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四日目

    1    

 AM8:57 

 ここへ来て四日目の朝を迎えた。

 しかし、昨夜食った美緒曰く(いわ)"美味(うま)すぎて倒れる"料理の味がまだ口の中に残っており、爽やかなお目覚めとは言えなかった。

 水を飲むため(というよりは昨日食った美緒の料理の味を忘れる為に)、俺は川へ向かった。

 作業を一段落させて洞穴に戻ると、二人はまだ眠っていた。

「おい、起きろ」

 返答は無い。俺は慎二の背中に膝を一発入れて起こしてやった。

「ぐはっ!?」

 いきなり背中に一発入れられて驚いたのもあるのだろう。少しの力だったがかなり悶絶していた。

 10分ぐらいして慎二が落ち着いた頃、美緒も慎二の悲鳴で起きだしていた。彼女は慎二の身に何が起こったのかわからない様子でキョトンとしていた。

 もう少し優しく起こしてくれよ、だの何だの文句を呟きながら、慎二は顔を洗うために川へ向かった。俺はその間笑いを堪えることに徹していた。

 暫くして美緒も川へ行く。彼女はどうやらまだ寝ぼけているようだ。何度が躓いて転びそうになっていた。

 15分ほどかけて二人が戻ってくる。慎二は手荒な起こされ方をしたので少し不機嫌になっていた。

 で、無理やり起こしたのには訳がある。

 昨日から美緒がやって来たので、いままでの一日の分担を変える必要があったのだ。

「で、俺の意見からすれば美緒が来たので島の探索する係をもう一人増やしたいと思うんだが」

 俺が意見を出す。すると慎二が賛成したのだが、美緒はそれに反対していた。

「私は?一人になるのは嫌よ」

 女性ならば仕方が無いのだろう。俺は少し考えた。

「なら火の番を美緒に任せてその周辺で俺か慎二が一日ずつ交代して食料と薪を探すっていうのはどうだ?」

 珍しく慎二が良い意見を出した。

「決まりだな。それにしよう。じゃあ、今日は俺が島の探索をする。美緒はここに残って火の番を、慎二はその周りで食料を調達したり薪を拾ったりする。俺と慎二はそれを一日ずつ交代する形だな」

「それと私はご飯を作る係ね」

 即答で否定した。


    2

 

 PM00:37

 話し合いをしていたらすっかり真昼になってしまった。俺は急いで出発の準備をし、洞穴を出た。

 ジャングルを抜けて昨日美緒のいた浜辺へ行く。今回は道に迷わなかった。

 美緒のいた南東の浜辺は、さらに違う道へと続いていた。見た限りではどうやら竹林のようだ。

「この竹、よくしなるな」

 落ちていた竹の棒を曲げながら呟く。これを見た俺はある事を閃いた。

「後で帰って試してみよう」

 いくつか竹をバックパックに突っ込み、俺はさらに奥へ進んだ。

 ここは大きな山のようだ。歩いていく度にどんどん急斜面になっていく。

 と、その時俺のすぐ真横を何かが素早く横切った。

 蜂だ。

 かなり大きい蜂だった。サイズと少ししか見えなかったがあの黒と黄色の模様からしてオオスズメバチだろう。

 ここから先へ行くのは危険だった。蜂がいるのなら、近くに蜂の巣がある事は分かっているからだ。

 俺は浜辺へと引き返した。あの時蜂が俺の横を通っていなかったら、と思うと背筋がヒヤリとした。

 あそこに行くのは極力避けよう。あの山は危険だ。

 陽はもう沈み始めていた。

 

