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ウロコなラクエン

結局は、というわけさな

作者: 吉川 優

完全に明けました。おめでとうございます(笑)

新年初投稿です。


本作品は連載小説「ウロコなラクエン」の別視点のお話です。

本編をお読みいただかなければ意味がわからない描写があるかと思いますので、ご了承ください。

 

 

  

「待ち合わせですね?」


 

 店主が聞いてきたので頷くと、店の少し奥まったテーブルへと案内された。

 カウンターの影になっているため、店の入り口からは分かりにくい場所だ。けれど待ち合わせ相手が相手なので、この席のほうが確かに有難い。

 良く知った友人でもある店主は、わしの感謝に軽く手を振ると注文を取って定位置であるカウンターの中へ入っていった。

 その後ろ姿をしばらく眺め、そして店の中を見回した。


「アレはまだ来てないんよ」

「呼び出しておいて、……今更か」


 連れが諦めるように息を吐きだす。力の入らない右足の代わりに、年季の入った杖を突きながらテーブルへと近づいてきたので、右手で椅子を引いてやる。


「マルシエ。疲れたか?」

「…………」


 わしの問いかけには無言ではあったけれど、マルシエは椅子に座るなりテーブルに肘をついてダルそうに顔を伏せた。

 この店まで足を運ぶことも、本来この出不精な連れにとってはかなり嫌々なのだ。毎度呼び出されるたびに、なんとか口説き伏せて連れてきている。


 それなのに呼び出した張本人はまだやってきていない。

 軍にいたころからそうだが、ヤツは作戦以外の時間を守った試しがなかった。


「カッハならもうしばらくかかると思いますよ」


 懐かしい腹立たしさを感じながらもう一度店の入り口を見た時、そう声をかけられてわしは声の方を見る。


「わたくしの方が早く着いたようです」

「ピューレ」


 どうやら彼女のほうが先に店内にいたらしい。わしはその名を呼んだ。


「久しぶりさな」

「ええ。ギューテス。

 ――マルシエも」


 ピューレが机に顔を伏せたままのマルシエの様子をうかがいながらそう言うと、わしの連れは顔を上げずに右手だけを挙げた。やはり疲れているのだろう。

 マルシエが休みやすいよう、テーブルに立てかけてあった杖を倒れないように静かに床へと下ろしながらわしはピューレへと問いかける。


「ヤツは今回もまた演習の参加か?」

「それは明日の予定なのですが、軍に捕まっているのを王城を出る前に見かけましたから」


 今回の呼び出しの張本人であるトーカスハは、どうやら王城を出る前に彼のファンに捕まったらしい。ヤツの強さに憧れる感情がわからないわけではないが、軍には未だに熱狂的な信者といってもよいほどヤツに心酔しているルザリドが多い。捕まったのであれば簡単には離さないだろう。

 それを見かけたのなら連れだしてやれば良いのに、ピューレは相変わらず自らのつがいに厳しい。


「カッハはなんだかんだ言って強くなろうとしている者と触れ合うのが好きですから」


 わしの指摘にそう答えて、ピューレは椅子に座る。


 …………なんだかんだ言ってピューレもトーカスハのことを


「ギューテス。何か妙なことでも考えていませんか?」

「それは無いさな」


 即座に否定する。

 そのときちょうど良いタイミングで店主が料理を運んできた。


「先に始めよう」


 それまで黙っていたマルシエがそう言った。テーブルにもたれるようにしていた半身を起こし、料理の皿をテーブルの上に広げる。

 すると店の中を何匹も飛び回っているシャリワイ(小虫)が皿の上にも舞った。


 ピューレは少し不満そうにしたが、店主が飲み物を配り始めたのでそれを受け取る。

 けれどわしが受け取った杯を見て、一度舌を出した。


「あなたは相変わらずなのですね」

「こればかりは体質さな。仕方がないんよ」


 わしは苦笑しながら杯を手に持つ。

 ピューレもマルシエも片手で掴む程度の大きさのカップを持っている。けれどわしが持っているのは平たい盃だ。ピューレはわしが軍にいたころを知っているが、そのころから似たようなことをしていた。


