堤防にて(4)
目を覚ますと、そこは薄い布団の上だった。頭痛はしているが、視界は良好で、吐き気もない。ここはどこだろう。
「…そうです。突然具合が悪くなって…。本当に助かりました。」
カリの声だ。どうやら別の部屋で話しているようだ。俺は声を掛けようとして咳き込んだ。
「具合はどうだい?」
カリは気さくに声を掛けてきた。俺は事情を察して合わせることにした。
「うん。だいぶ良くなったよ。」
「そうか。それは良かった。動けそうかな?」
俺はゆっくりと上体を起こした。カリの肩を借りれば歩けそうだ。
「…大丈夫。行こう。」
「そうだね。どうもありがとうございました。少ないですが、お納めください。」
カリは巾着袋を渡している。老夫婦の驚きようからして、口止め料も込みだろう。俺はカリの肩を借りて民家を後にした。
「お前は大丈夫なのか、カリ?」
「多少の火傷で済みました。殿下を一刻も早く木師に診せたかったのですが、再び襲われる可能性があるので、目立たないことを優先しました。ご理解ください。」
「賢明な判断だ。」
俺は重い身体を引きずるように歩き続けた。
『大丈夫、お兄様?さっきの人たちは何だったの?』
俺は答えなかった。毒を盛られたことから考えても、堤防にいた連中が関わっていることは間違いない。堤防での飲食以外に毒を盛る機会はなかった。しかし、それをカリに伝えると、どうして俺が神官に狙われるのかという疑問を投げ掛けられるだろう。きっと神官は俺が堤防を壊そうとしていることに気付いていたのだ。そして俺は、そのことをカリに悟られたくない。
「殿下を襲った人々の正体ですが、殿下はどう思われますか?」
「コンナムの手先ではないか?」
カリは歩くのもやっとの俺を見兼ねてか、俺を背負って歩いていく。
「玄武様の加護を受けた殿下を、こんな少人数で襲いますか?」
「俺の不調もあいつの仕業なら、あり得ない話ではない。俺のことは毒殺して、お前を仕留めるつもりだったのかもしれない。」
「…現時点では何とも言えませんね。」
カリの言う通りだ。コンナムが俺を殺そうとするなら、あんなに雑な襲い方はしない。毒だって致命的ではなかった。俺がカリの身を案じなければ、あんな連中など皆殺しにすることも容易だった。俺がカリごと殲滅する可能性は大いにあった。コンナムの仕業である可能性は低い。
王宮に戻ることもそれはそれで不安だったが、宮外の方が今の俺にとっては危険そうだ。俺は王宮に戻ると、自室に横になって医者を呼んだ。どうやら毒はほとんど体外に排出できていたようで、俺は薬湯を飲んで眠りについた。




