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肝心、まずは二品

 翠川家から頂いた心臓(ハツ)肝臓(レバー)はしっかり下処理がされておりました。兵太郎はさっそく調理に取り掛かります。


 何せ貴重なものですし、内臓のおいしさを良く知っているこくり家の一同です。シンプルに素材の味を楽しめる料理が良いでしょう。


 まずはハツから参ります。


 半分に切ったハツを5mm幅に切りまして、お醤油とにんにくで作ったタレに漬けておきます。こちらは後で使います。


 残りの半分の両面を狸印のグリルで強火で炙り、中央まで火が通ったら氷水へ。取り出して水気を拭き取ったらこちらも5mm幅にカットして、扇状に広げてお皿に並べます。生姜醤油と刻み葱を添えましょう。



「お待たせ。一品目はハツをタタキ風にしてみたよ」


「ほほう、綺麗な色じゃのう」



 外側は香ばしく火が入り、内側は鮮やかなピンク色。見た目にも食欲をそそられます。


 刻みネギと一緒に箸でつまみ、生姜醤油にちょんとつけていただきます。


 まず 口にいれて最初に感じるのはその筋肉が歯を押し返す弾力。


 心臓と言うのは全身に血液を送るポンプですから、いわば筋肉の塊です。この歯ごたえが全身に血液を届けているのです。しかし少し噛む力を加えるとぷつりと裂けて噛み切れます。何とも楽しいこの食感。意外に淡白な味わいに生姜醤油がよく合います。


 味もさることながら驚くべきは料理から溢れるそのパワー。心地よい噛み応えを味わっているその時から、体の中にどくんと力が流れ込んでくるのがわかります。



「くあ~っ! うまいのう。一口ごとに体が喜んでいるようじゃ」


「精が付くというのは(まさ)にこのことですわね」


「凄いです。なんだか元気が出てきます!」



 命そのものを食べていると実感できる、まさに滋味の極致です。


 兵太郎は妖怪三匹がハツのタタキを楽しんでいるのをにへらと眺め、自分も厨房でつまみ食い。そうしながらも二品目の準備です。


 次に使うのはレバーです。沢山いただきましたので、贅沢にも少々厚めに切りました。


 贅沢レバーを両面サッとバターで焼いたらフライパンから下ろし、アルミホイルで包んで休ませ、余熱で火を通します。


 この隙に先ほどのフライパンに赤ワインとお醤油、それからこくり家蜂の蜂蜜と兵太郎印の木苺ジャムを少々加え、木べらでこそげながら煮詰めてソースを作ります。


 木べらについたソースを小皿に移して味見です。



「ん、おいし」


 

 出来上がったソースに満足して、ぺろっと唇を舐めました。



 ずきゅん!



 無意識セクシーへの奥様達の熱視線には気が付かず、料理の仕上げにかかります。お皿とお料理をカンバスに見立て、スプーンで絵をかくようにソースを乗せたら完成です。



「はあい、こっちはレバーステーキだよ」



 さらりと出された一品ですが、高級料亭のメインも張れそうな出来栄え。妖怪一同大興奮です。



「まあまあ、豪華ですわねえ」


「ワインをとってくるのじゃ!」



 大人妖怪二人はステーキを一層楽しむためにワインを準備。子供妖怪クロは木苺ジャムを炭酸水で割った木苺ジュースで対抗です。


 レバーステーキにナイフを入れると断面はほんのりピンク色。ソースをたっぷりつけてぱくり!



「ぷはっ、旨いのじゃあ!」


「溶ける、というより舌に絡みつくおいしさですわね。ワインのおいしいこと」


「ジュースもおいしいです!」



 余熱調理のお陰でしっとり食感と濃厚なコクが一切損なわれておらず、ここにソースの酸味と甘みが絡むことで味わいがより引き立てられます。


 レバーと聞いて想像するような臭みなんか全然ありません。寧ろ鳥や豚のレバーの臭いの方が強いくらい。素材の新鮮さもさることながら、翠川親娘の丁寧な下処理のお陰もあるのでしょう。


 三匹が贅沢厚切りレバーのレアステーキを堪能しておりますと、ことりとお茶碗が置かれました。



 と言うことはどうやら三品目、ご飯によく合うお料理のようです。

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