 他人よりも自分は酔いやすいのだ。そしてあまり癖も良くない。

 これを自分で自覚してからは、こういった店で飲む場合は他の者よりも量が少ない器で飲むことにしている。


「乾杯」


 三人で飲み物を傾け、一口飲み込む。

 口の中に広がる香りに、少しむせそうになりながら嚥下すると、マルシエがこちらを見ていた。


「久しぶりに飲むときついんよ」

「酔うなよ。置いていくからな」


 愛の無い言葉に、わしは一旦量を自重するために杯を置く。


「我を待たんかっ!」


 置いた途端、勢いよく店の扉が開く音と共にかなりの声量が店に響き渡った。入り口はこの席からは見えないが、間違いようがなくトーカスハだろう。

 旧友は相変わらずのようだ。三人で顔を合わせると、ピューレがため息をついた。


「もう一度乾杯だ。我にも同じものを頼むっ」


 どうやら店の外でわしらの乾杯の声が聞こえたらしい。

 トーカスハは店主にそう声をかけてから、迷うことなくテーブルへとやってきた。


「我が来るよりも先に始めるとは何事だっ」

「……カッハ。まずは遅れてきたことを謝ったらどうですか」

「ん、おおそうか。すまんすまん。

 お主らも息災か?」


 あっけらかんと謝罪をしてから、トーカスハは椅子に座りつつこちらを見る。


「変わりない」

「ここ何年は特に問題という問題もなかったんよ」


 マルシエと共にわしもうなずく。


「こんな呼び出しもなかったし、平和そのものさな」

「それは寂しい思いさせてすまなかったな。がーっはっはっはっはっは」


 久しぶりに聞く高笑いに、わしは軽く天井を仰ぎ見た。

 嫌味が素直に通じる相手ではないことは分かっていたが、こう綺麗に流されると毒気が抜かれる。


 再びトーカスハを交えて乾杯をし直し、わしらは食事を始めた。


 待たされたとはいえ友人同士。積もる話もあり、昔話に花を咲かせる。

 調子にのったトーカスハをピューレが殴りつけることもありながら、次第に話題は近況へと移っていった。


「オリンジィヌはどんな様子か?」

「穏やかだな。毎日鍛錬を行っても、我に付いてこれる者はいないのが不足ではあるがな」

「ではラジャヌスも動かんか?」

「そうでなければ我はここにはおらん」


 わしの問いにトーカスハはカップをあおりながら答える。


 トーカスハはこのゼリウンのある西大陸の中でも最東端のオリンジィヌ一帯の領主だ。

 戦争も戦後処理も終わった後、今の王にその任を任されたと聞いている。


 わしは一度機会がありオリンジィヌを訪れたことがあるが、にぎやかな街だったという印象がある。

 町は海の傍にあるため、内陸のエンフォーレにはない珍しい物もたくさんあった。


 けれどオリンジィヌの町を表現するならばこれが一番正しいだろう。


 最もヒューモスに近い町。


 実際にはヒューモスが住む東大陸へ行くには中江と呼ばれる広大な海を越える必要があるため、すぐ側にヒューモスがいるわけではない。けれど戦争では何度も戦火にまかれた町であったのは確かだ。

 戦績もあるトーカスハがその領主であることが、何を意味するのかは想像に容易く、わしは聞かずにはいられなかった。


「ヒューモスの監視はいつまで続くか?」


 手に持った料理に口をつけながらトーカスハはこちらを横目で見た。

 監視――この任務があるからトーカスハは滅多なことではオリンジィヌを離れられない。いや、ヤツの足であれば報告のために一両日中にエンフォーレのオリンジィヌを往復することも可能であるため、たまに王城へは顔を出しているようではあるが、長く滞在することができない。


 だからこそ昔からの友人であるわしらとも、何年も会うことがなかった。

 十分に咀嚼し飲み込んでからトーカスハは口を開いた。


「いつまでであろうな。遠い話でなければ良いが」

「?」


 その答えに違和感を覚える。わしが再び問いを口にしようとした時だった。


「トーカスハの旦那っ、この店に来られてたんっすね!」


 若いルザリドの声に、わしを口をつぐむ。

 見るとトーカスハの傍に、数人の見かけないルザリドがやってきていた。

 驚いたようだがトーカスハが全員を見回すために立ち上がる。


「偶然っす。さっきはあざっした!」

「うむ」


 キビキビとした動きで胸に手をあてるルザリドに、トーカスハは鷹揚にうなずいてからわしらを見る。


「先ほどまで王城で我がしごいてやった者たちだ」


 どうやら軍のルザリドらしい。見るにおそらくはかなりの若手だろう。

 トーカスハを見る目は輝いており、明らかに信者だ。


「仲間と飲んでるんっすけど、旦那。俺らのテーブルに寄ってもらえないっすか?

