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第二話 大商人ライドものがたり - アバンタイトル

アバンタイトルなので短め、キャルゼシアに洗脳能力をもらったルートのライドの話です!

 大商人ライドの物語を紹介しよう。


 ライド・エンゲル。

 彼は北にあるウーアハ王国にて生まれた、商人の息子であった。幼いころから父に計算を教わり、商談や接待の愚痴をさんざん聞かされながら育った。商人にはなりたくないと思った彼は、男女混合の幼馴染グループと共に旅芸人団を結成した。芸事に興味があったわけではなかったが、懸想(けそう)していた幼馴染のリフィーアが加わるというので、ライドも加わらないわけにはいかなかった。


 旅芸人団としてウーアハ王国を出立した彼らは、リリシシア国領の各地でステージを開催したり、めいめいに日払いの労働をしたりして日銭を稼ぎながら、ゆっくりと南下していった。ライドは旅芸人団のなかでは芸を披露する者ではなく、稼ぎを管理したり道具を磨いたり日払い労働の話を探したりする者だった。下働きのような立場ではあったが、にぎやかな日々のなかでリフィーアと念願の交際を始めることができ、とても幸福だった。


 しかし、大陸南端のリリシシア王国城下町にて公演を行った夜、ライドは散歩をしていたところ、リフィーアが旅芸人団の一員であるゴスケと愛し合っているところを目撃してしまった――浮気だ、と悲しみ怒り、騒ぎ立てるライドに、旅芸人団のリーダーであるリングライトは告げた。


「僕たちが旅芸人団として心地よく続けるためには、どちらかを追放しないといけない。ゴスケはすっかり名芸人で、ファンもついている。しかしライドは雑用をしているだけで、なんの芸もできない。みんなで分担できる範囲の役割だ。だからライド、君とはここでお別れだ」


 恋人も所属も失い、絶望に打ちひしがれるライドを置いて、旅芸人団の馬車は逃げ出すように出発した。馬車に積まれた金庫にはライドが生きていくお金も含まれていたから、もうすっかり一文無しになった。働く気力もなく、孤独感に身も心もくたびれた。

 彼は人を憎み、リフィーアどころか女そのものを憎んだ。ライドは奥手であり、リフィーアとは手をつなぐくらいのことしかできていなかった――紳士であろうと抑制していた獣欲が鎌首をもたげた。


 だから彼は、欲と恨みのままに、神に願った。

 そしてその願いは女神キャルゼシアによって叶えられた。


 彼は洗脳ハーレムを作るチート能力を手に入れた。

 自分を視界に入れた者なら誰であろうと洗脳することができる力である。


 彼はその生涯で様々な女性を我がものとした。町娘を、料理長を、宿屋の妻を、四人の魔女を、巨人の少女を、猫娘を、姫と王妃を。


 ライドは楽園を築いていくなかで、ひとつのことに思い至る。(はべ)らせた女性に働かせるよりも、自分が洗脳を駆使して稼いだほうが手っ取り早いということに――何も恋愛感情だけが洗脳ではない。がらくたを宝物に見間違えさせることさえ可能であった。あっという間に左うちわの生活になった。


 楽しく暮らしていたところで、リリシシア王国とウーアハ王国の関係が悪化し、戦争の準備が始まった。ライドはそこでも大活躍をした。何せウーアハ王国といえば恨み骨髄の幼馴染たちの帰る場所である、叩き潰してしまおうという気迫を以て貢献した。ウーアハ王国出身者として帰省のふりをして内偵活動を行いながら、ウーアハ王国領で巨人娘をものにし、リリシシア王国を護らせた。


 リリシシア王国の防衛を万全のものとしたところで、彼は四人の魔女のサポートを受けながらウーアハ王国に潜り込み、姫と王妃を洗脳し、国王を殺害させ、王の死を堂々と告げ、兵と国民全員の視線が集まったところで洗脳を行い、自害させることで戦争を終結させた。リリシシア王国領を攻めていた兵士たちも、その後みな亡くなった。


 勝利報告のためリリシシア王国に帰る途中で旅芸人団と再会した。ライドがリリシシア王国側についていることを知らず、わざわざ馬車を止めて近づいてきたため、ライドはゴスケとリングライトのみを洗脳し他の団員を殺させることで、馬車のなかを血と悲鳴にまみれさせた。ライドはその暴力劇を、ウーアハ王国の姫と王妃と共に、お茶会をしながら眺めていた。


 戦後、ウーアハ王国の跡地の開発会議に参加するなど、リリシシア城内で特殊なポジションに収まった。戦争への貢献から多額の褒賞金が出ていたから、何も商売をせずとも豊かに生きていけるようになった。


 しかしそうした日々に退屈を覚え始めた。張り合いがない、と思ったのである。そこでライドは新たなるチャレンジとして、がらくたを洗脳で売るのではなく、周囲に意見を聞きながら、きちんと役に立つ新たな商品を企画・販売することを始めた。


 むろん、金があるとはいえ有名な職人にすぐ作らせたり完成即シタ地方全域に流通させたり、といったスピード感は洗脳能力によって押し通したものであったが、そのおかげでライドの破天荒なアイデアを次々と実現することができた。


 客には洗脳をしなかったため商売としては失敗と成功を繰り返した。そしてあるとき、とある商品が飛ぶように売れ、ウエ地方から買い求める者も増えた。それならば買いに来るルートをきちんと作らなくてはもったいないと考えたライドは、国王に掛け合って、当時漁村であったガボを、ウエ地方からの船を迎え入れる港町にしてしまった。すると、ライドの商品はウエ地方にまで行き渡ったほか、観光客の流入により同国他店の大繁盛にも繋がった。また、シタ地方からウエ地方に旅立った者が持ち帰った品物も国内を豊かにした。


 国王はライドを、リリシシア王国を代表する商人として讃え、大商人の称号を与えた。

 その多大なる貢献を賛美され、彼とその愛人たちを象った銅像が、リリシシア王国に建てられた。


 ライドはそれで商人人生についてはある程度満足し、それから百歳まで、ビジネスを維持しつつ女たちと遊びながら生きた。薬草を混ぜた強壮ドリンクを開発させていたため享年まで絶倫であり、子づくりも上手くいった。彼女たちとの間に娘ができれば、すぐに洗脳を行った。ライドという男は生涯、童女から妙齢まで欲を向けることのできる、暴力的なまでの性欲男であった。


 晩年。

 彼は死に際に、自分を愛しげに見つめるハーレムの女たちに、このようにいった。


「おまえたちは、俺のどこが、好きだ」


 その問いかけの意図は、誰にもわからなかった。


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