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第十一話 女神 - アバンタイトル

寝過ごしました、本日4回更新です

 さて、ここまで物語の進行に応じて女神についての設定を小出しにしてきたが、いったんここにまとめさせていただく。設定資料集のような小説、とのご意見を賜わるかもしれないが(むろん、甘んじて受けさせていただく)、読者諸兄に『あれなんだったっけ?』と、三十万文字以上のなかから言及個所を探して読み返していただくというのはどうにも心苦しいものがあるから、という理由でご納得いただきたい。


 女神は天界の最高責任者である。天使たちを従え、全神王の妻フェニックスと協力して下界の民を見守る立場にある。下界に直接干渉するかどうかは、管理対象の異世界を全神王が創造する際に建てたテーマ――天界の干渉度合いによって民の発展にはどのように違いが出るか、結果を見るために異世界ごとに設定する条件――によって変わる。


 蜷川つるぎや菜花湊が生まれた地球界は民に対して存在すら示さない無干渉を貫き、死者のみを受け入れる方針を順守している。もっとも、民が結託し、天界の高度に近づきうるバベルの塔を建て始めた際には緊急事態として、言語を分断する罰を下した。


 そして、女神デュクシデュクシー、女神キャルゼシアが管理してきたパンゲア界は、女神が顕現し民の生活に干渉することをよしとしている。とはいえ過干渉では民による自然な発展を見ることができないので、たとえば人々のビジネスや国の政治に口出しをするようなことは控える方針である。

 ……とはいえ、女神デュクシデュクシーやキャルゼシアは他の異世界の視察で触れた文化を下界に持ち込んでいたが。あくまで方針は方針であって、それを破ったから全神王に罰されるということはない。


 全神王はそもそも、創造した異世界や天界については放置気味である。

 だが、放置をするにしても、放っておいてもよいような手はいくつか打ってある。


 たとえば、女神を不老不死ではなく千年まで生きる不老の存在として創造していること。病気などはしないが、心臓は並の人間の耐久であるため、心臓を貫いたり酸素を欠乏させたりして殺すことが可能である。これは、女神がなんらかの理由で精神に異常をきたすなどして暴走状態になった場合の対策である。

 だいたいの天界の規律では、天使が女神を手にかけると死刑だが、女神自身が死以外で停めることのできない状態であるならば免除される、というルールが敷かれている。


 もっとも、このルールは蜷川つるぎのように『女神を殺してすぐ女神の権能を手に入れた、現在暴走状態ではない天使』を想定しておらず、そうした場合に天使が死刑を下すことができないというバグがあるのだが。


 また、女神の権能は強大なものであり、天使だけでは手に負えない可能性は高い。その対策としては、女神を討伐しうる聖竜ヘップバーンとそれを起動する不老不死の巨人オードリーの安置が挙げられる。それもできないと判断された場合は、大神官が連絡係として全神王のもとに赴き、全神王直々の罰にて女神を殺す仕組みである。

 このように全神王は、自分の創造した女神という存在への責任として、様々な策を講じてある。


 そう、女神はそもそも最初、全神王に創造された存在だということを、明記しておくべきだろう――どの異世界も、初代女神と、最初の天使たちは全神王手ずから創造された。そして次代からは、女神の死による退位にて、女神の権能を宿す、ブラックベリーのような女神の果実を口にすることで受け継ぐことになる。


 パンゲア界の初代女神が退位したあとは、最初の天使たちの間で継いでいった。デュクシデュクシーに役が回ってきたのは最後だった。そのころ、最初の天使たち同士からキャルゼシアという娘が生まれ育っていた。

 成長したキャルゼシアは大神官として、デュクシデュクシーの傍で数十年ほど働いていた。デュクシデュクシーは退位が決まると、純真ゆえに間近で自分の影響を受けたキャルゼシアを次代に選定し、自死を行い、女神の権能を与えた。


 女神の権能。それは三種の力。

 自分が管理する天界と下界であればどこにでも瞬間移動することができ、さらに声や魔法を遠隔で届けることのできる瞬間移動能力。

 寝食を必要とせず、常にフル稼働でも健康体のまま千年生きることができる無尽蔵の体力。

 そして、過去に知った物体をそのまま生成し、さらに知っている物体や概念を組み合わせて新たなる物体を生成することもできる、創造力である。ちなみに、自分や自分より前の代の女神が創造したものであれば、消すことも変形させることも思いのままである。


 ――ちなみに蜷川つるぎは現在、研修旅行を行うにあたって、その力を全神王の呪いのブレスレットによって制約されている。瞬間移動能力と無尽蔵の体力は奪われ、創造力は、右手からぶら下げても地面につかない程度の大きさのものに制限がかかっている。


 キャルゼシアはもちろん制限なしのフルで揮いながら、百年、女神として管理業務を行ってきた。

 大神官時代によくしてくれた天使たちのなかから新たな大神官が選ばれたが、下界での旅を経て戻ってきたキャルゼシアの厳しさと肌が合わなかったため、神官補佐を務めていたパトスに交代となった。


 キャルゼシアはデュクシデュクシーよりも甘さのない女神だった――けれども、そのぶんデュクシデュクシーよりも真面目だったから、そこを尊敬する天使もいた。それに女神らしく民を助けることだって何度もあったので、死後に天使となった下界の民からはきちんと慕われた。


 異世界の文化をちょくちょく採り入れる点も評価された。とくに地球界で生まれたモニター設備を魔法で動くように改造し、女神のスピーチ会をパンゲア界じゅうの教会に一斉中継できるようにしたことは――それがキャルゼシアからの発案ではないことを考慮しても――堅いだけでない女神像を表すエピソードといえる。


 キャルゼシアを殺めて次代となった蜷川つるぎが、天界で冷たい目を向けられているのも、さもありなんである。


 最後に、死亡した女神は、天使試験を受ける選択もできずに輪廻の門に投じられることとなる――そしてそれは天使や、菜花湊のような一度死んだ魂の場合も同様である、ということをいま一度明記して、このアバンタイトルを閉じる。



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