隣国への旅(6)
俺たちは縛られたまま牢に入れられた。見張りは二人しかいない。
「頼んだぞ、カリ。」
カリは溜息を吐いた。
「殿下にもご協力願いますよ。」
「分かった。何をすればいい?」
それから数分後、俺は牢の床をのたうち回りながら呻いていた。カリが牢番に呼び掛けている。
「助けてください!殿下が急に苦しみ出して…。」
牢が開く音がしたかと思うと、ドスッという鈍い音がした。続けてもう一度音が響き、目の前に牢番が倒れてきた。剣を抜く音に慌てて起き上がると、カリが門番の持っていた剣を抜いていた。
「手を出してください。」
言われるがままに俺が手を出すと、腕輪が壊された。首に剣を向けられる前に、水を出して自力で首輪を破壊した。
「手間を掛けたな。」
「いいえ。すぐここを出ましょう。」
俺はカリと共に王宮の外に向かって駆け出した。道中にいる兵士は水流で押し流して進む。奥の方から怒声が聞こえてきた。
「二人とも術封じをしたはずなのに!どうやって牢を出た!?」
「え、オレ、五行師でも何でもありませんけど。」
カリは律儀に返答する。多分お前に言ってはいない。
「じゃあ、その白い髪と目は?」
「生まれつきです。」
カリは遥か西の方の民族の出だ。銀色の髪と目が強い気を持った金師の特徴と合致するため、勘違いされたようだ。そもそも、王族の護衛が五行師ではないということも珍しいのだろう。カリは人間離れした武術の達人で、その辺の五行師が相手なら勝てる。
「捕縛する際に数人の金師と互角に切り結んだのは…?」
「単なる剣術ですよ。」
「おい、一般人を取り押さえるのに金師が数人がかりだったのか!?何をしていたんだ?」
それは同感だ。金師の強みは剣などの武器を使った近接戦闘だ。その得意分野で後れを取るなよ。
もう少しで城門を抜けるという時に、地位が高そうな人物が丸腰で両手を上げた状態で呼び止めてきた。
「ヒョンヘにお戻りになるのはおやめください。」
「どけ。この国の者に指図されるいわれはない。」
「今お戻りになると、殿下も巻き込まれるかもしれません!」
俺はその兵士を押し流そうとしていた水流を左右に割った。
「巻き込まれるとは、何に?」
「堤防の決壊による鉄砲水に。」
俺は兵士の目の前に水で作った剣を突き付けた。
「どういうことか手短に話せ。」
「殿下がヒョンヘにいらっしゃらないうちに、忍び込ませておいた間諜が堤防を破壊する計画です。もう合図は出しました。彼らが狼煙に気付く前に堤防に辿り着くことは不可能です。ですから…。」
俺は兵士に突き付けていた水の剣を振り下ろした。別に剣のような強度はないため、相手は水を被っただけだ。
「玄武様!」
『できるだけ早く向かうしかあるまい。』




