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22:絢爛……きらびやかで美しい様

 王都シンフォニア、王城『白亜の間』。

深夜、静まり返った広間に怒号が響いていた。


「な、納得がいきません国王陛下! あれは燼の魔物! 最強クラスの魔物だったのです。あんな強さはギルドの事前情報になかった!」

勇者レイドは、泥と脂汗にまみれた顔で叫んでいた。隣には、ボロボロになったガンツ。


彼らはあの洞窟から、一瞬にして王城の中庭へと転移させられていた。レイドはそれをガンツの魔道具の転移だと思っていたが――事実は違った。


「……黙れ」

玉座に座る国王、アルム・シンフォニア三世が、氷のような低い声を放った。視線は、もはや勇者を見るものではない。冷徹な眼差しだった。


「言い訳は聞き飽きた。レイド。……余は、失望したぞ」


「し、失望……? 俺は生きて戻ったんですよ!? 俺が生き残ることこそが国益でしょう!」


「ほう、生き残った、か。……貴様はまだ気づいておらぬのか」

国王が重々しく指を鳴らす。すると、広間の空中に浮かんでいた巨大な魔法映像が輝きを増した。


「見よ。これが、今の貴様の姿だ」

そこには、王都の中央広場が映し出されていた。夜にもかかわらず、広場には数えきれないほどの群衆が押し寄せ、設置された巨大スクリーンの前で騒然としている映像。


「な……なんだこれは……?」

レイドが呆然とする。


「ギルドの要請による勇者討伐・生中継だ。本来なら、貴様の栄光を世界に知らしめるためのものだったのだがな」

国王が冷たく告げる。そう、この配信はレイド自身が許可したものだった。俺の華麗な戦いを世界に見せつけてやると。

 だが、そこに映っていたのは――。


『リナ! あいつを止めろ! 魔法で目くらましをしろ!』

『悪いな。俺たちだけで逃げさせてもらう』

仲間を捨て駒にし、無様に逃げ惑う勇者の姿。

そして。


『――はぁ、ったく』

颯爽と現れ、勇者レイドが捨てた聖剣で魔物の拳を受け止める、紫の髪の男。


「こ、これは……合成だ!」

レイドが喚く。だが、その声を遮ったのは魔術師マイトだった。


「……合成じゃありませんよ、レイドさん」

「あ?」


背後からマイトがゆっくりと近づく。いつも怯えていた少年の顔は、どこか晴れ晴れとしていた。彼は懐から、配信用の魔道具を取り出した。


「僕はあなたに勇者パーティーから追い出されました。だけど……、ついていきました戦場へ。そしてこれをそこで展開しました……」


魔道具:万象の映し。効果、送信側(撮影機)が捉えた視覚と聴覚を、魔力の波動に乗せて瞬時に受信機へと転送する。この時代でのカメラのようなもの。遅延はほぼゼロであり、戦場や遠方の出来事を今、この瞬間の出来事として共有できる。また映像を記録したい場合は、流れた魔力を魔石に記録し、後からでも見返すことが可能。


「て、テメェッ……!?」

レイドがマイトに掴みかかろうとするが、護衛の剣がその喉元に突きつけられた。


「あそこで戦っていた女の子……リナさんでしたっけ。僕の代わりの。彼女を見捨てる貴方を見て、僕は改めて決意しました。もう、貴方の言いなりにはならないって」

マイトはカメラに向かって、全世界に告発した。普段からの暴言、暴力、そして手柄の横取り。勇者パーティの醜悪な実態が、リアルタイムで暴露されていく。


広場の群衆からは、「勇者失格だ!」「最低のクズ野郎!」「あの女の子がかわいそうだ!」という罵声が、波のように王城まで響いていたそう。


「そ、それに……見ろよ! あの紫の髪の男!」

誰かが叫んだ。映像の中で、ゼルが『門』を展開し、ガーディアンとの高速戦闘を繰り広げている。


『すげぇ……なんだあの動き!?』

『魔法? いや、あんな魔法見たことねぇぞ!』

『あの勇者が逃げ出した化物を、あんなに……』

『誰なんだあいつは!? 名前は!?』

 

『正体不明の英雄』『真の勇者』。誰も彼が魔王だとは気づいていない。ただ、その圧倒的な強さと、少女を救った背中だけが、人々の心を鷲掴みにしていたのだ。


「しかも、我々の調査によると……」

国王がさらに追い打ちをかける。


「貴様らがここへ戻れたのは、貴様の水晶ではない。あの男が展開した『紫色の門』……あれによって、貴様らはゴミのように吐き出されただけだそうだ」


「なっ……!?」

レイドの顔が真っ赤に染まる。助けられたのではない。邪魔だから、戦場から排除されただけ。その屈辱的な事実は、勇者のプライドを粉々に粉砕した。


「レイド・ヴァン・アストリア。貴様の勇者の称号剥奪も視野に入れた審議を行う」

「そ、そんな……俺は、俺は選ばれた勇者だぞオオオオッ!!」


無様な絶叫を残し、レイドは騎士たちによって引きずり出されていった。静寂が戻った広間で、国王はふと、映像の最後に映った少女――リナに目を向けた。最後まで戦おうとし、生還した少女。


「……ギルド長よ。この少女の扱いはどうする」

影に控えていたギルドマスターが進み出る。


「はッ。彼女の勇気、そしてあの『燼』クラスの魔物の攻撃を一度でも耐え凌いだ魔法の技術。これらは特筆に値します」

ギルドマスターは高らかに宣言した。


「魔法使いリナ・フォルトーゼ。彼女のランクを、Bから『A』へ無条件昇格とします。……彼女こそが、この国の次代の希望となるでしょう」



 ***



 翌日。

世界は一夜にして変わっていた。勇者レイドの名声は地に落ち、代わりに二つの名前が轟いた。


一つは、絶望の戦場から生還し、若くしてAランク入りを果たした悲劇のヒロイン、リナ・フォルトーゼ。そしてもう一つ、名を名乗らず去っていった、最強の男。


世界中が彼を探し始めたことなど露知らず。最強の男は、安宿の硬いベッドで深い眠りについていた。

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