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第二十二話  意中交錯

 しばらく矢を射ってもらうなかで、試したいことがありマーナに頼む。


「マーナさん、ここにお願いします」

「……わかりました。そのかわり動かないでくださいね」


 迅が指さしたのは、おでこ。


『スン』バチィ


「迅さんっ! うご……」


 迅の前にバラバラになった矢が降り注ぐ。


「もう一度お願いします」

「…………いきます」


『スン』ズッ


 なるほど。少しわかってきた……


「ごめん、マーナさん。次は普通の(ヤジリ)で……」

「……もうヤです……」


 あれっ………マーナがその場にへたり込み顔を両手で押さえている。


「えっ!……えええっ!! 」

「あああーっ! 泣ーかした。泣ーかした! 」


 とチビッコ達から大声があがる。続けて三人一斉に矢継ぎ早に声が続く


「マーナ姉ちゃんイジメんなバカジン」

「ひどいよ……」

「シャー。シャー」


 迅とチビッコ達全員でマーナのもとへ駆け寄る


「マーナさん、あの……」

「なんですか迅さん……なにかあったら……こわいですよ……あーーん! 」


 と大声で泣き出してしまった。




 試したかったこととは迅のチカラの発動条件とその幅。

 一度目のおでこ。これはそのまま受ければ衝撃はあるが死ぬことはない。だが体をずらせばどうだろう。ほんの数センチ動けば目に当たる。直撃すれば良くて失明、悪ければ死ぬ。


 もちろん発動しないこともあり得るので、ほんの少しだけ動きつつ様子をみるつもりだった。だが、結果はほんの少し動きだす直後からスローモーションの世界になり、矢は粉々に切り裂かれた。


 次の矢ではある焦点を決めて同じく発動させた。結果、あらかじめ決めていた迅の斜め前の石近辺に弾かれ突き刺さった。迅の()を汲んだのだ。鉱山で跳弾が眼前の男に着弾したのを見て、もしやと思った。迅が目の前の男を倒す()を汲んで、その方向に着弾させたのだ。

 もっともまるっきり逆方向に弾くというよりは来た力を流す。に近い感じだが。


 叶わなかったが最後に試したかったのは、その時間が止まったかのような世界を動けるのかを、本物の(ヤジリ)で集中力を上げ、やるつもりだったのだが、些か気持ちが逸り過ぎていたようだった。



「ごめんごめん。マーナさん、休憩にしましょう」


 ちょっと失敗したな。よく考えないと……



「ミクル、お弁当にしよ! 」

「ほーい。やったーっ」


 河原に来る途中用意したお持ち帰りお弁当を、チビッコ達と準備し、迅は泣き止んでくれたマーナに申し訳なさそうに声を掛ける。


「ごめんなさい……笑った顔が見たいなー」


「もう……迅さん意地悪なんですか? 」


「いやいや、反省してます。もうしません。はいこれ、マーナさんの大好きな何とかの揚げたやつです。はいア~ン」


 とマーナの口元にお弁当のおかずを寄せる。


「ええっ。やだ……」


 といいつつまんざらでもないようで照れだす


「いらないんすか」


「やっぱり意地悪なんですね。ふふ。はーい」


 と大きく開けたマーナの口におかずを入れてあげると


「ミクルもー」

「わたしも……」


「おいはいい」

「ははっ、ラオわかってるな。そう、これは男と女でやる儀式だ」


「そうなのかー」

「ぎしき……なんの? 」

「ん。そうだなぁ、仲がギュッと良くなるとか、あとは新婚さんとか良く……」


 あれっ。昨日なんか……

 昨夜のバーでの記憶の一部分が蘇る。


「はははっ。なんの話だっけ」


 思わずマーナを見つめる迅


「どうしたんですか迅さん? 耳赤いですよ」


「気のせいっすよ。ささ。食べましょ」



 

