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プロローグ

   1

「突然だが外国に行かないか?」――

 先週、この言葉を承諾してしまった事に激しく後悔していた。

 なぜなら今、俺達は無人島のど真ん中にいるからだ。


 俺、斉藤悠樹は入学したての大学一年生だ。

 入学したてとは言うものの、もう早4ヶ月になるのだが。

 夏のある日、幼馴染――というよりはただの腐れ縁――である小村慎二から連休を活かして旅行に行かないかというメールが届いた。

 始めは金も無いし無理だと断ったのが、飛行機代や宿泊代はおごると言われると、断る道理も無いと二人での旅行プランを決めた。

 行き先はアフリカのケニアという国だった。

 後から聞いた話だが、本当は旅行ではなく、ただボランティアに興味本位で参加してしまい、人手が足りなかったので来てもらったというだけだったらしい。

 しかし、俺達の旅行――もといボランティア―――は予想だにせぬスタートを切った。


    2

――――旅客機の機内にて――――――――――――――


 旅客機に乗る前から、俺は少し不機嫌だった。

「なーんだ、本当は旅行じゃなくてボランティア活動だったのかよ」

「文句言うなよ。お前だって外国に行きたがってただろ?」

「旅行で、な」

 軽く皮肉ってやったら、慎二は黙りこんでしまった。昔からメンタルの弱い奴だ。

 沈黙が気まずさを作り出した刹那、旅客機が大きく揺れた。

「何だ?」

 ただの旅客機にしては動きが激しく、窓から見た景色は海に近づいているように見えた。

 墜落しているのだ。

 「墜ちてる?!」

 慎二もそれに気が付いたのだろう。目には混乱の色がはっきりと出ている。

 その瞬間、さらに大きな揺れが起き、次いで割れた窓から海水が入ってくる音がした。

 慎二と俺は衝撃で吹き飛んだ座席の残骸をとっさに掴んだ。

 俺達は海水に呑まれ、意識を失った。


    3


 潮の匂い、海鳥の鳴き声。

 それらを聞いた俺は目を覚ました。

 どれほどの間意識を失っていたのだろうか。空は暗く、太陽は今にも沈もうとしていた。

 体の節々、特に背中と腹が痛む。墜落した衝撃で軽く打撲したのだろう。立ち上がろうとして、大量に飲み込んだ海水を抑えきれずその場で吐き出した。

 海水を全て出し切ったあと、俺はゆっくりと立ち上がった。

 周りを見渡すが、幼馴染の姿は見当たらない。

 「慎二?どこだ?」

 海岸沿いに探す。しかし姿は無い。

 十分ほど探し回っただろうか。慎二は砂浜に打ち揚げられていた。

 「慎二?!慎二ッ!」

 幼馴染の体を揺さぶりながら名前を叫ぶ。その声に呼応したかのように目蓋が薄く開き、次いで二度ばかり海水を吐き出した。

 吐き気がおさまった後、慎二が口を開いた。

「ここは…?少なくともケニアでは無さそうだけど」

 慎二の質問に、俺もここがどこだか分からない事に気が付いた。さっきまでパニックだったから、そんな事には気づかなかったのだ。

「ずっとココにいても仕方が無い。色々見てまわろう」

 歩いてみて分かったのだが、この島はかなり大きい島の様であり、

 無人島のようだった。

「俺達の他に生存者はいないのかな?」

 勿論、俺はそんな希望は無いと思ってはいたのだが、確認をする為、何より自分に襲いかかる絶望を抑えるのに必要な言葉だった。

 二人の間に沈黙が生まれる。

 20分ほど静かに歩き回っただろうか。ふと慎二が口を開いた。

「腹減ったな…」

 そういえば腹が減ったなと俺も思った。旅客機が墜落する前から、というよりも旅客機に乗ってから一口も食い物を口にしてないのだ。

 しかし墜落した時にバックパック以外全て海に投げ出されてしまったので、食い物など持っているはずなど無いのだ。

 こりゃマズいな、と絶望しかけたとき、海から少し離れた草原のようになっている所に小さなキノコが生えている事に気が付いた。

「これは…タマゴタケかな」

「タマゴタケ?」

「タマゴタケって言うのは、笠が卵のように白くて丸いキノコの事だ」

「…なんで知ってる?」

「これでも山岳部だからな」

 一応タマゴタケを6本ほど採取したものの、やはり生で食うには少し心もとない。

「なぁ悠樹」

「何だ?」

「ウンゼンフゲンダケってどんなキノコなんだ?」

「…それ、山の名前だから」

 どこか落ち着ける場所が無いか、ともうしばらく歩くと、切り立った崖の下に小さな洞穴のような場所を見つけた。

 ここでも山岳部の力が発揮された様だ。

「動物が掘った洞穴か…?それにしては縄張りである証拠の物はないな」

 どうやら自然に作られた洞穴らしい。

 人が二人入ってもまだ余る程のスペースで、少しは落ち着けるが、川が近くにあるという事もあり少し寒い。

 そういえば、と俺は上着のポケットを探る。思った通り、そこにはライターが入っていた。

 もしもの時に暖をとることが出来れば、と2本ほど持ってきていたのだが、まさか本当に使う事になるとは、と溜息をついた。

 外に出て、近くにあった木の幹を思い切り蹴りつけた。案の定よく乾いた木の枝や皮が落ちてきた。

 それらを集めて火をつけようとする。しかし洞穴内は出入り口が一つなので、そこから際限なく風が入ってきて思うように火がつかない。

 と、途端に風が止み、火がついた。

 枝は勢い良く燃え始め、洞穴内は暖かい空気に包まれた。

「そういえば腹が減ったな」

 忘れていた。

 俺は採取したキノコを火の中に放りこみ、二分ほど待って木の枝で焼けたキノコを炎の外にはじき出した。

 俺と慎二は焼いたキノコを三本ずつ食べ、少しは腹が満たされただろうか。多少睡魔が襲ってきた。

 「…眠いな」

 さすがに睡魔には勝てず、慎二は先に眠りに落ちた様だ。

 俺も焚き火の近くに寝転がり、眠る準備をした。

 <…ここは一体何処なんだろうな>

 寝転がりながら色々考えていた。この島はどこなのか、他に生存者はいるのか、俺達はこの島から帰れるのだろうか。

 そんな事を考えていると眠たくなって来た。

 そろそろ眠るとしよう。考えるのは明日からでも遅くないはずだ。

 そんな事を考えながら、俺は眠りに落ちた。

初投稿です。おかしな描写があったと思いますがご了承ください。

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