表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
麒麟の国  作者: 馬之群
15/42

堤防にて(2)

我らは大陸より新天地を求めて北の海に至る。されど、玄海が広がるばかりで、安住の地はなし。我らの嘆きは天に届き、麒麟様の加護を得たり。


麒麟様は地を震わせ、玄海に雄大な山を築く。そして、山に囲まれた地から水を退かせたまいて、広大な地を得たり。大地に恵みを与えたまいて、作物を実らせたり。我ら飢えることなく、豊かに満ち足りぬ。


我ら麒麟様に悠久の感謝を捧げるべく、その慈悲を語り継いで称えん。麒麟様の慈愛は山より大きく、その御心は大地のように不変である。我ら玄海の民は麒麟様を称え、常に感謝を捧げよう。麒麟様の栄光よ天高くあれ。その御業よ永久に。


「なるほど。」


俺は呟いた。俺の知っている建国神話と変わらない。


『土師の術も見てみよ。』

「土師の術を見せてくれ。」


神官は別の場所に移動した。黄衣の人々が何やら人形を作っている。黄色い陶器のようだ。遠目でも複雑な細工が見て取れる。作業している者の周りを神官が囲んで祈っている。


「何をしているのだ?」

「麒麟様に捧げる像を作っています。土師が土の気を高めつつ人の形を作り、神官が祈りをこめて焼き上げます。完成した像は大堤防の聖地に埋めて、麒麟様に捧げます。これにより、麒麟様の土の気が高まって、大堤防が安定するように願うのです。これを毎日朝晩に行っております。」


大変な作業だ。本当に効果はあるのだろうか。


『紋様は刻まれていないか?』


俺は許可を得て、土神の像を手に取った。服に施されている細工が紋様だろうか。伝統工芸の衣装の刺繍に似ている。


「この模様に意味はあるのか?」

「麒麟様を称えるための意匠だと伝えられております。」

『意味までは正しく伝わっておらぬようじゃな。それは土を堅固にするための術式である。堤防が崩れぬようにそれを堤防に埋めさせたのじゃ。』


この作業にも意味はあったのかと、俺は不信したことを心の中で詫びた。そして、術の意味が正しく伝わっていないということは、玄武の紋様を彼らが解読できる可能性は限りなく低いことも分かった。


「では、玄武様の術を刻みましょうか。」

『そうじゃな。儂の指示に従うがよい。』

「お願い致します。」


俺は玄武に言われるがままに移動し、言われた通りの紋様を地面に掘った。波のような紋様だ。紋様を刻んでも、特に何か変わった様子はない。


『この場所にいると調子が良かったけど、その術が描かれてからは何か居心地がよくないな。』


不意にサンが言った。


『土の気で満ちた場所じゃから、今のそなたにとっては望ましい場所じゃな。この水術は堤防を決壊させるためのものじゃから、それを感じ取っておるだけじゃ。案ずる必要はない。』


後は、麒麟が危機感を覚えて加護を授けるのを待つのみだ。俺はカリと共に堤防を後にした。カリは呼吸一つ乱れていない。しかし、王宮で悠々自適な生活を送ってきた俺にとって、久々の登山はかなり堪えた。輿を用意させればよかった。俺は神殿で飲み物や食べ物をもらい、暫く休憩してから王宮への帰路に就いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