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第三話 押しかけ女房は突然に

「兵太郎、下がっていてください。この私がすぐにキツネを追い払いますからね」


「えっ、えっ、今度はどなた? 何処からでてきたの?」



 兵太郎は突然現れた美女、ちんちくりんのキツネなんかとは段違いの色気と大人の魅力を放つ美女に、一目で恋に落ちたのでした。



「落ちとらんわ! おもいっきり戸惑ってるじゃろうが! 」



 不審狐はどこからか取り出した恐ろしい凶器(ハリセン)を美女へと振り上げます。美女、危うし!



「やかましいわ!」



 スカッ。


 しかしちんちくりんなキツネの凶器(ハリセン)は美女の身体をすり抜けてしまい、ちんちくりんなキツネは無様に大コケしたのでした(笑)。めでたしめでたし。



「コケとらんわ! その、ちょっとよろけただけじゃ!」


「え、すり抜けた? どうなってるの?」



 兵太郎は突然現れた美女へと手を伸ばします。きっとその魅力に耐えきらなくなったのでしょう。



「ああ、兵太郎そんな急に大胆に、あんっ!」


「あん、じゃないわ、触られとらんじゃろがこのタヌキが!」



 スカッ!



 凶器(ハリセン)は再び空を切ります。ちんちくりんは無様に尻もちをついてしまいました(笑)。



「ついとらんわ! ええい忌々しいタヌキめ。貴様ヒロインである儂より先に登場しおって、読者様を混乱させるんでないわ!」


「まあ何て言い草でしょう。私を直した端材で祠を直して貰っておいて、ヒロイン気取りとは。勘違いも甚だしい。これだからキツネという輩は」


「なんじゃとう!冒頭で祠直しとるんじゃ。その主が訪ねてくるのはわかりきってるじゃろうが! 貴様タイトルちゃんと見たか!?」


「何言ってるのかさっぱりわかりませんわ!」




「…………あの~…………」




「メタに乗らないとかいい子ちゃんっぶりおってからに!うぬぬ、儂が憑いていながらなんたること」


「はぁああっ!? 兵太郎に憑いたのは私が先ですけど?」


「ど、どっちが先とかじゃないわい! 憑いたのが後とか先とか、そういうの全然重要じゃないんじゃからな!」


「明らかに動揺してるじゃないですか声が震えてますわよ!」


「やかましい、儂は土地神じゃぞ。この地に住む以上兵太郎は儂の物じゃ!」


「土地神が個人に憑くんじゃありませんわよ非常識な。住むという話なら兵太郎は此のひと月私に住んでいますのよ。兵太郎は私の物です!」


「ぬ、ぬぬぬ、儂がちょっ~と寝ている間に家など建ておって! 祠が完全であればこの地にタヌキなんぞ近寄らせはしなかったものを……っ」


「うわあ、今の聞きましたか兵太郎?」


「え? いえ、あのそれより……」


「この(ヒト)、善意で祠直して貰っておいてクレームつけてますよ。いますよねこういう(ヒト)。嫌ですね」


「ち、違っ、馬鹿貴様、違うんじゃ、お前様。お前様の仕事に文句をつけたとかではないんじゃ。全然ないんじゃ」」


「いえ、それはいいんですが……」


「お前様のその仕事は大層素晴らしいもので祠は完璧であったし、その繊細な指先で全身を洗われた時には儂はもう」


「は、はあ……」


「何いだしてんですか気持ち悪っ。ドン引きですよこの色ボケキツネが。さてはアナタ、来るのが遅くなって等と言ってましたが、兵太郎の好みに合わせようと体をいじくりまわしていたのでは?」


「バっ、なに言ってんの、馬鹿じゃないの、ほら、アレじゃ、何を根拠に」


「なにキョドってんですか。うわあまさか図星ですかキモっ!」


「な、なな何を言うか! 初めて姿を見せる、つまりは初デートじゃぞ! 身だしなみに時間が掛かるのは当然じゃろうが!」




「あの、さっきから地の文が無くなって読みづらいんだけど……、いやそれよりも……」




「夫(笑)。まあそれはおいといて。で? その結果がその貧相な体ですか?」


「ひ、ひんそ……! な、なななな、貴様なんちゅう、そうやって人の体のことを馬鹿にしてはいかんのだぞ!」


「ハイハイ、そうでちゅね~。お子様はじぶんのお(うち)に帰ってねんねちまちょうね~」


「言わせておけば!いいんじゃな、んじゃ儂も言うぞ、いいんじゃな? 貴様こそそのような幻ではなく、貴様の本当の身体で現れてみい!」


「なっ…………」


「おや? どうした、出てこれんのか?」


「……………………」


「そうじゃろな? 出れんわなあ? 貴様の本体はこの家じゃものなあ! 大方、身の丈に合わぬ変身をして戻れんくなったのであろう! ぷーっくっくっ。狸というのはいつの時代も愚かよな」


「なんですって、この勘違いのチンチクリン狐が!」


「デカければいいってもんではないわこのブクブクハウス!」


「ぶ、ぶくぶくはうす? アナタこの私をブクブクハウスと呼びましたか?」


「おうおう呼んだわ、貴様にぴったりの名前であろ?」


「このキツネ、もう勘弁できません。ぎったぎたのキツネうどんにしてくれますわ!」


「望むところじゃ。貴様こそタヌキ汁にして……。おっと残念、それはできないんじゃったか。そのブクブクハウスの身体ではなあ!」


「こんのおおおおおおおおおおお!」





「あの~、お取込み中すいませんが……」





「おお、お前様、ちょーっとばかし待っていて下され。このタヌキを黙らせますよって」


「ああ兵太郎、すぐにこの不審キツネを追い出しますからね。そうしたらさっきの続きをしましょうね」




「……いえ、あの……」


「ん?」「はい?」




 ………………。


 ………………………………。


 ………………………………………………………………。




「二人とも結局、どちら様なんですか?」




 ………………。


 ………………………………。


 ………………………………………………………………。



 ………………。


 ………………………………。


 ………………………………………………………………。





「儂はお前様の」「私は貴方の」



「妻ですじゃ!」「妻ですわ!」

お読みいただきありがとうございました!

面白いと思っていただけましたら是非、ブックマークやご評価お願いいたします。


またのご来店、心よりお待ちしております。

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