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一日目

    1

 吹き抜ける風、地面の硬い感触。やけに冷える空気。

 それらを肌に感じ、俺は目を覚ました。

「ん、起きたか」

 声に振り返ると、そこには幼馴染である慎二が座っていた。

「なんだ、起きてたのか」

 ふと腕時計を見ると、既に朝の10時を知らせていた。

「起こしてくれれば良かったのに」

 実際、今日は島を詳しく探索したかったのだが。

「まぁ、とりあえず水でも飲んだらどうだ?そこの川、飲める水だぞ」

 そういえばそうだ。昨晩から何も飲んでいない。喉がカラカラに渇いていた。

 俺は川の河口へと降り、水を飲んだ後に顔を洗った。

 作業を終わらせて洞穴に戻ると、起きた時に寒気を感じた理由を理解した。焚き火が消えているのだ。

「見事に燃え尽きてるな」

 隣で座っていた慎二が焚き火の灰の混じった焼け跡を見て呟いた。

「こりゃ時々薪をくべる必要があるな。俺かお前か、火の番をするしか無いか」

 5分ほど話し合った結果、今日は慎二、明日は俺という風に一日ずつ薪をくべる係と島を探索する係を交代していくような形になった。

 今日は俺が島を探索する係だ。

「んじゃ、行って来る」

 慎二にそう告げて、俺は洞穴を後にした。


    2


AM11:36

―――――ジャングルにて――――――


 湿度が異様に高く、鬱葱と生い茂るジャングル。

 俺はその中で、絡み付いてくる木のツタに苦戦していた。

「全く、このままだといつまで経っても抜け出せないな」

 足元に絡みつくツタを鷲づかみにして、全力で引きちぎって行く。

 10分程悪戦苦闘していただろうか。急に開けた土地へたどり着いた。

 そこは食物の宝庫だった。

 温暖な気候や外敵の少なさが幸いしたのだろう。バナナの木やパイナップル、キウイなどの果物が豊富にあった。

 俺はバナナを一房とキウイを6個ほどバックパックに入れ、進行を再開した。


    3


 一方その頃、慎二は洞穴の外にでて、焚き火の火が消えないよう注意しながら周辺を探索していた。

「何か無いかな」

 慎二は海岸の方へ行き、探索をしていた。

 その時、少し奥へ行き過ぎたのだろう。高波を頭から被ってしまった。

 潮水の塩辛さに口を歪めていたが、同時に海草――おそらくワカメか何かだろう―――が打ち揚げられていた。

 慎二がワカメを拾い上げて持ち帰ろうとしていると、目の前のヤシの木にヤシの実が生っているのに気が付いた。

 勢い良くヤシの木を蹴りつけてみると、頭上からヤシの実が降りかかり、避ける事も出来ずに慎二はヤシの実に打ちのめされていた。

「痛ててててて…」

 痛みに悶絶しながらも、落ちて来たヤシの実を3つほど拾い上げ、洞穴に戻っていった。

 この時、慎二はある事を心に誓っていた。

 この先、絶対にヤシの木は蹴らない、と。


    4

 AM1:24

 ―――――草原にて―――――


 ジャングルを抜けた先、そこは一面緑に覆われた草原だった。

 見渡すかぎりの草原。その広さに驚きながらも俺は探索を開始していた。

 しかし、10分、20分と探索をしていたものの、何も見つからなかった。文字通りただの「見渡す限りの草原」というわけだ。

「仕方が無い…もう少し進むか」

 とはいうものの、道のようなところは何一つ見当たらない。ジャングルに引き返すしか無いな、と俺はため息をつきつつも引き下がっていった。

 ジャングルを再度探索していると、地面に何かがいる事に気が付いた。

 恐る恐る近づいて見ると、地面に這いつくばっている物体の正体に気が付いた。

「ハブ…!」

 牙に猛毒を持つ凶暴な蛇だ。

「気づかれないように…そっと…逃げよう…」

 やれやれ、この島にはこんな凶暴な生物もいるというのか。

 気づかれないようにそっとその場を立ち去った俺は、その後何も探す事も出来ず、洞穴に帰るしか無かった。

 時刻は午後の5:30を知らせていた。

 

――――悠樹、帰宅―――――


「どうしたんだ?やけに疲れてそうだが」

 帰って来た途端に慎二の言葉が飛んでくる。なるほどいくら阿呆の慎二でも疲れているように見えるということは、俺は相当に疲れているような顔色をしてるのだろう。

 と、その途端に慎二の後ろに置いてあったヤシの実とワカメに気が付く。慎二が取ってきたものだとすぐに理解した。

「むぅ…腹が減ってきたな」

 そういえば、朝から何も口にしていない。

 俺はバックパックからジャングルで取ってきた果物を取り出した。この光景に慎二は驚きの声を出した。

 俺と慎二はキウイを3つずつ食べ、残りは明日の分に取っておく事にした。

「なあ、悠樹」

「どうした?」

「いくら明日とっておくとはいえ、キウイ三個じゃ物足りないんだが…ヤシの実食っていいか?」

「駄目だ」

 断言すると、慎二もついに諦めたのか、眠りに入ろうとしていた。

 時計の針は、丁度9:00を指していた。

「明日は火の番か…根気がいるな」

 俺は小さく呟いてみたが、慎二はとっくに眠りに落ちたらしく、俺の独り言に返事がくる事は無かった。

 明日も早いから寝てしまおう。と心に決め、俺も寝転がって眠ろうと思った。

 が、なかなか思うように眠れない。体が環境について来れていないのだ。

 しかし、疲労の事もあってか、眠くなれ、眠くなれと念じてる内に俺は夢の世界へと落ちて行った。

 

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