サンとの再会(2)
『しかし、麒麟の加護を受けた人間がいなければ話にならぬ。』
「もしや、玄武様の加護を受けし者がいる限り、麒麟様は加護をお授けにならないのでは?」
五神の加護は国に危機が迫っている時に与えられる。少なくとも俺はそう認識している。玄武の加護がある以上、他の五神が加護を与えることはないように思われる。
『詳しいな。まあ、いくつか策はある。』
俺は全く思い付かない。
『大堤防を決壊させよう。』
俺は息を呑んだ。乾いた喉から声を絞り出す。
「…できません。」
『本当に決壊させるわけではない。そう思わせて、麒麟に止めさせるのじゃ。この大堤防は彼の者が作ったもの。壊されそうになれば止めに来るじゃろう。彼の者は儂の天敵じゃ。儂が暴走すれば、他の五神ではなく、麒麟が加護を授けるじゃろうな。』
俺は安堵した。
「どうすれば決壊させると思わせることができるのですか?」
『堤防に水術を刻んでいこうぞ。大掛かりな術を装って、発動したら全てが壊れると思わせるのじゃ。これなら、実際には何も被害を出さずとも麒麟を呼べる。どうじゃ?』
俺は言い知れぬ不安を覚えた。玄武の話はどうもうますぎる気がする。この話に何か問題がないかと頭をひねる。
「策とは言え、麒麟様と明確に敵対するような行動を取っても大丈夫なのでしょうか。麒麟様がお怒りになるでしょう。玄武様と麒麟様の全面戦争になりはしませんか。」
『それは麒麟も避けたかろう。それに、そんな余力はないと見た。』
俺は眉をひそめた。
「それはどうしてですか?」
『この国の信心から見て、麒麟は堤防を維持できるだけの影響力を失っておるはずじゃ。儂との争いは避け、対話を試みてくるであろう。』
確かに、堤防は既に不安定な状態だと聞いている。
『それでも、麒麟様の加護を賜った方に私の魂を入れればお怒りになるでしょう。大丈夫なのですか?』
サンが言った。
『利用されたのだと知れば気分はよくないだろうが、麒麟は無類の人間好きじゃ。そなたの境遇を知った上で過ぎたことを責めはすまい。麒麟に阻まれる前に魂を移してさえしまえばこちらのものよ。』
『途中で知られてしまったら?』
『その時は説得しよう。麒麟は話が通じるからのう。』
俺の不安は拭えなかったが、結局玄武の策を呑むことにした。
「では、堤防を決壊させる真似事を致しましょう。麒麟様が誰かに加護を授けるように。」
『上手くいくことを願っておるぞ。』




