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第二十四話  エルフの国へ

 それからしばし談笑の後、マーナとレンカを部屋に残し、迅とチビッコらは宿に帰る。一時後、二人が宿に戻るとすぐ、入れ代わるように迅はマーナと待機している馬車に乗り、そのままエルフ国へ向けて出発した。


 レンカとミクル、ラオ、キクリは笑顔で送り出してくれたが、迅の方が、賑やかな生活に慣れてきていて、物寂しさを感じるものがあった。

 俺年とったのか? ……


 暫く走り、野宿をしながら数日、大きな河の側に着く。

 川という表現が正しいのかさえ疑問に思えるほどの大河は、川向こうが霞んで見えるほどで、止まってるのかのような緩やかな流れに大自然を感じる。馬車の御者が渡船場で、渡し船の船頭らしき人物と話しをつけてくれて船に乗る。迅は疑問に思いマーナに尋ねる。


「この河渡るとエルフ領土なんですよね。俺なんにもなく入れるんじゃないですか? 」

「人族一人連れていく旨だけ伝えてあります。詳細は直接会ってからでないと拗れますから 」

  

 そうだったのか。神聖国のあの部屋からエルフ国にも連絡してたのか。確かに話を聞くなかでのエルフ国の印象では、通話のみの交渉は一蹴されかねないか……


 その大きな湖ともいえるような川を横断していくと、向こう岸がハッキリと見えだし、その奥に広がる大森林の緑が飛び込む。


「川隔てただけでこんなに変わります? 木々が違う植物みたいだし、密集してるというか……あっ、こうゆうのを密林っていうのか」


 迅が今まで歩いてみてきた、人の手が入ってなくともどこか整然とされていた山や森とは違い、樹海というのが当てはまる景色に驚く。


 「さぁ、行きましょう」


 

 岸に到着しマーナに導かれるまま、その密林の中に入っていく。鬱蒼と生い茂る木々、縦横無尽に張り巡らされている木の根が毛細血管のように地面を張り、それが大きく小さく突き出ており、平坦と呼べるようなところが見当たらない程。


「マーナさん、俺行くこと伝わってるなら普通に道行った方が早いんじゃないですか。あと馬車とか……お忍びでしたらこうゆうところいくのはわかりますけど、それに時間的にも……」


「えっ。何言ってんですか? さっきから路通ってますよ。それに馬車が通れる道はこの辺りにはありませんよ。ふふっ」


 なにぃー。この一歩一歩進むのにも足元確認しながら突き出た根っこ避けながら、同時に前方を塞ぐように覆いかぶさるかのような草木、このジャンゴーのどこに路が……ホワイ?


 マーナをみるとその中をいともなく進んでいく。


「ちょっと待ってください。マジなんですね。はぁ~またまた驚いちゃうなぁ」


「くつ替えてよかったでしょ」


 出発前にマーナが色々準備しているなかで新しい靴を用意され渡されていた。

 そういうことか。確かにおぼつかない乍らも足を挫くことはなさそうに、その厚底の足袋のような靴は着地面にフィットしている。


 頭上を見上げるとそのテッペンが確認出来ない程の木の高さは船に乗っていた時にはわからなかった。不思議なことに空を覆いつくすような木や枝葉からは、漏れてくる程度の日の光にもかかわらず、薄暗い感じはしない。

 むしろ目に優しいほど丁度良い明かりの加減に、想像するほどの疲れがでることはなかった。


 しばらく突き進み、全身の感覚が慣れてきたころ、ようやく初めに言っていたマーナの言葉の意味を理解する。


「ははっ。気づかなかった……自然すぎて……」


 前を進んでいたマーナが振り向き笑顔を浮かべながら、やっと気づいたかのような迅に、合わせるように説明しだした。


「案内してくれてるんですよ。迷わないように。かわいいでしょう」


 迅が気づかないだけで最初からあったのだろうそれは、行く先を指し示すかのように、薄く光るトンネルのようなものが出来ていた。


「この光るコケみたいなものも精霊なんですか? 」


 岩や木技からぼんやり光を放つものがあり、それはマーナが、野宿するときに見せてくれる精霊とはまた違った色合い放ち、それが夜だったならば幻想的な雰囲気を醸し出していただろう。


「そうですね。精霊のチカラです」


 マーナは続けるように、歩みを進めながらエルフの国の説明をし始める。前にバーでベスが話していたこととほとんどが合致していて、この大自然と共存共栄することに生きる意味をもたせるのだそうだ。迅がまだ知らない妖精などの話もざっくりとだが聞く。


 日の光が当てにならないので時間の感覚が狂うのだが、かなりの時を過ぎたころマーナが歩みを止める。


「迅さん、ちょっとここで待ちましょう」


 一瞬、目的地に着いたのかと思ったが、そんなはずはない。若干拓けてきたとはいえまだまだ樹海が途切れそうもない。


 何を待つのかと思いながらも、やっと足を休めると腰を落とすこと数刻。マーナの言葉とともに遠くから地面を蹴る音が近づく。


「きましたね」


 近づいてきたのは数頭の馬とそれに乗るエルフ。馬には額から長い角が生えている。そしてその馬に乗ったエルフに見覚えがあった。


 蹄の音が迅とマーナの前で止まるとともに、エルフ全員が地面に降り立ち、マーナの前で片膝をつく


「お迎えに参りました。マーナ様」


「あら。どうしてあなたが……」


「やっぱり、クリスさんじゃん」


 別世界ともいえるような地で、見知った顔をみて思わず馴れ馴れしく声を掛けた迅に、その男も笑みを浮かべ


「ご無沙汰でしたね。迅さん」


 龍国で共に死線をくぐった冒険者、トリプルバーンズのクリス。

 思ってもいなかった再会に喜び、顔が緩む迅だった。




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よろしくお願いします。


新年も多くの人々が平和と幸せに満ち溢れますように。


本年、拙い文章にお付き合い頂きましてありがとうございました。

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