 それからレンカから連絡くるまで迅は時間をみては稽古と、マーナは里へ帰るための準備をしていた。



 ◇ ◇



 週がかわるくらい日が過ぎたころ。レンカが手配してくれたようで、アーマンナルト神聖国教皇庁から宿に迎えの馬車が来て、いわれるまま迅たち全員で馬車に乗り込む。


 到着した大きな教会らしきところで降ろされ、案内されるまま一室へ通される。赤色を基調とした大きな部屋で、壁には大小さまざまなステンドグラスがあり、そこから差す光が部屋全体を聖なる場所へと引き立てていた。

 その部屋の先にもう一つ小さい部屋があり、そこでレンカが待っているとのことで皆で向かう。


 案内された小部屋に入ると、目に見えるのが大きな丸テーブル。その周りには椅子が備え付けてあり奥には玉座のようなものがある。迅らが目を見張ったのはテーブルの中央に置かれた物体。


 地球儀のような球状の物体が様々な色を放ちながら回っていて、レンカはそこに向けて言葉を発していたが、こちらに気が付くと動きを止め、


「着いたんだ。おーチビッコちゃん。元気してたー?! 」


 いつものレンカにチビッコ三人が太もも当たりに抱き着いていった。


「ちょっとバタバタしててごめん。その辺に腰掛けて! ちょうどもうすぐ龍国から連絡くるとこだから! 」


 どうやらその中央の球体が人国以外の、国の中枢機関と通信を可能にする、魔法を使った代物なのだろう。


「楽にしてていいよ。今、部屋貸し切ってもらってるし、猊下(げいか)は亜人国に向かってるから」


 迅はその言葉で、事態は急速に動いていたのを感じ、レンカが口火を切る。


「マー姉、思った通り深刻だったよ。あの鉱山みたいなところ、結構あるらしいんだ。それとカヤクが新型と一緒に結構出回ってるらしい」


「そう。やっぱりね……あそこだけなわけないと思ったけど……それでどうなってるの? 」


「うん。まず、亜人国が烈火のごとく怒りまくってるね。当然よ。今回だけならまだしも、他にも多数それが存在するとわかってから、いまにも単独で戦争起こす勢いね」


「それで……人国からの返答は? 」


「ないね。魔法使えないから時間かかってるけど、とっくに何らかのアクションあってもいいはずだけど」


「不気味ね……」


「舐めてるのよ。ってか人国もそうだけど龍国も返事こないの。それがようやく今日連絡よこすことになったのよ」


「もしかしたら龍国は難しいかも知れないわね。国が動くって相当な理由づけが必要だもの。それは私のエルフの国も……というかそっちの方がもっと難しいわ」


「でも一国だけじゃあ、あの国には勝てないわ。とにかく、もう少し待ってて。龍国動かないならうちらだけで動くよ。あんな現場みたら……今こうしてる間にも……」


 戦争ありきで話す二人に違和感を覚え口を出す迅


「ちょっと待ってください。戦争になるんですか? それと人国ってそんな強いんですか? 俺にはあんな銃よりも、魔法の方がよっぽど頼りになると思えるんだけど……」


「ダイダラス帝国。人国の名よ。あちらこちらに植民地支配をしてその勢力は拡大中。迅さんが見たのは旧式の銃。新型の話はさっきしたけど本拠地行けば、バカでかい大筒があるの。カヤクを使った武器はまだまだ沢山あるわ」


 迅は、元の世界のカヤクの武器を想像する……それでも


「それでも魔法のチカラに脅威を感じますけど俺は」


 レンカがこう付け加える。


「それと。私たちが危惧してるのは隔離されてるエボルート人。軍にいた時、ヤな噂を聞いたことがあるの。恐らく何か企てているわ」


 その時テーブル中央の球体が、カラフルな色を放つとともに音を響かせる。


「レンカ、聞こえる? 待たせたわね。……先に謝っておくわ」


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