 旦那の武勇伝、聞きたがってる奴らばっかなんで」


 挨拶までは大目に見ていたが、わしはこの提案に少し気分を害した。


 友人と飲んでいるというのに、空気を読まない若者だ。

 まったく近頃の若い奴は、と考えたところで、そんなことを考えるほど自分が年を取ったことにため息をついた。


「今は無理だ。すまんな」


 トーカスハは当然断った。

 不服そうにしている若いルザリドたちに、次回は必ず相手をしようと約束してやると、彼らは素直にテーブルを離れて行った。それを見届けてからトーカスハは「悪かったな」とわしらへと声をかける。


「慕われているというか、盲信しているというか。

 もう少しなんとかならないものでしょうか」

「ピューレよ。あまり言ってやるな。悪気はないのだ」


 少し棘のあるピューレの物言いに、トーカスハが取り成した。


「だからこそ性質が悪いのです」


 そう言ってからピューレはまだ何か言おうとするようにトーカスハを見たが、その視線はヤツから逸れていた。

 わしはそれに気づき、その視線の先を追う。


 どこか見たことのあるルザリドが立っていた。いや、見たことがあると言えば語弊がある。

 傍で立ったままでいるルザリドとよく似た面影のルザリドで、その面持ちには緊張が現れていた。

 トーカスハもピューレも、そのルザリドを見つめて動きを止めている。


「なるほど、そっくりだな」


 マルシエが驚いたような、それでも納得したような声でそう言ったのが聞こえた。


「アル、か。どうした?」


 固まっていたつがいの一人が、ようやく口を開いた。ピューレも緊張しているようで、鱗が軽く逆立っている。


 アルベルト――――これがトーカスハとピューレの子か。


 話には聞いていたが、会うどころか見ることすらこれが実は初めてだった。確か今は王城で近衛部隊の副隊長をしているはずだ。

 手には布が巻かれた長手の棒のようなものを持っていたが、それ以外はさきほどトーカスハへと話しかけてきた若者とそう変わる格好ではない。精悍な青年といった風情ではあったが、直立してこちらを見ている様が父親に似ず真面目そうで、若い頃のトーカスハを思い出して少し笑いそうになる。


 しかしそれを押し殺し、わしはこの親子を見守った。

 マルシエも先ほどの言葉以外は何も口に出そうとはしない。


 この親と子の間にある確執を、わしらは知っている。

 確執というよりは親が罪悪感を勝手に抱いているだけなのではとも思っているが、彼ら親子が話すらまともにしたことがないことは間違いないだろう。


「お話し中、申し訳ない」


 まずアルベルトはそう言って、わしとマルシエに向かって胸に手を当てた。


「すこしお借りしたいのですが良いでしょうか」


 この場合はトーカスハとピューレを、だろうか。

 わしはマルシエを目を見交わすと、アルベルトへと頷いてやった。


「構わんよ。なんだったらおまえさんもテーブルにつくか?」

「それは結構。感謝します」


 そしてアルベルトは再びトーカスハたちの方を向く。

 すると手に持っていた棒をトーカスハへ。それからそれほど大きくない包みを取り出しピューレへと渡した。

 戸惑いながらも受け取るピューレを見てから、トーカスハは息子へと向き直る。


「これはなんだ?」


 その問いに対する答えは、わしらには予想しえないものだった。

 アルベルトが頭を下げたのだ(・・・・・・・)



