神官の思惑(2)
「大神官よ、俺はこの国の現状やご加護のことについて、何も知らないということがよく分かった。しかし、俺は知るべきではないか?厚かましい願いではあるが、貴殿が知る限りの情報を教えてはいただけないだろうか?」
「素晴らしい心掛けです。歴代の五色の方の中で記録が残っている方のことをお伝えしましょう。」
大神官は何人かの情報を述べた。
青龍の加護を受けた青の方は、二十代未満の男子が多かった。朱雀の加護を受けた朱の方は、二十歳から四十歳の男性が多かった。麒麟の加護を受けた黄の方は、年齢もバラバラで性別も偏りがなかった。白虎の加護を受けた白の方は、四十歳から六十歳の女性が多かった。玄武の加護を受けた玄の方は、六十歳より上の女性が多かった。
それ以外に特に気になる点はない。多分、聞いたことがある情報ではあった。
「五色の方がいる時には堤防が安定したと言っていたな。彼らが何をしたのか分からないのか?」
「残念ながら、その記録はございません。」
『きっと本当じゃろう。加護を授けた者には、堤防を守る方法について、記録に残さないように言っておいた。』
俺は玄武に向かって話し掛けた。
「どうしてです?」
『後世に残してよいものではないと思ったからじゃ。加護を受けた者がいない状態で真似してほしくはなかった。』
「あまりよい方法ではなさそうですね。」
俺は眉をひそめた。
「どなたと話しておいでなのですか?」
「玄武様だ。大神官でもそのお声は聞こえないのか。」
「玄の方だけが聞こえるのではありませんか?」
それはよかった。大神官に知られることなく話せる。
「玄武様は何と仰せで?」
「貴殿が俺に何か重大なことを隠していると。」
「はて、何のことでしょう?」
大神官は首を傾げた。とぼけやがって。俺を狙ったのは神官で間違いないのに。
「神に誓って知らないと言えるのか?」
「…。」
大神官は黙り込んだ。
「少なくとも、この国と神様を裏切るようなことをした覚えはございませんよ。」
俺は鼻で笑った。ここまで来たら、駆け引きなど無意味だ。脅して情報を聞き出してやる。俺は大神官の周りを水で囲んだ。
「隠し事をしていることは否定しないのか。舐められたものだな。」
「言い訳をしても無意味なようですから。私に神罰を下す前に確認しておきたいことがございます。堤防は今この時に決壊しても不自然ではございません。この国を守るために何をすることが最善なのか、玄武様はご教示くださいましたか?」
『痛い所を突くのう。薄々感づいておるやもしれぬが、儂ではもう堤防の崩壊を止められぬ。遅らせることさえ難しいじゃろう。儂が強引な手を使ってでも麒麟が誰かに加護を授けるよう仕向けたいのは、この国の民を救うためじゃ。そなたの妹は二の次よ。』
早く言ってほしかった。いや、俺がサンに執着していたのが悪いのか?
「俺にはもうどうしようもないそうだ。黄の方が必要だと…。まあ、多少は崩壊を遅らせることができるらしい。邪魔をするようなら消えてもらおうか。」
俺は大神官の周りに出現させた水を狭めた。
「ああ、玄武様は御存知ないのです。我ら人間が必死の努力の末に編み出した術を!」
大神官は初めて焦る様子を見せた。俺は水を消した。
「どういうことだ?」
「玄の方のお力があれば、崩壊を大幅に遅らせることができるのです。」
「それは喜ばしいことだが、すぐに言えない所を見ると、碌な方法ではないな?」
「貴方様にとってはそうです。玄の方、どうかこの国のために人柱となってはいただけませんか?」




