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いい加減にしてくれ、ダンジョン!  作者: 景浦良野
5章
85/112

5-20 トレジャーハント(空き巣とも言う)

「うん、しょ……」


 小さく粗末なベッドは、今のウンディーネでも頑張れば持ち上げられた。

 部屋の片隅に立て掛けて、壁を利用してベッドによじ登る。

 アンバランスな足場を壁に手を付いて支えながら、天井に手を伸ばす。


「これで中が物置とかだったら笑っちゃうけど……ん……あ、開いた!」


 手を掛け、体を持ち上げるも、一息で上がれず、ウンディーネは脚をばたつかせた。


「ふんっ、ぎぎぎ……!」


 顔を真っ赤にして歯を食いしばりながらも、なんとか這い上がったウンディーネは、周囲を見回した。

 暗く埃っぽい部屋に顔をしかめつつ、外に出られる扉がないかを手探りで探す。

 すると、硬い物に脛をぶつけ、ウンディーネは床にしたたかに顔を打ちつけた。


「いっ……たあ~……!? な、何よ、コレ……」


 つまずいた物を触って形を確かめる。

 手触りからすると木製の箱のようだ。天面は曲線になっており、枠の部分が金属でできている。

 ペタペタと触っていると、小さな穴が空いている事がわかった。


「こ、これってもしかして……ベタな宝箱、かしら? 明かり、明かりは……」


 無意識で蛍光灯のスイッチを探してしまい、迷宮にそんな物があるはずもない事に気づき、ウンディーネは苦笑した。

 ずいぶんと、人の生活に染まってしまったと思う。それもこれも曽良のような男と知り合ったせいだ。

 そう自分を棚上げしてから、ウンディーネは慎重に立ち上がり、壁沿いに歩こうとして……またつまずいて転んだ。


「ふぎっ!? な、何!? ここ、どんだけ障害物多いのよ……!」


 全盛の力があれば、自分で生み出した水に光を与える事もできるのだが、今のウンディーネには若い人間の女と同程度の力しかない。

 何度もつまずいて顔を打つのが嫌で、這って移動する事にした。

 手で前を探りながら這うと、思った以上に周囲に箱が積まれている事がわかった。

 わかった所で明かりもなく、当然ながら鍵も解錠の手段もない今、どれだけ財宝が貯め込まれていようと持ち腐れというものだ。

 持ち腐れも何も、そもそも自分の持ち物ではないのだが。


「あ、ここ、扉かしら。風が漏れてる……」


 立ち上がり、触ってみると、輪状の取っ手の付いた扉だった。

 取っ手を掴んで押すと、軋む音を鳴らしながら扉が開いた。

 廊下の松明の明かりが部屋に差し込んできて、ウンディーネは思わず目を瞑った。


「良かった、出られる! って、見張りとかいない、わよね?」


 仮に見張りがいれば既にアウトなのだが、そんな事は気にせず、廊下に頭だけ出して左右を見回してみる。

 幸いにして、廊下には生物の気配はなかった。

 ほっと胸を撫で下ろし、扉を開けて中に光を取り入れてみる。

 予想した通り、この部屋は宝物庫であったらしい。

 蓋の開いていない宝箱がいくつも並んでおり、自然と胸を高鳴らせた。


「ほ、本来ならこういうの、スルーしちゃうけど……。まあ、いいわよね。うん。迷惑料って事で……欲しい水槽もあるし……」


 身勝手に言い訳しつつ、明かりを頼りに鍵を開ける方法を探すと、壁に鍵束が掛かっているのを見つけた。

 早速手近な宝箱に、鍵束に付いている鍵をひとつ差してみる。

 合わないので次、また次……と試していると、カシャン、と解錠される音が聞こえた。


「本当に開いた……。普通、宝箱と鍵って一緒に置かないでしょ。うっかりってレベルじゃないわね」


 自分が盗人である事実はどこかへ投げ捨て、宝箱を開けようと手を掛ける。

 だがその瞬間だった。


「ウンディーネ様!!」


 シュラの声が響き、ウンディーネは身を強張らせる。

 そういえば、足場に使ったベッドはそのままであった。

 しかも天井の板が外れており、部屋に差し込む明かりがそのまま落ちている。

 床の穴からぬっと顔を出したシュラが部屋の中を見回し、ウンディーネと目が合った。


「おられましたな」

「あ……ああ……!」


 唇をわななかせ、ウンディーネは急いで立ち上がって逃げ出した。


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