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ゼルの掌握  ~魔王はまだ死ねない~  作者: Hulanes
第二章:鬼哭・啾々
24/52

24:宿縁……前世からの因縁

 国王の間。一人の男が国王に謁見していた。


「国王様、勇者アヌルア一行の魔王アルフ討伐の件についてです。昨日、魔王城へ状況を確認しにいくと、魔王城は半壊でありアルフやその部下たちも一切いませんでした。残っていたのは、勇者一行の屍とアルフが飛び散った後と思われる肉片。互いに相打ちになったのでしょう」


「何っ! 魔王アルフは……!」


「はい、これでようやく魔王の世は去りました」

男と国王は目に涙を浮かべ、歓喜した。


「となると、今日と明日は宴だ! すぐに準備にかかれ!」

男は返事をし、廊下につながる大きな扉を開けた。去り際に一言。


「勇者たちの……墓も作ってあげましょう。彼らは歴史に名を残すほどの事をしてくれました」

国王は真剣な顔つきで軽く頷いた。あたりまえだと。


王都は光に包まれていた。灯が照らし、酒の匂いと笑い声が混ざり合う。

人々は踊り、歌い、泣き、抱き合った。


大勢が勇者アヌルア一行を褒め称えた。王都からすぐに討伐完了の知らせが世界中に行き届き、世界も宴後人間に平和な世界が来たと泣き叫ぶ。


「勇者一行の勇姿は世界を救った! ありがとう、勇者様」

王都は大盛りあがりだった。酒を飲み、酔っ払ってカードゲームをして。


「魔王は死んだ!」


「平和だ!」


そしてこの言葉が何度も繰り返される。


勇者の母親は墓地の片隅に立っていた。

「アヌルア……アヌルアぁ……」


勇者アヌルアの母は、20歳という若き息子の死に慟哭する。息子の魔王討伐に反対していた母は、吉報に感動するのと同時に尊い死を止められなかった自分の罪悪感、その二つの複雑な感情に苛まれていた。


勇者アヌルアの墓には白い花が無数に供えられている。

「だから言ったじゃない……私はあんたの命のほうが……」

母親は崩れ落ちる。涙で湿った指先で必死に墓石を撫でていた。


そして隣に通りすがりの男・ゼルが母親の隣に立った。ゼルの目の下には隈が出来ている。


 ……同じだ。


 ――生きろ。

ゼルが目を瞑る。王都の歓声が、あの日の人間の咆哮と重なった。


「互いに相打ち」

ゼルは呟いた。


半壊した魔王城。飛び散った肉片。勇者一行の屍。


 それを見て、人間は何を思った?


 “勝利”だ。


 “平和”だ。


 “尊い犠牲”だ。


ゼルの瞳が、ゆっくりと開く。


「彼は死んでいない。永遠の命を持ったのだ」


母親が顔を上げる。


「……死んだんです! もうここいない……会えない!」


ゼルは本当にそうか? と呟く。

「勇者アヌルア。彼は将来も世界にこの歴史を刻み続けるだろう。誰もがわすれない。思ってくれる。それらは生きている価値であり、真理だ。彼は今もなお、人々の心の中で生きている」


「問おう。死とはこの世から去ることか、完全なる忘却か」


ゼルは墓石に触れた。


「もし去ることならば……単純な考えだ。死を拒んでいる恐怖から生まれる思い込み」


「もし、忘却ならば――」

低い声。


「魔王アルフは、まだ生きている」


空気が張り詰める。


「人間が“魔王”という言葉を口にする限り。恐れ、語り、憎む限り。存在は消えない」


「あなた……何を言って……」


ゼルの視線が、人々に向く。笑い声。酒。祝福。光。


「魔王アルフは人々の心の中で生きている。しっかりと生きている。勇者アヌルアも同じだ。彼も人々の心の中で生きている」


そしてゼルは小さく呟いた。「人々が死んで忘れても、俺が永久に覚えている」と、彼は仇として。


「……あなたは……、なんですか。怒っているのですか」


「怒り?」

小さく、笑う


ああ……。


夜風が髪をなびかせる。


「そうだな。俺は怒っている」


宴の音が一瞬だけ無音に感じ、人々の笑顔が歪んで見えた。


俺はあの日の父の死の音を、まだ覚えている。


勇者の母は涙を必死に拭き、震えながら言う。

「あなたは……何者?」


ゼルは背を向けた。

「俺か?」


一瞬だけ、夜の光が瞳に宿る。

「ゼル。ただのFランク冒険者だ」


「……っ!」

母は思い出した。

『俺と同じくらいの年齢の■■って友達がいるからさ。あいつ結構イケメンなんだぜ? それに冷酷で判断ミスもしない! もし会ったら挨拶しといてよね母さん。俺はあいつの親友だからさ。行ってくるよ。いつもありがとう』

それは母と勇者アヌルアの最後の会話だった。友達の名前はうまく思い出せない。だが確かに……その男がアヌルアと関係していることは、なんとなくわかっていた。



***



 宴は終わらない。


酔い潰れた兵。路地裏で眠る市民。王都は油断していた。


中央の大時計台。針は、午前0時を指している。


ゴォン――。鐘の音が響く。大時計台の先端に、一人の影。


猫の仮面。


「……平和」

エタ・リヒトは、王都を見下ろす。


「人間は、本当に単純だ」

仮面の奥で、口元が歪む。


「魔王が死ねば、平和が来る?」

くく、と笑う。


「混沌を単純にしたいだけだろう?」


 魔王と勇者は必要悪だったってわけだ。


「そして勇者は死に、魔王も消えた」


両手を広げる。


「舞台は整ったのだ」


風が強くなる。鐘が揺れる。


「さあ――始めよう。世界の混沌を」

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