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二つ目の秘密

「…話、聞いていたな?」

王家の秘密を知っているという怪しい平民女…ララが退出したあと、俺は後ろに控えていた側近候補の幼馴染み、カイルに声をかけた。

「はい」

「おまえは知っていたのか?エリザベスが、偽の婚約者だと」

「いえ、そんな話は聞いたことがありません」

「そうか。」

カイルの家は国一番の情報通。そのイーゼンフィット家も知らされていないのか、あるいは、俺に近いカイルには隠されているのか…?


「他には知っているのか?あの女が言う、王家の秘密とやらを」

「いえ、心当たりは何も…」

そこまで言ってからカイルははっと顔を上げた。

「まさか、国王様のカツ」

「止めろ」

確かに幼い頃二人で城内を探検していたときに見つけてしまった父親のヅラコレクションは衝撃的だったが、いくらなんでも王家の秘密ではないだろう。いくら一国の王でも、父の髪と女の子を救いたいという話も繋がるわけがない…と思う。

「兄ならなにか知っているかもしれません。丁度ライルフォーネ兄様が学園にいるはずです。話を付けます」


と言うわけで俺は応接室…の戸棚のなかに隠れる。中にあったものは飾り棚に押し込んだから多少ゴテゴテしたがまぁ誤魔化せるだろう。

息を潜めて待っていると、ドアが開く音がし、会話が始まった。


「何の用だカイル。これから城へ戻るところだから手短に済ませろ」

「では単刀直入に。ライルフォーネ兄様。王家の秘密をつかんだので、事実確認をしたく」

「ほう?どの秘密だ?」

「…エリザベス様について。彼女が影武者であるという情報を得ました」

「…ふぅん、どこからの情報だ?」

「言えません。私にも独自の情報網があるということです」

「生意気なやつだな。だが、そこまで自力で掴んだことは認めてやろう」

「ではやはり事実なのですね」

「ああ。王太子には?」

「俺からは、何も伝えていません」

「そうか。影武者の役目もあと二年と言ったところだが…未来の王妃のご命令だ。王太子には何も伝えるな」

「…はい。ライルフォーネ兄様、秘密を掴んだ褒美に情報を1ついただけませんか」

「内容による」

「エリザベス様は王太子妃教育を順調に進めておられると聞いています。今さら婚約者を交代となって、本来の婚約者への教育はどうなるのです?」

「その事なら案ずることはない。エリザベス嬢と同じペースで、教育は進んでいる」


バタン、とドアの音がする。

その後ガタガタと何か片付ける音がして、扉が開いた。

「…アンドリュー様…」

「聞いていた。エリザベスが、偽の婚約者…」

脳裏にエリザベスの顔が浮かぶ。

物心ついた頃から「婚約者」として育ってきた。

庭で好きな花を見つけたと笑う顔。

お茶会の練習でのすまし顔。

パーティーでは堂々とした淑女の微笑み。

帰りの馬車では気の抜けた、少し疲れた照れ笑い。

そのどれもが未来の王妃にふさわしくそして…

「俺は、エリザベスが…」

これ以上は言葉にできない。王家の婚約は政略が絡む。

影武者であること、何か深い事情があるのかもしれない。

それを知るまでは。


「とにかくやるべきことは情報収集ですね。ララ・クランベリーに接触は?」

「次の情報は1ヶ月後だと言っていた。向こうから何かしらの動きがあるのだろう。それまでにこちらも探る。さしあたっては本物の婚約者が誰なのか、何故影武者を立てることになったのか、協力者は誰か、ララ・クランベリーは何故このことを知ったのか…」

わからないことが次々出てくる。カイルと話をつけながら、俺の心を占める一番大きな疑問は、とうとう口に出すことは出来なかった。



エリザベスは、自分が影武者だと、知っているのだろうか?


お兄ちゃんが「アンドリューには言うなよ!」って言うてたのでカイルくんは「僕は何も言ってません!」で押しきるつもりです。嘘は言ってない。カイルくんはアンドリューに何も言ってない。聞かれてただけ。


まだ続きます。

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