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第十話 [E]誘拐 - アバンタイトル

「あ、あ、歩ける! 立てている、すごい! 俺の脚って一生折れっぱなしだと思っていたのに!」

 ポールトル。

 三日前に両脚を骨折してから自暴自棄になって道に寝転がっていた、もうすぐ死にそうだった男は、湊の回復魔法によって健康な両脚を取り戻して大喜びした――次いでつるぎが差し出した水と玉子豆腐を口にすると、笑顔で何度もお礼をいった。

 その声が大きいのもあって、町の人々の視線が集まる。


「あんたたち、もしかして、天使様かい!?」

 と男はいった。

「はい。ポールトルに教会がないと聞いて、どんな状態か調べるためにやってきました」

 と湊が答えると、周囲はざわついた――そこに飛び込むように、つるぎは叫ぶ。


「天界のほうからやって参りました『さすらい天使隊』でーす! 教会がなくてお困りの方―! わたしたちが病気を治したり食べ物をあげたりできるので、困りごとがあればお気軽に頼ってください!!」


 あっという間に人々は集まってきた。湊が回復魔法で治療を行う間、つるぎは消化にいい食べ物と缶詰めをたくさん生成して飲み物やブランケットと一緒に渡した。炊き出しをする側ってこんな感じなんだろうか、と思いながらつるぎは人々に食べ物を配った。着るものがないという人にシャツとハーフパンツくらいしか生成できないのがもどかしかったが、人々はとにかく清潔な衣服に喜んだ。湊は、熱も壊死も目の病気も治せるってすさまじいなあ回復魔法、と暢気に思いながらてきぱきと治癒を完了させていった。


 列が落ち着いたかと思えば、今度はほうぼうに呼ばれてポールトル中を駆け回ることになった。列に並べる者だけが傷病者ではないのである。


 もちろん、ただただ治療に専心だけのつるぎではなかった。少しずつ情報収集もしていた――ポールトルの町とグザイの町の関係について。つるぎは教会を持たないポールトルと教会を持つグザイという、隣接する町同士の不平等さに違和感を抱いていた。だからそこに何か解決の糸口があればよいと考えていた。


 結果として、以下の情報が得られた。


「ポールトルの民も、昔はグザイに住んでいたと聞いています。広い広い町の中心に大きな教会があって、そこでみんな治療などを受けていたそうです。僕が生まれる前の話です」

「グザイは広いもんだからふたりの町長が西半分と東半分を分担して収めててね。でもね、もう二十年以上も前に対立してね、一緒にやってられないということになってね。西半分だけがグザイになって、東半分の町はグザイって名前を名乗れなくなってね。だからポールトルって町になったんだね。東半分に住んでたってだけで私たちはポールトルの民だね」


「グザイの民はそのあと教会をポールトルがあるのとは真反対の位置に移設したんだな、ポールトルの人間に勝手に使われないように。天使様に頼めばそれくらいのことはできるからだな。グザイの教会であってポールトルの教会ではない、とかいってたんだな」

「それからは、どうにか自給自足でやってきたポールトルだけれど、やっぱり限界があった。子供を産むのも命がけだし、産めたってすぐに死んでしまうことが多いし、大きなけがをしてしまったらどうにもならない」


「だから最近、ポールトルの町長がグザイの町長に合併をしてもらえるよう掛け合ったらしい。そんで、そしたら和解のためにたくさんのお金を払えっていわれて、どこで工面すればいいかもわからない額だから途方に暮れてるって話」

「いや、たしか金を貯めてるんじゃなかったっけ? どうやってるのか知らないけれど」



 治療が一段落し、つるぎと湊はスポーツドリンクを飲んで一息つく。

「さて、また誰かいるかもしれないし一回広場に戻ろうか湊くん」

「うん。みんな喜んでくれてよかったね」

「でもまあ、これ応急処置でしかないからね。根本的に恒久的に解決しないと」

「やっぱり合併させるしかないのかな」

「まあそうかなあ。わたしが金塊をじゃんじゃん出せば解決しそうだし、しばらく患者いなかったら町長のところに――」


「すみません! 天使様、どこかで私とお会いしませんでしたか!」

 と、前方から声をかけてくる男がいた――つるぎはきょとんと首を傾げたが、湊は見覚えがあった。

「ニムルさん?」

「はい! やはり、あの夜の優しい人ですよね! 天使様だったのですか?」

「湊くん、知り合い?」

「実はダリアンヌで、夜に寝れなくて散歩してたら出会って。ちょっと話したんだ」

「ミナト……さんというのですか! 彼には私の個人的な悩みを聞いてもらい、ポールトルに赴く後押しをしてもらいました!」

「湊くんすごいね」

「つるぎに比べたらこれくらい。ポールトルに着けたんですね、ニムルさん。幼馴染の人には会えたんですか?」


「はい、おかげさまで――なんですけれど、でも、実は大変なことになっていて」

「大変なこと?」

「私の幼馴染の苦しみを取り除きたいのですが、私ひとりではどうにもできないことなのです! 天使様のお力をお借りできませんか!?」



 ニムルはそう切り出して、事情を語り始める――しかしそれについて語るのはひとまず後回し。

 今回はあえてカメラを切り替え、AパートとBパートではミリィとマーキュリーの話を語らせていただきたい。

 場面の切り替わりにより読者諸兄にはご負担をかけてしまうこととなるが、どうかご容赦いただきたい。

AパートBパートがミリィさん編でCパートからアバンタイトルの続きです。なんでこんなめんどくさい構成にしたんだろう、よろしくお願いします!

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