもおかしくないレベルの探求者だ。

 その表情から本気の色を感じ取って、スイが再び険悪な眼を向けた。


 スイの纏う魔力からその言いたいことを察し、アリスが答える。


「ご主人様が、レイブンシティのパーティの力を見ることを望んでいたから」


「……!?」


「くすくすくす、そんなにわかりやすい『魔力』を纏っていたら眠っててもわかる」


「……化け……物」


 『……なら、なんで私達についてきたの?』


 スイの意志を、魔力を、触れることさえなく感じ取り答えたその術は魔力交感による意思疎通ですらない。意思疎通というには余りにも一方通行過ぎた。

 すらすらとそのまま言葉を続ける。あくまでその意識は膝の上に向いたままで。


「ご主人様は力を見て、迷宮を探索する。私はその間に情報収集する。役割分担。リスクは高いけどリターンも大きい」


「……どういう、事!?」


「貴方達は『落第』って事」


 唐突なアリスのその言葉がセイルの頭を撃つ。


 落第? 何故? どうして?


 想定外のその単語に同様するメンバーを見て、アリスはにやりと悍ましい笑みを作る。


「貴方達は現時点でも優秀な中級探求者。後数十年も戦えばそれなりの探求者になれる。よかったね」


「……は?」


 完全に馬鹿にしているアリスの表情に、ブリュムが思わず恐怖を忘れて怒鳴りつける。

 アリスは慌てずにフィルを起こさぬよう、周囲の空間に無音の結界を張った。


「どういうこと? 途中までだったけど、ちゃんとお兄さんを守って討伐を終わらせたでしょ!?」


「だから優秀だと言ってる。でも、ただそれだけ。今の貴方達には才能がない」


 フィルは種族マニアだ。

 マキーナだろうがレイスだろうが、テイルだろうがスピリットだろうがヴィータだろうが大好きだ。当然、その範囲には自らが一生分かり合えないであろう、エレメンタルも含まれる。

 そして同時に、アリスは知っていた。

 フィルには、人を値踏みする癖がある。

 それが悪癖かはおいておいて、フィルは人に勝手に期待して勝手に失望する人間だった。

 自身にできる事が、自身よりも遥かに優れた能力を持った者にできない事を許容できない人間だった。


 足手まといを一人つれて迷宮の討伐依頼をこなす?

 確かに、それは優秀な探求者の行いだろう。

 だが、アリスのご主人様はもっと期待していたのだ。もっといけるはずだと。その弱点を知りながらも。


「ご主人様の眼がパーティを観察しているのには気づいていたはず……」


「……」


 セイルの脳裏をよぎる、戦闘中に垣間見える酷く冷徹な瞳。

 激しい温度の上下に、たまに見せる呆れたような表情、感心したような表情。

 それが気のせいで無いことは気づいていた。

 恐らく、スイやブリュムやトネールもそれは同じ。視線の温度が下がる度に顔をしかめたスイの表情が思い出される。


 そう、気づいていて言わなかった。全員が。


 相手がG級の探求者だったのならば、まだ許容できる。

 が、相手がSSS級――最上級の探求者だと知った今、その意味が重くのしかかってくる。


「精度、威力、判断力、勇気、連携、全てが全然足りてない。くすくすくす、ご主人様、可哀想。せっかく目にかけた探求者がこの程度のパーティで」


 それは酷く自分勝手で探求者の誇りを愚弄する行いだった。

 だが、余りにも本人たちを蚊帳の外にしたその『独り言』にセイルは……いや、水霊の灯のメンバーは口を挟めない。

 アリスがゆっくりと顔を落とす。

 何も塗っていないのに、血のように真紅の唇が開く。

 自身の命よりも遥かに愛おしいご主人様の耳元で。


「でも、大丈夫――私が、居ます」


 例え、周囲の探求者達がどんなに儚く愚かで脆弱だったとしても、主人には最強最悪の、伝説級(L級)のスレイブがいる。

 この世に存在するありとあらゆる災厄を払う最悪の剣が。


 それがその手にある限り、アリスの主人が敗北することはありえない。

 例え周囲の尽くが死に絶えたとしても。


「くすくすくすくす、今まで通り、それなりに生きてそれなりに優秀な探求者になるといい」


 私は、それを祈っている。


 と、眼の中だけは至極真剣に、アリスは言い放った。

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嘆きの亡霊は引退したい。

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