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竜神伝説?

 さてこくり家にやってきた二人連れの女の子たち。今度は冷蔵ショウケースの中のショートケーキで悩んでおります。


 二人を担当したとても可愛い上に商売上手な店員さんがショートケーキは儂のイチオシじゃなんて言うからです。


 食べたい。でも入んない。別腹も埋めちゃった。オムライスおいしかったね。アレ残すとかナイわ。ナイね。帰りに寄る? うーん、でも帰りって言っても……。


 悩んだ二人はケーキをお勧めしてくれた店員さん、紅珠に聞いてみることにしました。



「この辺って、他に何か見る所とかってありますか?」



 ふ~む、考えを巡らせた後、紅珠は答えてくれました。



「来る途中に大きな岩があったのを見たかの? あれは『山路様』という道の神様じゃ。以前は全然別の場所に会ったのじゃが急にあの場所に現れたと言われておるのじゃのじゃ」



 そういえばここに来る途中、しめ縄で傘られた大きな岩を見かけました。そんな逸話ががあるのだと思うと岩もまた違って見えてくるから不思議です。



「ま、見た目もそこそこいいからSNS映えすると思うのじゃ」



 冗談ぽく付け足す紅珠に、二人はあははと笑いました。確かに大事なポイントです。



「じゃがあんまり山路にべたべたしてはいかんのじゃ。隣の若木がやきもちを焼くのじゃ。山路の奥さんじゃからの。それより二人の仲を褒めて気を良くさせた方がよいのじゃ。写真を撮るなら二人とも入れるのじゃぞ。されば夫婦円満、恋愛成就のご利益があるかもしれん。若木は大層な美人じゃからの」



 なるほど岩一つにも色々な言い伝えがあるものです。二人はいたく感心しました。紅珠ほどの美人が美人だという若木の伝説も気になります。岩と若木を写真にとれば恋愛成就のおまじないになるというのも簡単だしやってみて損はないでしょう。


 二人も言い伝えがまさかつい一週間前にできたとは思ってもみません。都市伝説と言うのはこうやって広がっていくのかもしれません。




「あとは山の頂上には縫霰湖(ぬあれこ)という湖があるのじゃ。湖ってだけで特に何もない所じゃが、風景は良い。映える写真も撮れるじゃろうし、運が良ければ(ぬし)に会えるかもしれぬのじゃ」


「湖の主ですか?」



 また面白そうな話が出てきました。思わず身を乗り出す二人に、面影に幼さを残す紅珠がおばあさんが子供に昔話を話すような口調で教えてくれます。



縫霰山(ぬあれやま)には竜神の伝説があっての。その竜なのかどうかはわからぬが、縫霰湖(ぬあれこ)には何か大きなものが住んどるというのは昔からちょくちょく言われとるのじゃ」



 へええ、と感心したのは客さんだけではありません。



「竜神様がいるんだあ」


「何じゃお前様、知らなかったのか」


「湖があるのも知らなかったよ」



 やれやれ、と呆れたように肩をすくめる紅珠に女の子たちはきゃっきゃと笑いました。



「そんなわけで湖を見物して帰りに寄るというのはどうじゃ? 車で行けばすぐじゃが、歩いて登る裏道もあるのじゃ。片道一時間程度かの。腹ごなしにはちょうど良いじゃろ。途中にはアジサイがまとまって咲いとるところもある。行くなら車は置いて行って構わんし、ケーキはお取り置きしておくのじゃ」



「じゃあ、そうしてもらおっか?」


「うん!」



 紅珠の魅力的な提案に、二人は頷きあったのでした。




******



 こくり家を出て案内された道を歩く二人。


 見た目は歩きづらそうなけもの道。でも歩いてみると思ったよりもらくちんです。


 少々急こう配はあるものの、おしゃべりしながらでも問題ないハイキングコース。しかも迷う心配もない一本道。けもの道のはずなのに実に不思議。でも普段けものみちなんてものを歩くこともない二人はその不思議には気が付きません。



 オムライス美味しかった。オムライスも凄かったけどサラダ!ドレッシングって日替わりなんだっけ? また紫蘇のあるかなあ。でも他のも食べたい。ドレッシングだけで売ってないかな。また来たいけど遠いよね。来るけど! なんでこんなところでお店出してるんだろ。お客さん来すぎちゃうとか? 店長さん実はどこかの凄い人でさ。何処かってどこ? なんか石油王の息子とか。なんで石油王がカフェやってるのよ。でもお客さんいないのに店員多いのとか、美人イケメン揃いとか謎じゃない? ええ、でも揃いって言っても。ちょっと店長さんに悪いよ。ええ、そんなこと言ってないじゃん! うわ、あそこみてめっちゃ綺麗!



 おしゃべりしながらも、道中の百合やアジサイの群生スポットでの撮影も忘れません。



 紅珠と藤葛という大妖怪のお気に入りというVIPを喜ばせる為、花たちが張り切り、物の怪達も気を配っているだなんてことは知る由もなく、二人はきゃっきゃと湖へと向かうのでした。


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