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第五話 妖狐の神通力

「妖狐神通!『後から録画鏡』~~~!」



 てってて~ん。



 軽快なラップ音とともに、紅珠は自分の本体である金属製の鏡を掲げました。



「な、なんですかその未来秘密兵器みたいな神通力は!?」



 確かに未来形。そしてキツネよりタヌキ系の妖の能力です。



「『後から録画鏡』は過去にその場所で起こった出来事を見ることができる神通力じゃ。これで貴様が兵太郎によからんことをしとらんかったか見てくれるわ」


「ちょ、そういうのやめなさいよアナタ」


「ふはははは、狼狽えおって。そーれ『後から録画鏡』よ、過去の映像を映し出すのじゃ!」



 鏡から放たれた光が壁に投影されます。映し出されたのはついさっきの紅珠が来る前のこの部屋の景色でした。兵太郎がソファ席で眠っているのが見えます。



「お、兵太郎じゃ。よく寝ておるのう」


「そ、そうですわね。ではこの辺で」



『するするする』



「む、なんじゃ壁から蔦が」


「………………」



『ぐるぐるぐる』



「………………」


「………………」


「………………」


 ……………………。




『さわさわさわ』




「……………………」


「……………………」


「……………………」


 ……………………。

 



『ああっ、あああ~~っ、もう我慢できません、いっただき』




 ぷつんっ。




「妖狐神通! 『有耶無耶煙幕爆弾うやむやえんまくばくだん!』」



 ぼーーーーーーん!



 解説しよう!


 有耶無耶煙幕爆弾は気まずくなった時に使うと色々なかったことにできる便利な神通力だ! 先生のことをお母さんって読んじゃった時やお茶の間で意図せずお色気シーンが流れた時には積極的に使おう!たくさん煙が出るけどすぐに消えるし無味無臭で人体に一切影響はないぞ!



 紅珠が何処からか取り出した爆弾を床にたたきつけると、大きな音とともにもくもくと煙がたちこめ、色々有耶無耶になりました。



「けほっ、けほっ。え、今の何?」



 兵太郎は状況が呑み込めていないようですが、有耶無耶になったのでセーフです。




「お気遣い感謝しますありがとう。それはそれとして兵太郎は渡しませんよ!」


「今のは儂が悪かったごめんなさい。それはそれとして兵太郎は儂の物じゃ!」



 二人の大妖怪は両者一歩も譲らず、にらみ合いを続けています。


 あわや千年前の妖怪大戦争の再現かと思われましたが、次の瞬間、二人ともへなへなとその場に崩れ落ちてしまいました。



「えっ。ちょっと、二人とも大丈夫?」


「むうう。駄目じゃ。体に力が入らん」


「くう、有線とはいえ体を維持するのは負担がかかりますわね」



大妖とはいえ紅珠も藤葛も復活したて。妖力を使いすぎてしまったのでしょう。



「なんだ、二人ともお腹が空いてるの?」



 有耶無耶煙幕爆弾の後遺症でしょうか。へたり込む二人を見て兵太郎は何やら勘違いをしたようです。



「二人とも、鶏肉は好き?」


「鶏肉? 鶏はもちろん大好物じゃが……」


「私も大好きですが、お腹が減っているわけでは」



 とっさに答えてしまいましたが、二人は妖怪。お腹が空くということはないのです。


 妖怪は基本的に食事を必要としません。二人が最後に「食事」をしたのは、それはもう気が遠くなるような昔のお話です。


 もちろん妖怪の中には人を喰うものもいます。しかし彼らにしたところで人の血肉そのものを栄養にしているわけではないのです。


 彼らが食べているのは人の心。襲われ喰われる者や、その様を見聞きする者たちの恐怖です。


 しかしそんな妖怪の常識を人間である兵太郎が知るはずもありません。



「あはは、そんなふらふらで強がりいっても駄目だよ」



 兵太郎はカウンターの中に入り、冷蔵庫から鶏肉と卵、それに数種類の野菜を取り出しました。



「待っててね。すぐできるから」

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