表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/51

23:傀儡……他人の言いなりになって動く者

 「はぁはぁ」


森の中を颯爽と駆けていく一人。


「どうして俺がァ!」


怒鳴り声が森に響き渡った。


「追放されなきゃ、ならねえんだよ!」


勇者レイド。自分が大切な坊ちゃま系勇者。くそッと言葉を吐き捨てながら森を駆け抜ける。


「俺は英雄でなきゃいけない」


なのに……。レイドは立ち止まる。そこはもう王都から近くない。東に進んだところ。


 ああ……そうだ。


「あいつだ。あいつが悪い! リナ・フォルトーぜ。それの横の男! あいつも俺の勇姿をすべてかっさらっていきやがった!」


レイドは地面へひれ伏し、怒りの限り腕を地面に叩きつけた。聖剣もない、地位もない。


「俺は……、俺は……」

自分が可哀想で仕方がないから、レイドは涙を浮かべた。ポタポタと雫が垂れる。


どうしようもない。そう諦めた時だった。


「助けて上げましょうか? レイドさん」

紳士的な声。レイドは顔を上げた。


「誰だ? お前」

そこには怪しげな猫の仮面を被った男がいた。男はエタ・イリヒと名乗る。


「話題になってましたね? 元勇者」


「黙れ。これも全部、あいつのせいだ!」


「あいつとは……あの正体不明の御方ですね。少女リナを救い、レイドさんでも敵わなかった燼の魔物を倒してしまう」

目元は仮面で見えないものの、口元は不気味な表情を浮かべていた。


「……それで、なんの用だ? 見ての通り、俺は一文無し。地位も何もすべてなくなった」


「先走りしないでください。私はあなたを狙っているわけではございません。ただ助け舟を出そうと思った者です」


「助け舟? そんなものいらない」


イリヒはふと笑い、「あなたには何もありませんでしょう。今後の希望も生き方も」と言い出した。レイドの怒りは爆発した。


レイドの怒声が森に響く。

「お前は何様だ! なんなんださっきから、人の不幸の上にノコノコと!」


猫の仮面の男は、怒りを受けても一切動じない。


ただ、ゆっくりと拍手をした。

「素晴らしいです」


「……は?」


「その激情。その自己肯定。その被害者意識。実に勇者らしいですね」


レイドの額に青筋が浮く。

「殺すぞ」


「今のあなたに出来ますか?」


静かな一言。レイドは言葉を詰まらせた。


聖剣はない。魔力も底を尽きかけている。魔道具すらない。王都からの支援も。


 丸腰だ。


男は一歩近づく。

「あなたは奪われた。称号も、民衆の歓声も、未来も、取り返したくはありませんか?」


レイドの瞳が揺れる。

「……できるのか」


「ええ。"(ことわり)"によって」


「理、だと?」


「魔法とは何か。レイドさんは理解しているでしょう?」

リヒトは首を傾げた。そして続ける。「魔法とは“契約”です。術者は代償を払う。負荷を受ける。だから長時間の発動は不可能。永続は不可能。……それが理」


「当たり前だ。肩代わりのことだろう?」


「では」

リヒトは微笑む。


「もし、その負荷を肩代わりする存在がいたら?」

レイドは目を細めた。


「誰だ?」


「それは」

男は静かに、手を差し出し「あなたです」と言い放つ。


「は?」


「私の詠唱。その代償を引き受ける。私は永続的に魔法を使い続けられる」


「なにを!」

レイドは叫ぶ。

「肩代わりの場合、本当の術者のデバフは指図した術者に返る! 命の保証はない。危険だ!」


「命の保証?」

リヒトはくすりと笑った。

「保証なんていちいち考えてられませんよ」


一歩、さらに距離を詰める。


「レイドさん。あなたが失ったものを取り戻すには、“常識”の外に出るしかない」


森が静まり返る。


「私の魔法は少し反動が大きい……ですが代わりに威力と使い道は最強クラスです……私の魔法なら彼らを一度で殺せる……」


「……どうすればいい」

レイドの声は、低かった。


リヒトは満足そうに頷いた。

「簡単です。私に向かって、こう言ってください」

風が木々を揺らす。


「――“魔法を永続的に使い続けろ”」


レイドの背筋に悪寒が走る。

「永続的……それは本当に大丈夫か? 肩代わりの時間の考慮はされているのだな?」


「ええ大丈夫です。ほんの一瞬。彼らを暗殺しようとした時にだけ……効能があります」


レイドが、だがと言いかけたところでリヒトは遮る。


「本当に……大丈夫です。あなたは勇者。世界が選んだ器。一瞬の効能のうちだけ、私のデバフの肩代わりなんて容易いはずです」


レイドは歯を食いしばる。

「俺を利用する気だろ」


「互いに、です」

リヒトは肩をすくめた。


レイドは葛藤していた。そして、思い出す。あの時の映像を。


リナの横に立つ、あの男。


自分の居場所を奪った存在。


笑う群衆。


追放の宣告。


屈辱。


「……あいつらを」

拳を握る。


「叩き潰せるんなら」

リヒトの口元が、ゆっくりと吊り上がる。


「……リヒト」


喉が乾いていてカラカラしていた。だが、レイドは言った。


「魔法を、永続的に使い続けろ」


その瞬間、レイドの脳内に入る膨大な負荷。


「ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あッ!」


「成功ですよ、レイドさん」

リヒトの声は静かだった。


「契約成立」


「ぁ゙ぁ゙ぁ゙!」レイドの頭に、破裂しそうなほどの痛みが襲う。


「言いましたよね?」

仮面の奥から、くぐもった笑いが漏れる。


「代償は、あなたが払うと」


レイドは息を荒げながら立ち上がり、リヒトに殴りかかろうとした。


「おっと、危ない……」


「どうぞたくさん、踊ってくださいレイドさん」


「あなたは、とても良い駒だ」

森の奥で、何かが目を開く。歯車が、静かに噛み合い始めた。

下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします! 面白いと感じたなら5つ、つまらなかったな〜と思ったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です! ブックマークもしていただけると、めっちゃうれしいです!


よろしくおねがいします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