5-27 まっすぐ跳んでぶっとばす
一晩休息を取った事で気力も回復した俺達は、朝飯を食った後、探索を再開した。
寝床にした部屋を出てテラスを進むと、早速デカめのガーゴイルが襲ってきた。
3体に囲まれ、行手を塞がれる。
朝から元気なこった。
ため息を吐きつつ、1人1体ずつ、近場の奴を相手する事にした。
真琴の相手は両手に大槌を持ったパワー型の奴だ。
陽花は、大鎌を持った奴を相手にしていは。
どちらもそう時間はかからず塵になるだろう。
問題は俺の相手だ。
先の丸い槍のような物を持っているから、どんな攻撃を繰り出してくるのかと思ったらまさかの魔法型だった。
しかも飛び上がり、こちらの間合いから離れて魔法を撃ち込んできやがる。
「ひ、陽花! ちょ、代わってくれ!」
「うっす!」
元気のいい声と共に、前蹴りで鎌ガーゴイルの体勢を崩した陽花が振り向いて矢を連射した。
だが、その全てが眼前であらぬ方向に逸れる。
「うえっ!? な、なんすかあれ! ずっこい!」
「バリアとかか? とにかく、交代!」
背後から陽花を襲おうとする鎌ガーゴイルにガイア・ノーツを投げつける。
ガーゴイルの鼻先を砕いたハンマーは、ブーメランのように俺の手元に戻ってきた。
この武器は手の中に再出現させられない代わりに、投げればこうして戻ってくる。
雷を使うアメコミヒーローみたいでちょっと気分がいい。
陽花は連射を続けるも、不可視の壁か、あるいは力場に阻まれて上手く当てられないようだ。
俺は鎌ガーゴイルの右脚に一撃を入れて砕くと、カチ上げて顎を砕いた。
その一撃が効いたのか、鎌ガーゴイルはゆっくり後ろに倒れた。
「あー!? センパイ、何1人で倒してるんすか! ずっこい!」
「わかった、わかった。ほら、あいつは2人でやるぞ」
陽花に合流し、槌で魔法の光弾を防ぐ。
その間に、俺の陰から陽花が矢を連射した。が、敢えなく矢は逸れていく。
あの力の秘密を解かないと、あいつ倒せないんじゃないか?
俺を盾にしながら地団駄を踏む陽花が「むがーっ!」と唸った。
「どう、どう。熱くなるなよ負けるぞ」
「あいつ何なんすか、もー! センパイ、ちょっと行って引きずり下ろして!」
「いやいや無理だよ。あいつ5メートルくらい飛んでるじゃん」
そんな会話をしている間に、真琴は大鎚ガーゴイルを壁に叩き付けて粉々にしていた。
1発も食らってない辺りがさすがと言える。
「曽良さん! 陽花!」
「マコー! ジャンプ! ジャンプして!」
「え、ええ? ジャンプ?」
どうやら陽花は何が何でもあいつをぶん殴りたいらしい。
光弾を撃つにはクールタイムが必要みたいだが、それすら逃げもせず悠々と空中で待機している。
俺達の攻撃は効かないという意思表示だろう。知性なんてないと思ってたが、煽りの腕はなかなかじゃねえの。ムカつく!
「こ、こうかい?」
「ジャンプっす!」
「こ、このままジャンプはちょっと……」
陽花は真琴に肩車させて、力の限り矢を連射している。そのまま真琴にジャンプさせて届かせようとしているらしい。
確かに真琴は2、3メートルくらい、陽花を抱えて跳んだりもしていたけど、それでもあいつには直接攻撃できる距離にはならなさそうだ。
ていうか直接攻撃なら真琴が上の方が良くないか。
そんなに自分の手でぶっ飛ばしたいのか。
俺、お前が怖いよ。
さすがにジャンプはできなさそうな真琴達を見て、ある事を閃いた。
普段の俺なら絶対できないが、今、ガイア・ノーツの力がある俺ならできるかもしれない。
「はいっ、集合! 集合ー!」
「え? あ、陽花、向こうへ行こう。曽良さんが呼んでる」
「くあーっ! 待っとけよお前――――――!」
怖い怖い怖い。
何がお前をそんなに荒ぶらせるんだよ。
何故か肩車されたままで光弾を躱せる物陰に来た陽花達に、声を潜めて作戦を伝える。
モンスターが言葉を理解できるとは思ってないので、これはなんとなくの行動だ。
「なるほど……面白いですね」
「やるっすよ! すぐ! ナウ!」
「バイオレンス、ナウだな。よっしゃ、しまっていこうや!」
そして俺達3人は配置に付いた。
まずは『遊撃』手の陽花が、光弾を撃たせないようひたすら矢で牽制しながら、外野手の真琴が近付く。
そしてピッチャーマシンの俺がその後ろから走り寄り……、
「真琴!」
「はい!」
思いきりガイア・ノーツを下から振り上げるのと同時に、真琴が跳躍、足の裏をガイア・ノーツで叩く。
すると、槌で打たれた真琴の体重が消えた。重力制御の能力だ。
そのまま振り抜くと、真琴も槌を蹴って跳んだ。
3メートルほど上がったところで、
「陽花!」
「うっしゃあーっ!!」
さらにそこから、真琴の肩を蹴って陽花が跳ぶ。
刃になった弓を振りかぶり、魔法ガーゴイルに接近していく!
「行け――――――!!」
――ガンッ!!
「はっ!?」
だが、陽花の拳は魔法ガーゴイルの直前で止まった。
空中で身を捻った陽花は、刃の先端を魔法ガーゴイルへ突き出す。
すると、陽花の武器が空中に刺さった。
そのままぶらーんと、まるで壁にでも刺さったように陽花がぶら下がる。
「ちょっ、な、なんすかこれー!?」
「あいつ、やっぱバリア張ってやがったのか! 陽花! さっさと下りてこい!」
「いやでも、もうちょいでこいつぶん殴れるんす……!」
「駄目だ! そこにいたら――!」
俺が言い終える前に、魔法ガーゴイルの武器が光った。
あ、ヤバい!
空中にいる真琴も、地面にいる俺も、すぐに助けに入れない。
「陽花――――――――――――!!」
俺の叫びと共に、陽花の体が爆発した。




