サンの決断(1)
目を覚ますと、そこは自室だった。辺りを見渡すと、カリがいた。
「お目覚めですか。」
「堤防はどうなった?」
「ひとまずは安定しました。陛下の御子のおかげです。」
俺は安堵して息を吐いた。
「あのお方が何者なのか、皆は知っているのか?」
「はい。麒麟様のご加護を受けたお方だとか。」
「そうだ。あのお方がいないと、今度こそこの国は亡ぶだろう。」
カリは徐に俺の手を握った。頬には涙の跡が見える。
「こんなになるまで戦ってくださって、ありがとうございました。どうかご養生ください。」
「ありがとう。お前もよくコンナムを連れてこられたな。国王とその嫡男が王宮を離れて崩れかけの堤防に赴くなど、考えただけで震えが止まらん。」
「陛下の御前で事情を説明したら、唐突に土でできた獣が現れ、陛下御自ら御子様を抱えて飛び乗ったのです。オレも驚きましたよ。」
コンナムが来てくれなければ、俺は手当てが間に合わずに死んでいただろう。俺を殺そうとしたのもコンナムだが、救ったのもコンナムだ。一応、命の恩人ではある。
「今、陛下は力尽きて眠っておいでです。殿下の傷を癒すためにお力を使い果たしてその場でお倒れになったそうです。あれから三日も経つのにお目覚めになりません。」
「俺のためにそこまでしたのか?」
「以前の陛下であれば、ここまでなさることはなかったはずです。殿下が命懸けで国をお守りになったので、陛下の御心が動いたのでしょう。」
俺は俯いた。一応どころか、間違いなく命の恩人だ。いっそ見殺しにしてくれれば、心置きなくコンナムを憎めたのに。
「少し休ませてくれ。」
「承知しました。何か必要な物などございましたらお呼びください。」
カリがいなくなるのを確認して、俺は囁いた。
「ありがとうございました、玄武様。」
『そなたこそ、よくぞこの国を救ってくれた。儂は多少の犠牲をよしとしてしまったが、そなたは全員を守り切ったな。誇りに思うぞ。』
「光栄です、玄武様。」
『しかし、自分を犠牲にするのはやめるのじゃ。見ていて痛々しい。』
俺は作り笑顔を浮かべた。
「善処します。」
『次は途中で力を取り上げるぞ。とはいえ、本当に助かった。ありがとうな。』
「畏れ多いです。こちらこそありがとうございます。」




