麒麟との対話(3)
俺はコンナムの所へ出かけ、しばらく他国を転々とさせてほしいと申し出た。コンナムは人払いをしてから返答した。
「何のために?」
「俺が死んでも、どの道この国は長く持たないとか。それならば他国に逃れる方法はないかと思いましてね。」
「知ってしまったか。要するに死にたくないから民など見捨てて逃げ出したい。それを許可しろというわけだな?」
俺はコンナムを睨みつけた。コンナムは薄ら笑いを浮かべている。
「逃げはしない。必ず戻りますよ。逃れるのは民です。」
「死ぬためにわざわざ戻ってくると?」
「俺が逃げたら何万人死ぬと思っているんですか。そんな非道な真似はしません。どうしても信じられないと言うなら、無念ですが、このまま殺しても構いませんよ。」
コンナムは俺が生きた幼虫を踊り食いする様子でも見たのかと思うほど、激しく顔をしかめた。
「もはや人間とは思えないな。大神官も貴様も。理解に苦しむ。」
「陛下だったら逃げますか?」
「当然だろうが。追っ手が掛からないように王宮を壊滅させ、ナビを連れて逃げる。そうしない理由がない。」
コンナムは平然と言った。これ以上議論しても無意味だ。
「まあ、陛下がそう判断なさるなら諦めますよ。」
「いや、私ならいざ知らず、イスルは本当に戻るだろう。母親も私の手元にいるからな。好きにするがいい。」
「ありがとうございます。」
俺が頭を下げると、コンナムはまたしても汚いものを見るような目で俺を見た。
「貴様のような人物しか五神の加護を得られないと言うなら、私は加護を得られなくてよかった。」
「そうは仰いますが陛下、俺を生かしておくと復讐される可能性もあるのに、この国のために俺を生かしているではありませんか。そうご自分を卑下せずともよいのでは?」
コンナムは自嘲めいた笑みを浮かべた。
「私は貴様を侮っていただけだ。こんな脅威になると知っていたら、生き埋めになどさせなかった。止めを刺させただろう。」
「いつまでも叔父上の木術を見たいと無邪気にせがむ子どもではないのです、陛下。今後は俺に隠れて俺の大切な人々の命を狙おうなどと思わないでくださいね。今の俺には陛下を害さない理由も薄くなってきておりますから。」
コンナムは俺の腕の中に植物をたくさん押し付けてきた。どうやら全て薬草のようだ。
「くれぐれも身体に気を付けてくれよ、玄武の寵児。」
「お気遣い感謝します、陛下。」




