私、幼馴染と話をする
投稿できました。
それなりに急いで大学に行ったおかげで、レポートの提出は無事に間に合わせることができた。なぜか受け取ってもらうときに、教授が私の左上をじっと見つめていたため、私は冷や汗をダラダラ流しながら、この時間が早く過ぎ去ることを祈っていたわけだけど。
そもそもは、今日に限って一緒についてきた白蛇様に責任があるわけだけど。…本当に何で付いてきたのかがわからん。
「白蛇様、この後はもう何にもないんですけど、どうします?というかなんで今日、ついてきたんですか?」
質問すると、白蛇様からは少し外が見てみたかったのだと答えが返ってくる。そんなこともあるんですか。と返すが、それ以来返事が返ってくることはなかった。
少し様子が変だなっとも思ったが、こんなこともあるのか流してしまった。そもそもこの状態の白蛇様を見ることができる人間はかなり限られている。
その為、ヘタをしたらあのお姉ちゃん独り言をぶつぶつ言ってるよーと小さい子供に指をさされかねないのである。そんな怪しい女扱いは避けたいので、白蛇様が黙ってくれて少し安心する。
でも本当に珍しい、いつもだったらすぐにお菓子!お菓子!言ってうるさいのに。まぁ、ぼおっとしてる白蛇様ならほおって置いても大丈夫そうだし、せっかくだから紗彩に会いに行くことにした。
紗彩は私の小さいころからの友達で、中学、高校と私が両親のもとに行っている時でさえ、こまめに連絡を取り合っていた、俗にいう幼馴染という間柄だ。
当時、体が弱かった私は、外で遊ぶと体調を崩すことが多く、あまり外では遊ばずに、家の中で積み木をしたりお絵かきをして遊んでいた。しかしそんな私のところに紗彩はよくボールを持ってやって来ては、昨日どのように遊んだとか、こんなこともやってみたいといった話をしてくれた。そして外で遊べる日は、私の手を引っ張ってそこら中を駆け回っていた程の活発な少女であった。
だがしかし、時が経つのは早いもので、当時のお転婆少女は、今では快活な女性へと変貌と遂げた。…これには物は言いようだと強く実感したものである。
そんな彼女は、将来実家の神社を継ぐために大学で猛勉強中である。
「おはよー紗彩、昨日ぶりー」
「あっ栞ちゃんおはよー。昨日ぶりだねー、ついでによく間に合ったね、校門のところで走ってるのここから見えたよ」
「うえっ!」
「いや~速かったねぇ。もうごぼう抜き状態だったよ、周りの人とかも目丸くしてたしね」
「…なんでそんなことここから見えるのよ、さすがに無理でしょ、あんた」
「まあね、だからそこは私が見たのではなく、りっちゃんが教えてくれたの。栞ちゃんが全力疾走してるってね」
「あぁ~、また莉都が見てたのね」
そうらしいよーとぽやぽやした感じで紗彩が答える。先ほどあんだけお転婆だ、快活だと言っておきながら、今これだけぽやぽやしている理由はズバリ、好奇心スイッチがオフになっているからなのだ。
好奇心スイッチとは、紗彩が興味のあることやものを目の前にすると、その興味の対象に、まるで猪突猛進する猪のように突っ込んでいき、そのあとには疲れ果てた屍しか残らないっと言わしめたものである。
実際問題、小さいころの私も、この好奇心スイッチの餌食になっていたため、初めてオフの状態になっている時の紗彩を見て驚いたものである。
小さいときは、毎朝7時前には我が家に来て、なぜが一緒に朝食をとっていた。そして、その間は私に対しての尋問タイムであった。…今思うと祖母はその状態をかなり面白がっていた。なぜならちゃっかり紗彩の分の朝食も用意していたからだ。いや、やめさせろよと思わないでもなかったが、少なからず当時の私はそれを楽しんでいたんだと思う。
そして莉都は紗彩経由で知り合いになった、コンピューターに強い友達だ。なんかよくわからないが、電子機器全般の扱いが得意らしく、いろんなプログラムを開発しては、かなりの額を稼いでるのだと言っていた。
そしてそんな電子機器マスターの莉都はもちろんハッキングなんてものもできる。そのためさっきの私の全力疾走は、学園の監視カメラのサーバーにアクセスをして見ていたのだろう。それ犯罪だからっと一度呆れながらに行ったことがあるが、その時の莉都は
「一般人の私に破られるくらいショボイセキュリティーしてるほうが悪い」
と淡々と言ってのけた。いや破るほうが悪いだろとは思ったが言わないで置いた。うん、なんか怖かったしその時の莉都の目。
「それよりも、栞ちゃん………栞ちゃん聞こえてる?」
「あ、ごめん聞いてなかった」
「もう!また考え事?」
「うん、ちょっとね」
「……まぁいいや、それよりこの後、りっちゃんとこの前雑誌で紹介されてたカフェに行くんだけど、栞ちゃんも行くでしょ?」
「あ、はい、ていうか決定事項なのね」
「何言ってるの?あたりまえじゃない」
いや普通にあたりまえじゃねーよとも思ったが、確かに私もそこのケーキには興味があったため、便乗しておくことにした。
しかし、白蛇様が一緒となると少しめんどくさい、普段は私が作ったケーキを一人でホール食いしているため量が確保できたが、売られているケーキは少し値が張るため量を確保することができない。
一番いいのはすぐに帰ってもらうことなのだが、今の話を聞いていた白蛇様の目は、キラキラとして輝いているため、了承しないだろう。
うーん…どうしよう、連れて行くべきか、それとも返すか、うーん…なんかどっちもめんどくさそうなので、トイレに行くふりをして白蛇様と話をつけなければ。
ハッキングは犯罪です、絶対にやめましょう。
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