I'm not a tuna
夜中に目が覚めて、このお話の出だしが目に浮かび
涙が止まりませんでした。
「だから、オレの誠意と純情はどうなるんだ!!って聞いてんだよ!!」
ベッドから蹴転がされた私に、私の身ぐるみを剥がしたヤツが凄む。
「オレがお前の初めてのオトコだと信じたから、これまでしてやってたんだ!! このクソ詐欺女!! すべての女に謝れ!!」
訳が分からない!!
私はひと言も“初めて”だなんて言っていない!
私の体は、どこもかしこも弱くて
すぐに鼻血が出たり、口内炎になったりするのと同じに…
男性を受け入れるとその度、赤く
シーツを汚してしまう
それがあんまり続くからなのだろう。
行為の最中にいきなり私の両肩を掴んで詰問するから
私は嘘を付けず、
「前に経験はある」と口走った。
それなのに何で詐欺と言われなきゃならないの!!??
何で、私以外のすべての女性に謝らなきゃいけないの??
私、怒りで立ち上がったのだけど
中心から内ももを伝い、くるぶしまでできた血の川の流れが止まらなくて
止む無くしゃがみ込む。
ああ…
でも
私の肌は敏感で、すぐ官能してしまうから
それが過ちなの??
でも
私だって
受け入れれば
痛いだけだったけれど
マグロにはならなかった
こうして逡巡している間に…
男は全てを洗い流して出ていった。
私をラブホのじゅうたんの上に置き去りにして
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考えてみれば
私には
こんな
私には
カレが齎した
晩餐などは
過ぎた接遇だったのかもしれない…
ああ
あんな男に
こんな反省をしてしまう私は
重症だ!!
とにかく、部屋に帰ろう…
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駅を降りて
橋を渡る頃には
雨の予感を孕んでいた夜風が
いよいよ霧雨を連れて来た。
他に着ていく当ての無かった“お気に入り”を濡らしたくない私はコンビニでビニール傘を買う。
ああ
悲しいなあ
やっぱり
私には
ムリだった…
アラサーなんてかっこよくは言えない、三十路女の望み。
家庭を持ちたい
子供を持ちたい
確かに二度目のカレではあったけど
一瞬は、望みが叶うのかもと思った。
最初のオトコにはキモられ
10年近くかけて
そのキズを癒したのに…
ここでヒロインなら
『深く傷ついた』
と泣くのだろう。
でも私なぞは
“下に”夜用をあてがって
滑稽なだけ…
この手に子供を抱くなんて事は
光年ほどの彼方に感じられて
バカバカしくて
泣けやしない…
そんな私の目に映ったのは
コンビニの向こうの街灯の下にうずくまっているJK
ハハハハハ
見たことあるぞ
どこかのマンガで
笑える
街灯の下で“柳の下”を狙うのか
私の粘膜は敏感なのだ
匂いだって嗅ぎ分ける。
私、
その不埒なJKに絡んでいた。
そう自虐の酒に溺れたヨッパライ!
「アンタ! 臭う」と
その子、ゆっくりとボブの頭を持ち上げて
物憂げに私を見上げる
「なんだ、オンナか…」
「フウワハハハ 残念でした~ オンナモドキで~す!!」
JK、「チッ!」と舌打ちする。
「邪魔なんだけど!」
「言っただろ? クサイんだよ! このご時勢、んな不衛生なコト、止めてくんない?」
「何考えてんだ?! このBBA?」
「ナニを考えてんのアンタじゃん」
「『ナニナニ』って、欲求不満でアタマおかしいんじゃない?」
「ブ!ブ~!!さっきヤったばっかだもんねー! オトコの懐を狙ってるアンタとは違う!」
「だからどうだって言うのさ!!」
このJK、スクっと立ち上がった。
良く言えばモデル体型だが
乏しいヤツで
ホント、これを対象にする“オトコの欲望”のどうしようもなさを感じてしまう。
なら、叶わないものの為に蠢く
私の敏感肌も
無用の長物だ。
私のアタマの中を駆け巡ったこの思いが
私の頬に霧雨以外のものを降らせた。
「ちょっと! ナニ泣いてんの??」
ドン引きするこのJKに私はビニール傘を差し掛けた。
「何でだろうね?
分かんないけど…
シャワー貸してあげるから
ウチにおいで」
更にドン引きするかと思いきや、この子猫、私の傘をスイッ!と奪い取った。
「ワタシの事、クサイって思うんなら、傍に寄らないで居てあげるから もう1本、傘買って!」
これがカノジョとの…
このひずみきった世界の割れ目から産み落とされた
置きざれ少女との
馴れ初め
。。。。。。。。。
イラストです。
まずは、表紙
エセJKの茜(本名:Matilda)のラフ案 1
エセJKの茜(本名:Matilda)のラフ案 2
懲りもせず、行き先を決めない物語をしたためております<m(__)m>
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