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第三話 魔女アッカ - アバンタイトル

「いっけなーい失格失格! わたし、蜷川つるぎ享年二十歳! 勇者になった彼氏をいじめる女神を殺してわたしが新しい女神になったんだけど、視野を広げる研修として冒険の旅をすることになったの!

 さっそく訪れたリリシシア王国で、百年前に女神のおかげで洗脳ハーレムの能力を手に入れた結果大成したけど自殺者とかも出した商人の話を聞いたから、過去に戻ってそうならないように修正したら、そのせいで魔女の四姉妹が自由になっちゃってこの世界が滅んじゃうかもしれないんだって!

 初っ端からそんなことになっちゃって、この旅これからどうなっちゃうの~!?」

「どうしたのつるぎ」

「いや状況の整理をしておこうかと」


 森の上空だった。

 つるぎは湊を抱っこしたままゆっくりと上空を移動し、パトスのいう、魔女の住む塔に向かっていた。それは苔むした塔であり、百年後には灯台となっていたものだった。

 そこに魔女の四姉妹のひとり――魔女アッカがいるのだと、パトスはつるぎと湊に伝えた。


《魔女はシタ地方の東西南北に散って暮らしています。

 南の魔女――アッカ。

 西の魔女――バッカ。

 北の魔女――ソーダクラッカー。

 東の魔女――ブー。

 今回対峙するのは南の魔女アッカですが、いずれ他の魔女も抑え込む必要があります。全員が脅威的な力と、逸脱した倫理観を持っています。どう対応にするにしても一筋縄ではいかないことが予想されますので、どうかお気をつけて》


「そうはいってもさ、つるぎは女神でしょ? 女神の命令ですっていえば最悪どうにかなるんじゃない?」

 と湊がいってみたところ、パトスは、そうはならないかと、と答えた。


《魔女の四姉妹はそもそも、その技術と性分ゆえに民との共存ができず塔にて暮らしている存在です。それはつまり、世間擦れしていないということであり、女神を絶対視する民の常識からも逸脱していることと思われます。自分自身が人知を超えた存在であるため、神に畏れを抱く理由も薄弱でしょう。魔女の独自魔法は、天界の魔導書にも記載がありません。女神にも天使にもできないことが、魔女にはできるのです》


 魔女にとって神は上位存在ではない――そういわれるとたしかに、ライドのようにはいかないことが湊にも理解できた。


「で、どうする? つるぎ。魔女を殺すの?」

「安易に命を奪うのは避けたいかな。安直だけど、迷惑をかけないでって説得する。混乱させたり滅亡させたりしないでっていう。女神として」

 女神に敬意を払う人種ではないにしても、自分がどの立場から要請をしているのかを明確に、正直に明かしたほうがよさそうだとつるぎは考えた。

「安直すなわち安牌だよね。そうしよう」

 湊は同意した。


 塔の前に降り立ったつるぎと湊は、少し前に腐乱死体にされたばかりのどこかのカップルの亡骸を見つけた。腐肉は鳥獣や虫に貪られていて悲惨なありさまだった――つるぎは魔法で遺体を洗い、植物魔法を駆使して棺桶を作り、そこに収めた。新たな蹂躙を防ぐためだった。

 ペアルックをしていたから、仲睦まじい関係のふたりがこうなったということは誰の目にも明らかだった――つるぎは胸を痛めながら遺体の保護を終え、魔女の説得が終わったらリリシシア王国で遺族を探そうと思った。


「行こうか、つるぎ」

「うん。……湊くん、わたしが守るからね」

「ありがとう。僕もつるぎを守るよ」

 湊はつるぎと手をつなぎながら、背負う聖剣をもうひとつの手で撫でた。


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