    3    


  PM2:50

 慎二は海に潜っていた。海の魚をモリで突く為だ。

 とはいうものの、ウェットスーツなどという贅沢品は無い。冷たい海の中を素潜りで泳いでいた。

 と、目の前にアジが泳いでいるのを見つけた。

 昨日、のモリ突きでコツは覚えている。慎二は慎重に狙いを定めてモリを放った。

 命中した。モリはアジに突き刺さっていた。

 慎二は素早くモリから獲物を外すと、次は目の前を泳いでいたイワシに狙いをつけて放った。これも命中だ。

 慎二は楽しくて仕方が無いようで、沢山の魚を突いていた。

 丁度慎二の調子が最高潮に達した頃、真下のかなり深いところから大きな魚影がこちらに向かってくるのを見た。

 鮫だ。

 恐らく慎二の捕まえた魚、つまりモリで刺した傷口から出てくる血の臭いに引き寄せられてきたのだろう。運よくいち早くそれに気が付いた慎二は無我夢中で浅瀬へ逃げた。

 ちなみに、慎二は高校2年生まで水泳をやっていて、地方の大会で優勝するほどの実力だった。

 その事も幸いしたのだろう。ギリギリ鮫から逃れる事ができた。

 海水の冷たさと恐怖感で、慎二の顔は真っ青になっていた。


   4

 

 PM4:24  

 また道に迷った。

 何度道に迷えばいいのだろう。俺はまたしてもジャングルのど真ん中で道に迷っていた。

「こっちか?…いやあっちか」

 相変わらずの方向音痴で、30分以上ジャングルの中をさまよっていた。

 やっとの思いであの果物の密集地に辿り着いた。

 ここなら帰れるな、と俺はため息をついた。俺はそこでいくらか果物を調達しておいた。

 確か、ここの近くにはハブがいたはずだ。あの時は何も持っていなかったので逃げるしかなかったが、今はナイフを持っている。蛇は大事なタンパク源になるはずだ。

 しかしハブはいなかった。大事な時にいないとは。俺は大きくため息をついた。


    5

 

 PM6:13

 帰宅した。

 慎二はやや疲れ気味のようだった。後から美緒に話を聞いたのだが、思わず笑ってしまった。

 しかし、慎二の調達した食料の量は多かった。大量の魚が置いてあったのだ。

「じゃあ、私が料理を」

「いや、今日は俺がやる」

 美緒が晩飯の支度をし始めたので慌てて制止した。これ以上あの殺人料理を食わされるのはもう二度と御免だ。

 俺は一人暮らしをしていた事もあって、それなりに料理はできた。30分ほどして俺はアジの開きとイワシを焼いたものを持ってきた。

「残りの魚はどうするの?」

 美緒が聞いてきたので、俺は干物にして日持ちしやすくさせると言った。美緒はそれで納得したようだ。

 晩飯を食い終わった後、俺は今日の成果を報告した。南東の浜辺には竹林があった事。そしてその奥にはどうやら蜂の巣があるという事。

 しかし、俺がまた道に迷ったことは言わなかった。

 とそこで俺は竹林で拾った竹の棒を取り出した。俺は竹を曲げながら言った。

「この島の竹は見ての通りよくしなる。これと植物のツタを使えば弓が出来るんじゃないか?」

「そうか!それで矢を調達すれば動物を狩れる」

 慎二が素早く食いついた。こいつは肉が好きだからな。

「それと、竹を細かく割って編む事で、(かご)を作れるかもしれないな」

「籠を使って小動物を捕まえるって事?」

 美緒も話に乗った。

 確かに籠を使えばより手軽に食料を調達できるかもしれない。

 しかし、問題点が一つだけあった。

「籠を編めるような手先の器用な人がいない」

 一番の難点だった。

 すると、美緒が唐突に口を開いた。

「あら、私はそういうのは得意よ。こう見えても中学校での技術や家庭科の成績は1~5で言えば3だったのよ」

 少なからず女性らしさはあるようだが、その成績は良いのか悪いのか正直分からない。

 さっそく籠を作ってもらいたいところなのだが、あいにく全員睡魔に襲われてきていた。

「私眠くなっちゃった。もう寝るわ」美緒が眠りについた。

「俺も寝るわ。おやすみ」慎二も慎二で限界だったらしく、すぐに眠ってしまった。

 さて、俺も寝るか。俺もかなり疲労が溜まっていた。

 ここへ来て間もない頃は時差ボケもあり、うまく寝付けなかったのだが、最近になってようやく体がついてこれるようになった。

 疲労もあるのだろう。俺は横になるとすぐに夢の世界へと落ちていった。


あ~…

美緒の出番が少ない(笑

もっと増やしてやらないと… 

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