オンナはこの世の奴隷なのか… ③
まだ切なく痛いお話が続きます。
“茜” 視点です。
翌朝
私の顔はどこかのマンガのキャラクターの様にパンパンに腫れていた。
右瞼が腫れて塞がっていて…自分ではカラコンを外す事ができなくて
柾子さんの背中に手を触れる。
「私のせいだ、私がひどくさせてしまった」
とグシグシ泣く柾子さんに頭を振って
自分の瞳を指さし
『外して』とジェスチャーした。
カラコンを外してもらい、素の瞳をさらす。
ずっと隠していたい本当の色
この国では
異色は
本当に生きづらい。
この時点で
私は襟首をつかまれ
表に放り出される野良ネコと覚悟していた。
どうせ喋れないし…
説明も言い訳もする気はない。
なのに柾子さんは
紙とペンを持って来て
語り掛けた。
「何か食べる事はできる?」
私は書いた。
『ほとんど口が開けられない。 でも少し おなかは空いた リュックの中の 缶のコンソメ 飲ませて』
その白地に金色の帯のコンソメ缶は
私の乏しい食歴史の中では宝物だった。
それは母とのほとんど最後の思い出
ある昼下がりの食卓…
ヤられるだけの連れ子と…
その家のお嬢様とが
同じテーブルで同じように食べた
唯一のもの…
柾子さんは
缶の中身をお皿に移して
チン!してくれて…
お皿の中身を小さなスプーンでひとさじひとさじすくって
ふうふう吹いて
そおっとくちびるに当てた。
そして
私の速度に合わせてスプーンを傾けてくれる。
痛くてしみるのと、味が心にしみるのと、ポロポロ涙が止まらない柾子さんの心がしみるのとがごちゃ混ぜになって
私は
ふう と
ため息をつく。
柾子さん、
私の頬に
わずかにふれるくらいに手をやって
「かわいそうに」
とハラハラ涙を落とす。
止めよう!
お姉さん!
確かに私は今喋れないけど
ドジを踏んだのは私だから
あなたがそんなに
憐れむ筋合いではない。
お姉さんこそ
かわいそう
こんなクズな
ガイジンにつかまって!!
だから痛い目に合わせてあげる
アナタのお金や服やジュエリー達を盗んで
ずらかってあげる
そうすれば
心置きなく
私をさげすみ、痛めつけ、
アイツらみたいに
唾を吐きかけられる。
どうせリュックの中の…
私の“正体”、見たんだろう!?
それなのに柾子さん!
「茜はきれいで優しい字を書くのね…大好き」って!!
なんで⁉
なんで!!?
そんなこと言うの?!!
グシュン!!と鼻がなって
涙がデコボコの頬を伝ってしまう
「痛かったの? 痛かったの?」
とオロオロするお姉さんの胸に顔を埋める。
がまんしていたおえつが…せきをきってあふれ出して
温かく甘い匂いのする胸で
私はダダ泣きした。
でもそれは
もみ消さなければならないので
唯一、痛みを免れていた右手を
お姉さんのシャツの裾の下から這わせ
その柔らかな山を制覇して
イケナイ事をした。
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裏切り者として
憎まれなければならない。
私と一緒に居れば
きっと
お姉さんに迷惑がかかる。
だって私は
LawbreakerでForeignerでlowteen
最悪な災厄
だから
二人の寝床をそっと抜け出し
戦利品をリュックに詰めた。
玄関に置いてあるスニーカーに手を掛けると
「えっ?!」
何かメモが入っている。
スマホの画面で照らしてみた
『出て行かないで!! みんなあげるから』
思わず指に力がこもって
メモの端っこがギューッとなってしまう。
後ろから
毛布の蓑が掛けられて
私の頭は
お姉さんの胸の中…
いっぱい迷惑かけるよ…
「いいよ」
盗みだってしたよ…
「うん、
一番最初に
心盗まれたから…
大好きだよ
『茜』
大好きだよ
『MATHILDE』」
涙でくぐもった私の目に
黒いリボンが留まった。
摘まみ上げて見ると
真ん中にペンダントトップがくっついているチョーカーだった。
ちょうどいい
私はしばし
飼いネコになることにした。
飼いネコなら
プイっと出て行って
ノラになる事も
…
…
死ぬ事も…
できる。
私は
チョーカーを付け
お姉さんの耳元で
かすかな子猫の声で
「にゃあ」と鳴き
まだ不自由なくちびるで
甘噛みをした。
。。。。。。。。。
イラストですが…
全体的に
今日はいかつくて、堅いです…
いずれ描き直します(^^;)
茜ラフ案
柾子ラフ案
今回も書きながら泣いてしまった…
私の頭に、お話が降りて来た時、この先があったのですが、
輪を掛けて痛く悲しいので
今は書くのを控えようと思います。
ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、切に切にお待ちしています!!<m(__)m>