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第九話 結婚初夜

「さて大分夜も更けた。後は寝るばかりなのじゃが」


「そうだねえ。と言っても使えるようになったのこの店の部分だけだから寝る場所ってなくって。僕はソファで平気なんだけど……。二人はそうもいかないよね」



 本体が鏡と家という二人なので寝床の快適さを考慮する必要があるのかは怪しいところ。でもそこは兵太郎。無視するわけにはいきません。


 うーんと悩む兵太郎を見て、 藤葛がぴっと手を上げました。



「あ、それでしたらお任せくださいませ。もう一部屋位ならご用意できるかと」


「えっ。部屋を用意?」


「ええ。兵太郎のお陰でかなり力を取り戻しましたので」



 藤葛は目を閉じ、胸の前で手を組みました。その体が淡い藤色の光を発します。


 するとどうでしょう。店の奥にある扉の向こうから、ごとんごとんと地響きのような凄まじい音が聞こえてくるではありませんか。



「ほっ? これはまた凄まじい妖気じゃ」


「白々しい。驚いた振りはよしてくださいませ」



 地響きはしばらく続いておりましたが、やがて唐突にピタリと収まりました。



「では兵太郎、こちらへ。廊下は直っておりませんのでお気を付け下さいまし」



 促された兵太郎が藤葛について奥に入ると、荒れ放題だった扉の先に確かに、ふすまの扉が現れています。



「さあ、どうぞ開けてみて下さいませ」



 兵太郎がふすまを開くと、そこには畳敷きの和室が広がっておりました。ご丁寧に部屋の中央にはダブルの布団まで敷いてあります。



「わ、凄い。これ藤さんがつくったの?」



 きらきらと目を輝かせる兵太郎に、藤葛は得意満面です。



「うふふ。まあ自分の身体ですから、それほど大したこともありますので存分に褒めて下さいませ」


「凄いんだねえ。僕がやったら何か月かかるかわかんないや」


「僕がやったらという発想が出てくるところが兵太郎じゃの。しかしふむ。確かに見事なものじゃ」



 これほどの業を見せられては、紅珠も素直に感心せざるを得ません。



「では、私と兵太郎はここで寝ますので、紅さんはお店のソファをお使いくださいませ。」


「藤、貴様ちょっと待てい! さっきの不可侵条約はなんじゃったんじゃ!?」


「仕方がないでしょう。今の私ではこれが限界なのです」


「ならば貴様がソファで寝ればよいじゃろ!」


「あ、僕はソファで平気だから紅さんと藤さんがこの部屋で」


「「いやいやいやいや」」



 店に戻ろうとする兵太郎を藤葛と紅珠は慌てて引き止めました。二人の身体は家と鏡。兵太郎がいないのなら布団で寝る意味はないのです。


「お前様は布団で寝ないとじゃ。明日だって諸々しなければならぬことがあるのじゃろう?」


「兵太郎、ソファで寝て身体を壊しでもしたら、カフェどころではないのですよ?」


「ううん。そういってもなあ」



 二人の言うことはもっともですが、兵太郎としても自分が布団で寝て二人をソファで、というわけにも行きません。



「じゃあ、ちょっと狭いけどここで三人で寝ようかあ」


「えっ」


「えっ」



 いいことを思いついた、とばかりにぱっと輝かせる兵太郎に、紅珠と藤葛は戸惑いと隠せません。



「あ、やっぱ狭い?」


「あ、いやお前様がそういうのが良いなら儂はその、別に」


「意外ではありますがそれならそういうのも、まあ」



 二人の妖怪はぽっと顔を赤らめました。



 ……どうしましょう。



 オチが読めてしまいます。紅様と藤様が不憫でなりません。



 真ん中に兵太郎を挟んで、左に紅珠、右に藤葛。


 すわ、夜はこれからと意気込む自称兵太郎の妻の二人でありましたが。



「じゃあ、おやすみなさい」


「えっ」


「えっ」


「え?」



 こうして三人は一つの布団で、仲良く眠りについたのでした。


 めでたしめでたし。


あとがき


全年齢対応ですので仕方ないですね。通報されたら大変です。


物足りない方は「祠を直しただけなのに R18ver」をご覧ください。


「あるんですかっ!?」


すいませんないです。


今後も張り切ってまいります。


応援、宜しくお願い致します!

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無いんかいw
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