サンとの再会(1)
『大儀だったな。』
「ええ、疲れました。さて、サンの所へ行かないと…。」
『もう私のことは忘れてよ。』
俺は思わず辺りを見渡した。サンの声だ。
「サン?」
『え、聞こえるの?お兄様。』
「聞こえる。どこにいるんだ?」
『人形の中よ。』
俺は持っていたサンの人形を眺めた。泥に塗れたままだが、優しい笑みを浮かべている。
「どういうことなんだ?」
『儂が説明しよう。』
玄武の言葉が脳内に響く。
『サンは土師としての力を秘めていた。それに加えて麒麟が作った堤防で生き埋めになったことで、土の気が高まっていた。そこに自身を模した人形があった。そなたも知っての通り、土の気と人形は相性が良い。偶然サンの魂が吸い寄せられたのじゃろう。』
何かよく分からなかったが、どうでもいい。重要なのは、サンが今ここにいるということだ。
「これ、もしかして…サンを生き返らせることも可能になりませんか?」
『ほう。面白い。』
『待って、お兄様。』
俺は考え込んだ。
「サンの身体に魂を入れたら生き返りませんか?」
『もう身体が朽ち始めているだろう。手遅れじゃ。しかし、別の身体に魂を入れれば生き返る可能性はあるな。』
「では俺の身体に…。」
『お兄様!』
サンの声は怒気を帯びている。
『ここまで土の気が強いと、もう土師の身体にしか適応すまい。死後時間が経ちすぎじゃ。何なら、麒麟の加護を受けた人間でないと無理だろうな。』
『やめましょう、お兄様。仮に麒麟様のご加護を受けた方に私の魂を入れたとして、その方の魂はどうなるの?私は見ず知らずの他人として一生を送るわけ?』
『一つの身体に二つの魂は入れない。元の魂は排除する必要がある。しかし、見ず知らずの他人として生きる心配はないぞ。肉体の形は魂の形によって決まる。サンの魂が入れば、外見もサンに合わせて変貌する。そなたはサンとして蘇ることができよう。』
俺は鳥肌が立つのを感じた。あまりに恐ろしい話だ。
『嫌です!何の罪もない人物を殺して成り代わるだなんて…。』
俺は閃いた。
「死後時間が経ちすぎたから土師の身体にしか適応しないと仰せでしたね?」
『如何にも。』
「それならば、麒麟様の加護を受けた方の身体にサンの魂を入れた後、すぐであればその方の魂を別の人物の身体に移せますか?」
『可能じゃろう。』
俺はどうにか声を絞り出した。
「では、コンナムにその方の魂を移しましょう。あいつは死んで当然の外道です。」
『でも、お兄様…。』
「これが最善策だ。サンも見ていただろう?あいつはその後、母上のことも手に掛けた。その後は母上を人質として利用している。玄武様のご加護のおかげで生かされているが、いずれ俺のことも殺すつもりだ。これは自衛のためでもある。」
サンは何も言わなかった。
「お前は人前で歌うのが夢だっただろう?あんな奴に殺されて悔しくはないのか?あいつを殺して、二人で生きよう。それくらい許されていいはずだ。」
『…分かったわ。お兄様。でも、お願いだから無茶だけはしないでね。』
「ああ。」
俺は何があってもサンを生き返らせてみせると心の中で誓った。