「トーカスハ、ピューレ。あなたたちに頼みがある」



 その行為の意味はルザリドならば誰でも知っている。

 交戦の構え。通称そう呼ばれるこの上半身を上下させることは、相手への威嚇を意味する。


 けれど今ではほとんど廃れている方法だが、この行為の意味が変わる場合がある。


 目の前の相手の得意武器を、自らに用意できる最上の物を手渡した上で願いを言いながら頭を下げるのだ。


 何が何でも言うことを聞いてもらいたい。必要であるなら――――力ずくで屈服させてでも。


 そういった強い願いがある場合に行われる行為だった。

 もちろん相手は、願いを叶える義務はない。しかし断るのであればそれ相応の覚悟を持つ必要がある。


 ルザリドは力を重視する種族。

 願いを言った者との戦いで負ければ、その願いを叶えなければいけない。


 昔はよく行われた決闘の申し込み方であったが、アルベルトの世代のルザリドでは知らない者の方が多いだろう。


「よくそんな作法を知っておったな」

「エンセル様に昔習ったので」


 感嘆の声を上げるトーカスハに、アルベルトが顔を上げて答える。

 それを聞いてピューレは受け取った包みを抱きしめてから呟いた。


「あの方には本当に、感謝してもしきれません」


 抱きしめたまま動きそうにないピューレから視線を逸らすと、トーカスハは自らが持つ棒にかかった布をはぎ取る。

 現れたのは槍だった。

 トーカスハが持ち上げると天井近くに刃が届き、傍を通ったシャリワイがその輝きに驚いたように遠ざかった。


 しばらく無言でトーカスハは槍を検分する。


 わしは静かに唾を飲み込む。

 手に取らずともわかる。柄の部分の細工も、刃の鋭さも、明らかに最上の物。


「これは……大きく出たな」


 笑いを含んだ声でトーカスハが槍を見つめつつ呟いた。

 ヤツの得意武器は二つ名にもなっている槍だ。

 声音から判断するに、ヤツもこの槍は良い物だとわかっているのだろう。


「ピューレ、どうする?」


 ヤツは槍から目をはなさず、つがいへと声をかけた。


「わたくしは従いましょう。アルの望みが何であれ」

「そうか」


 このつがいたちがこのアルベルトへと負い目を感じているのは知っている。

 ピューレがそう答えたことは、わしには当然の結論のように思えた。


 しかしその当然を通り越して異空間を歩むのが、このトーカスハ=リンデンという男だ。


「我は弱き者には従わぬ」


 そう言って槍を振り下ろすと、アルベルトの目の前に刃を向けた。


「この作法を知っているのならば、我との戦いも辞さない覚悟は持っているはずであるな?」

「もちろん。むしろそうなるだろうと思ってやってきた」


 アルベルトは動揺した様子もなく、トーカスハを見つめている。


「はたしてそうなのか?」

「何が言いたい」

「お主の得手とする武器は聞いている。持っては来ていないようだが?」

「あれは必要ない」


 その返答はトーカスハの武を見縊っているかのように思えた。

 トーカスハの槍を握る手に力が入ったのが見え、わしは止めるべきか一瞬悩む。


「俺はもう、あれを振るう必要がない場所にいる」


 続いたアルベルトの言葉に、トーカスハはその真意を確かめるようにゆっくりと槍の刃先を動かす。

 アルベルトの喉元へと向けてから、数瞬。トーカスハはその刃先を引いた。


「願いはなんだ?」


 ゆっくりと体の前で槍を立てながら、トーカスハは言う。

 アルベルトは戸惑ったようにその槍の動きを見ながら、その願いを口に出した。


「あるヒューモスの助けになってもらいたい、っ?!」


 それをアルベルトが言い終わった時点でのトーカスハの動きは、おそらくこの場の誰にも見えなかっただろう。


 わしにすら見えたのは、輝線の一筋。

 その線上にいた一匹のシャリワイが真っ二つに分かたれたことだけだった。


 気が付けばトーカスハがアルベルトに向かって、槍を突き出した形で止まっていた。

 ピューレが息を飲む音が聞こえる。トーカスハの槍は、アルベルトの胴体の中心を間違いなく捉える位置へと伸びていた。


 わしは右手で自分の膝を叩く。


「お見事」


 その言葉でトーカスハは姿勢を戻し、再び槍を立てた。

 アルベルトは自らの胴体――――のすぐ横を通り過ぎて戻された槍を、目を見開きながら見つめている。


 あの一瞬。アルベルトにトーカスハの動きが見えていたとは思えない。

 けれどその槍の一突きを本能的にアルベルトは感じとり、最小の動きで避けたのだ。


「これが避けられるならば良いだろう」


 満足げにうなずきながらトーカスハは笑う。


「我もお主の願い、叶えてやろうぞ。がーっはっはっはっはっは」






 その後、他言無用と念を押されてから聞かせてもらったアルベルトの願いにわしは納得する。

 いつもであればすぐさまオリンジィヌへ戻るトーカスハが、わしらと会う時間が取れるほどエンフォーレに滞在している理由も。先ほどのトーカスハとの問答で感じた違和感も。


 簡単には信じられないヒューモスとの関係を、今の王は作ろうとしているのだ。

 そしてそれはもしかすると、あまり遠い話ではないのかもしれない。


 アルベルトが古い作法を持ち出してまでトーカスハとピューレへと手助けを頼むサラというヒューモスの娘に、わしは興味を持った。奇妙なヒューモスだと説明しながらも、アルベルトはサラという娘を随分と評価しているようだ。


 終始ご機嫌のトーカスハの高笑いに邪魔されつつ、一通り説明し終えてからアルベルトは王城へと帰ると言いだした。

 もうしばらくトーカスハとピューレはわしらと共に過ごすつもりなので、一人で彼が店をでていった。


「アルベルト」


 わしは店を出た若いルザリドの後を追って店を出る。

 店の前の道の真ん中で、こちらを振り返っている彼にわしは問いかけた。


「あの一突き。本気でないのはわかっていたか?」

「一応」


 憮然とした声だ。

 ああ、やはりこいつはトーカスハの息子だ。手加減されたことに安堵よりも不満を持っているのが手に取るようにわかる。


 そのことがどこか嬉しく、懐かしい。


「おまえさん、トーカスハと本当によく似てるんよ」

「……やめてくれ。アレと一緒にされると気分が滅入る」


 本気で嫌そうな声でそんな返答が返ってくる。

 そしてもう一度わしにむけてアルベルトは胸に手を当てると、王城へ向けて走りだす。


 するとその姿は、まるで掻き消えるように店の前からなくなってしまった。


 その速さは、おそらくわしでも付いていくことができないほどで。

 それは昔、戦場で見たトーカスハを思い起こさせるもので。


「おまえさんらは間違いなく、親子さな」


 わしは思わず舌を出して笑ったのだった。




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