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プロローグ
「そろそろかな?」
これ以上待てないといった顔で駅の名前を確認。
その頬に残るほんのりとした赤みが幼さを思い出させ、子供らしさを強調している。
「あ、席変わりましょうか?」
電車の中、席に座れずにおろおろしているおばあさんを見かけて声をかける。
「おやおや、お嬢ちゃん。ありがとねえ。そうだ、これをあげましょ」
おばあさんがポケットから取り出したのは、小さい飴玉。
それを私の手に握らせる。
「ありがとうございます」
もらった飴玉を口に含むと、イチゴの香りが広がった。
頬の赤みが少し増している。
リズムのよい歌を口ずさみながら、次の駅を待つ。
またいくつか駅を過ぎると懐かしい風景が目の前に広がった。
「もう手紙届いてるよね……」
心の中で久しぶりの眺めを楽しみ微笑む。
たった一人の兄の姿がその懐かしい風景に一致した。