神官の思惑(5)
神殿の中が何やら騒がしかった。
「殿下をどこに隠した!」
「大神官とお話し中なのです。もうしばらくお待ちください。」
「通せ!オレが直接確かめる!」
俺は神官をかき分け、声のする方に向かった。カリが何人もの神官を振り切って押し入ろうとしている。
「何の真似だ、カリ。」
「イスル殿下!」
「神殿にて乱暴狼藉、無礼であろう。俺が大神官に用があって参ったのだ。非礼を詫びろ。」
カリは神官たちに丁重に謝った。俺とカリは俺の部屋に戻った。
「座れ、カリ。」
カリは俺の正面に腰掛けた。
「大神官から話は聞いた。お前、俺たちを殺そうとしたとき、コンナムから何と命じられた?」
カリは目を伏せた。
「イスル殿下とサン殿下を堤防近くの村に向かわせるから、帰り道に事故に見せかけてお二方を堤防で生き埋めにせよと。オレが断ると、これは大神官の命であり、堤防の決壊を防ぐための人柱として、どうしても犠牲になってもらわなければ近い将来国が滅ぶと。」
やはりそうか。カリの性格上、自分の命が懸かっていても、俺やサンを生き埋めにしようとはしないはずだ。信心深いから、大神官の命令だと聞いて断れなかったのか。
「そうか…。カリ、お前も辛い立場だったな。」
「でも、イスル殿下は玄武様の加護を受けました。堤防を直せるのですよね?そうでしょう?」
カリは必死に訴えてくる。俺は力なく微笑んだ。
「そうだな、カリ。お前はもう何も心配しなくてよい。ご苦労だった。」
「殿下、まさか、堤防を直せないのですか?」
「いや、方法はある。案ずるな。」
「それならばなぜ、そんな浮かない表情を…。」
「下がれ。俺はもう疲れた。」
カリがいなくなった部屋で、俺は虚空に向かって話し掛けた。
「玄武様、俺はどうすべきでしょうか?」
『まずは麒麟と話しがしたい。結論を出すのはそれからじゃ。ナビに会いに行け。』
「承知しました。」
『今すぐではないぞ。少しでも水の気が強まる時を待つのじゃ。土は水に克つからのう。』




