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第二話 女神様は青二才 - アバンタイトル

アバンタイトルなので短めです!


-Tips-

 天界の規律により、天使または大神官は女神を殺してはならない。

 ただし、女神が民や天界・下界に対し害をなす、暴走状態となった場合は別である。



 蜷川(にながわ)つるぎ。享年二十歳。死因、転落死。

 今年十月、恋人の菜花湊(なばなみなと)を亡くし、失意の日々を送っていたところ、同月に歩道橋の階段を降りる際、不注意により足を滑らせて亡くなってしまう。


「つまりね、湊くん。わたしは別に、後追い自殺とかじゃないよ」

 静謐な洞窟で、つるぎは湊を抱きしめながらいう。しかし湊からすれば、自らの死がつるぎの死を誘引したことには変わりなく、罪悪感でいっぱいだった。

「ごめんね。つるぎ。つるぎには未来があったのに」

「……未来奪われちゃったのは、病気で死んじゃった湊くんも同じだよ」つるぎは目じりに涙を溜めながら、湊をさらに強く抱きしめる。「それに湊くんがいないなら未来じゃないよー……」


 そうした、互いの死を悲しみ合いながらいちゃつく時間を過ごしたあと、湊はつるぎから女神殺しの話を聞く。やっつけたとしか聞いていなかったため、女神から湊を解放するためにつるぎが扼殺をしたという事実に湊は当然驚いたが、批判はせずに聞いた。


「だからわたし、女神の力を手に入れて……女神になったのかな。どうなるんだろう」

 大神官パトスの言葉から察するに、次世代の女神となる者が食するべき女神の果実だ。それによって女神の能力や権利を得ることができる――実際、つるぎが行った地上への瞬間移動やゴーレムの消去は、果実を食する前にはできなかったことである。

「ということは、つるぎは、この世界を管理することになるの?」

「うん。忙しそう」


 女神とは天界の最高責任者となり天使たちを従え、世界を管理する者である。この場合の世界とは、数多ある異世界のひとつを指す――異世界ひとつひとつにつき、管理を行うための女神がひとり、天界がひとつ用意されている。つまるところ支社長のようなものだ。

 そして女神たちのさらに上に神々の王、全神王(ぜんしんおう)が君臨している。

 未紹介の役職も含めて図にまとめると、以下の順で偉いということになる。


 えらい                 そうでもない

    全神王―女神―大神官―天使長―天使


 女神の権限にも限界があり、全神王に許可を取らなければいけない行動があったり、全神王からの断れない命令があったりする――アルバイトしか社会経験のないつるぎには、荷の重い立場だ。

 そのことは女神から直々に説明を受けた湊はもちろん、天使になるために試験勉強をしたつるぎも知っていたことだった――知っていてなお、愛する人を護るため、つるぎは女神と為ったということだ。


「じゃあ、ずっとここにいるわけにはいかない」と湊はいった。

「うん。天界に戻らないと」つるぎはそういうと湊の手をとり、指を絡めた。「ついてきてね」

「もちろん」

 ふたりは女神の力で、天界まで瞬間移動をした。


 さて、こうして蜷川つるぎと菜花湊が洞窟から天界へ帰還したところで、Aパートに入る前に、読者様に女神の権能についての説明をさせていただく。時間がなければ後で読んでいただいてかまわない。

 女神の果実を口にした者は、大きく分けて三つの力を持つ。その力と、そんなことを罷り通すことのできる無法さから、女神の権能と呼ばれている。


 ――瞬間移動能力。自らの管理する天界と下界であれば、縦横無尽にワープを行うことができる。また、関連して自らの放つ声や魔法を、どれだけ遠くとも指定した位置に届けることができる。これは有事の際に神として即座に解決するため、あるいは命が脅かされる際にとっさに逃れるための能力である。


 ――無尽蔵の体力。睡眠、食事を必要とせず、四六時中の稼働を続けたとしても体調不良は起こらず、死に至らず、最大で千年ほど生きることができる。なお、女神の心臓そのものは通常の人間ほどの耐久度しかなく、心臓を貫かれるか絶息により死に至ることはある。これはなんらかの要因で女神が精神に異常をきたし暴走した際、他者が生命活動を絶てるように設定されている。


 ――そして、創造力。女神は食べ物や道具など、過去に知ったものをその場にそっくりそのまま創造することができる。さらには、既知のものを規格外の大きさで生み出したり、新たな物体を生成したりすることもできる。これによって、異世界での視察でよいと思ったものを自らの管理する下界にもたらしたり、女神に願う者に特別に生成した力を与え希望を持たせたりすることができる。ただし新たなものの生成に関しては、女神本人の想像力によってクオリティが大きく左右される。なお、自分や前の代の女神が創造したものであれば、自由に削除や加工をすることも可能である。


 ちなみにいうと、瞬間移動能力の項で言及した『魔法』とは女神の力ではなく、天界に所蔵されている魔導書を読み込めば誰でも扱うことのできる技術である。湊が試練のダンジョンで苦しんでいたとき、女神キャルゼシアがモニター越しに彼の傷を治療してみせたのも、瞬間移動能力と魔法の併せ技だった――誤解なきよう。


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