第四話 港町ガボ - Cパート
「ああーっ! 裸で寝てたから裸で過去に送られたー!」
すっぽんぽんだった。
百年前のガボの村の入口に、湊とつるぎは全裸で立っていた――よもや異世界で朝っぱらからお天道様に股間を晒すことになるとは、思ってもみなかった。
「どうしよう! 湊くん!」
「手ごろな葉っぱあったよ」
「わあっぴったし! わたしたちまるでアダムとイヴみたいで素敵……! ってやってる場合じゃないんだよ! とりあえずパンツ!」
つるぎは女神の権能でいそいそとパンツを生成した。付記しておくと、普段から下着を替えるときはつるぎが生成することで買いに行く手間を省いている。だから慣れたものなのだが、いまは予期せぬ事態に焦って手間取っていた――湊のパンツも生成しお互いに股間を隠し、次につるぎのブラを創ろうとしたところで、
「んわーーーーーっ! なぁにやってるべ、おめら!」
と。
朝の空気をつんざく悲鳴を上げる者がいた――小学生くらいに見える少女が村の入口に立っていた。唖然として竹ぼうきを落としたようだった。終わった、とつるぎは思った。この世界のこの時代でも、野外露出は取り締まられていたはずだった。
「そないな格好しとったらぶるぶるになるべよ、はよこっちさ来な」
少女はふたりの手首を掴んで引っ張り、入口の傍にある小さな家に引き込んだ。
それから彼女は成人男性サイズの上着を持ってきて、つるぎと湊に羽織らせた。時間があればつるぎの力で全身の服を用意することは容易であったが、年下に見える少女の厚意を無下にするわけにもいかないため、素直に羽織る。
「ありがとうございます」とつるぎはいう。
「ありがとうございます、感謝します」と湊も続く。
「そんなんいいべ、それよりあんたがたどこからきたんだ」
「えーっと……」
未来のガボの町から来ましたとはいいずらいし、かといって女神ですといったところで信用されそうな状況ではなかった。つるぎが言い訳を考えていると、
「旅の者です。野盗というのでしょうか、お恥ずかしい話、森のなかを歩いていたらおっかない人たちに身ぐるみを剝がされまして。そのままだと病気や虫刺されの危険があったので、とりあえず服を手に入れられそうなところを探してここまで来ました」
と、湊は相変わらずの上手な嘘をかましていた――ちょうどいい嘘で切り抜けるシーンを見すぎてこの彼氏はわたしに嘘をついていないのだろうかと不安になるつるぎだったが、少なくともここまでつるぎのために嘘を使ってくれているのはわかっているから、まあ大丈夫か、と思い直した。
いってしまえば、親に友達の家に泊まるといって湊と外泊するようなものである。それくらいはつるぎも高校三年生のときに経験した。
「なるほどなあ。おめら大変だったなあ。おらがいてよかったなあ」
「ええ、本当に助かりました。神の思し召しでしょうか」
「はは、神様の使いになれんならそれ以上はねえや」
湊と少女は笑い合い、つるぎも合わせて笑ってから、とりあえず訊く。
「わたしは蜷川つるぎといいます。彼は菜花湊です。あなたの名前をお聞きしてもいいですか?」
少女は聞きなれない響きの名前に首を傾げながら答える。
「おらはフラウっつうもんよ」
次回、第五話『漁村ガボ』。人魚出てきます、よろしくお願いします。




