第一話 [E]敗戦国と大富豪のダンジョン - アバンタイトル
第三章開幕です。よろしくお願いします。よかったら評価やポイントなどいただけると励みになります。
リリシシア王国領の冒険を終えた蜷川つるぎと菜花湊がウーアハ王国領に足を踏み入れる第三章――に入る前に、一度ここでいくつかの設定の整理と解説をさせていただきたい。
まず、女神教の戒律について。
下界の民にとってそれは倫理規定であり、下界各地の居住地域の法はその戒律を軸として制定されている。だからこそ第一章にて蜷川つるぎが女神就任即(地球界の人間の感覚で)改正を行おうとしてパトスに止められ、その行いのせいでまだ女神となるべき器ではないと判断され、研修旅行のきっかけとなった。
まず戒律の根底にあるものは、人間を増やすこと、人間を減らさないこと、女神への信仰を保つことである。
なぜなら多くの場合、「こういう世界だったら、人間はどのような世界を作るか」という点を試すために、世界線は、異世界は、創造されるからだ。せっかく世界を作ったのに、人間が増えずに減るだけで絶えてしまったらいけない。ゆえに戒律で生殖と生存を推進する。また、パンゲア界は女神の介入のある世界という条件もあるため、風紀と信仰を保つための戒律も敷く必要がある。
第二章終了までに出てきた戒律としては、
『同性愛の禁止』
『生殖を目的としない性行為の禁止』
『殺人の厳禁』
『公共物の破壊の禁止(とくに教会の破壊の厳禁)』
『女神の偶像制作の厳禁』
というものがあるが、このほかにも
『理由なき非出産の非推奨』
『他者への暴力の禁止』
『他者の所有財産の盗みの禁止』
『他者の所有財産の破壊の禁止』
『流言蜚語の禁止』
『強姦の禁止』
『放火の禁止』
『食事に毒を仕込むことの禁止』
『肉の生食の禁止』
『自分または隣人に対する加害からの防衛行為の推奨』
『自分または隣人に対する幸福追求の推奨』
『教会施設利用者の選別の非推奨』
『教会施設の破壊の厳禁』
『天使の施しの妨害の厳禁』
『断罪所の妨害禁止』
『戒律の捏造の厳禁』
『破戒の推奨および強要の禁止』
『再破戒の禁止』
など、様々なものがあり、下界の法の基盤となっている。とくに厳禁とされている行いに関してはすべての町で一発死刑の扱いである――中絶を殺人の定義に含むかどうかは町ごとに意見がわかれており、「『自分または隣人に対する幸福追求の推奨』という戒律もあるから、幸福となれない出産であればしないことを選んでもよい」という主張から含まないとする町も存在する。
戒律はあくまでも何をしてはいけないか、何をしないほうがよいか、何をしたほうがよいかという教えである。ゆえに、教えを破った際にどのように罰するかの判断は、民に委ねられている。そうした自由を残しておくことで、どのような文化に発展していくものかという実験的な視点もある。
――ちなみに「もしも女神教が戒律を定めなかったら、どころか介入をしなかったら」という世界が地球界である。バベルの塔のときには言語を分断するという介入を行ったが、その例外を除けば戒律も信仰も自由に作ら、天使室などの設備も置かないという大胆な試みだった。その結果として、なんだかんだ生殖と生存については他の世界よりも盛んに行われたという興味深い結果が出ている。
次につるぎの旅を支えるキャルゼシアの足跡について。これはパトスのナビゲートによって辿る道となっているが、ではパトスは何をエビデンスとして足跡を辿らせているのかといえば、これはキャルゼシアが残した旅の記録によるものである。百年前、新米女神のキャルゼシアが、修練と称して救済の旅行に出たことがあった。その際の記録を参考に、パトスはつるぎと湊を導いている。
ちなみに第二章の内容でいうと、キャルゼシアの足跡は以下となる。
リリシシア城下町に降臨し、教会で欲望を叫ぶ憐れなライドに洗脳能力を授ける。
漁村ガボに降臨し、漁船の航行を妨害していた人魚を処分する。
ダリアンヌに降臨し、観光。
ジンコゥに降臨し、一日だけアパシィ邸にて勤労。
ポールトルに降臨し、広い川に大きな石橋を架け、教会のある場所へアクセスできるようにする。のちにキャルゼシア大橋と呼ばれる。
ジャスタウェイに降臨し、断罪学園『スクロール』にて暴力事件を解決。
バレッタに降臨し、学校施設を見学。
なお、ライドが洗脳能力を得たことにより、多くの人間が意のままに操られてしまったものの、シタ地方の魔女の四姉妹が無力化され、リリシシア城下町と漁村ガボを繋ぐ道が通じて港町ガボとしての発展に繋がった。また魔女を含む多くの駒を得たライドによってリリシシア王国とウーアハ王国の戦争はリリシシア王国の勝利に導かれ、ライドは伝説の大商人としての地位を確立させた。
とはいえ、以上のライドの功績を予見して洗脳能力を与えたわけでは、実はない――キャルゼシアもまた、新米女神であり修練の旅の最初であったからこそ、憐みのままに能力を授けるということをしたのだということは、念のため付記しておきたい。
最後に、リリシシア王国とウーアハ王国について。
シタ地方の南側をリリシシア王国が、北側をウーアハ王国が統治している。両王国の仲は決して険悪なものではなく、領土間を民が行き来することは基本的に問題視されなかった。国をまたいだ商売を行ったり、リリシシア王国領に住んでいた人間がウーアハ王国領に移住をしたりすることも許可されていた。
しかし百年前から関係が悪化し、やがて戦争が起こった――結果は先述の通りリリシシア王国の勝利であり、ウーアハ王国の城下町であるアハランドは北リリシシアと呼称されることとなった。なお、その戦火によってリリシシア王国領は劇場の町ダリアンヌを失っている。
ちなみにリリシシア王国領は様々な町村がそれぞれの場所で息づく形で構成されていたが、ウーアハ王国領はそのほぼ全土をアハランドという城下町が占める形で構成されている――ゆえに、ウーアハ王国領の冒険にてつるぎと湊が過ごす町はアハランドのみとなる。
町の名前を覚えることが苦手な読者がもしもいたならば、どうかその点は安心していただきたい。もっとも、過去に出た町の再登場がないとはいえないが。
それでは、情報の整理と前振りを終えたところで。
第三章『雪に耐えて梅花麗し』はじまりはじまり。
本日四回更新です!




