麒麟との対話(2)
俺は固まった。今まで俺の意見を求める者はいなかった。いつも俺の知らない所で勝手に殺されそうになり、勝手に利用されてきた。その俺が、神に助力を求められている?まるで対等であるかのように、意見を求められるなんて。
とは言え、名案も浮かばない。ナビの前で神々との会話に混ざるわけにもいかない。
「さっきからぼーっとしてばかりね、イスル殿下。」
「失礼しました。少し考え事をしていまして…。」
「あら、何を考えていたの?」
そうだ。ナビはこういう人だった。頼むから深掘りしないでくれ。
「もしもの話ですよ。あの大堤防が決壊するとして、それが分かっていたら、王妃様ならどうしますか?」
「あら、物騒な喩えね。もうそうなったら他国に逃れるしかないわよね?」
「流浪の民となるしかありませんかね?」
ナビは上品に笑った。
「そう悲観することなの?私はあまり他の国のことを知らないから、的外れなことを言っているのかしら。別の国で暮らせばいいだけじゃないの?」
俺は毒気を抜かれた。ナビは不思議そうな顔をしている。俺は大声で笑いだした。久々にこんなに笑ったな。
「笑うことないじゃないの。」
「いえ、俺の見識が狭すぎたと思いまして。その発想はございませんでした。」
「ふーん。褒められていると思っていいの?」
「ええ。純粋に感心しているのですよ。」
『玄武の加護を受けた人間、この子が産まれた頃にまた会おう。それまでにどうしたらよいか考えてよ。』
麒麟が話し掛けてきた。俺は黙って頷く。
「王妃様、俺は諸外国へ遊学に行こうと思います。次に会う時には御子に会えることを楽しみにしております。」
「随分と急な話ね。気を付けて。玄武様の加護を受けた方に言うことではないかもしれないけど。」
「ありがたきお言葉です。それでは。」




